波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

コンドルは飛んだ  第37回

2013-01-25 14:54:58 | Weblog
会議は終わった。静かになった会議室には社長と専務が残っていた。誰もいなくなった部屋は先ほどまでの騒がしさが消えて、いつもの静寂さと部屋の下を流れる谷川の水の音だけが聞こえてくる。冷えたお茶を飲み、おいしそうにタバコをくゆらせて二人はぼんやりと外を眺めていた。どちらもヘビースモーカーなのでタバコは欠かせない。
「予想はしていたけど、少し予想以上に抵抗が強かったね」と社長は専務へ声をかけた。専務は黙って聞いている。「こんな田舎で仕事をしていると海外に出ることなど想像もできないほどの大事件なのかもしれないな。」と独り言のようにつぶやいている。
専務は黙ったまま聞いているが、社長の言うことには納得するところがあった。
岡山とはいえ、こんな田舎の奥にいると東京はおろか都会での生活や様子を想像することも仕事が成り立つことなど考えられないことなのだろう。
つまり外部の動きに関心が回らず、日々の目の前のことだけしか気がいかないのだ。
「無理だと思いますよ。みんな自分たちの周りのことしか分からないし、仕事がどうなっているのか、これから自分たちの仕事がどうなるのかと言うことなど見当もつかないんじゃあないでしょうか。」専務もそういうとため息のように息を大きくついている。
「ところで、君はどう思っているかね。」改めて社長は専務を正面から見つめながら
聞いた。「正直言って海外工場には興味はあります。出来れば進出もしたいと思いますが、それには資金もさることながら市場が確保できるか、採算が取れるかどうかと言うことでしょうね。営業の拡販がどこまで伸ばせるのか。」
「自分もそれを考えていたんだ。資金は財務が言うように自社の力だけでは無理にしてもやりようによっては何とかなる。しかし、せっかく作った工場が採算が取れないのでは作る意味がないからなあ。問題はこれからの営業計画なんだ。」と頷いている。
「ところで営業の見通しはどうなんだろう。一度営業の考えをしっかり聞いて見なければならないなあ。」
国内の生産能力は月産、約一千トンで現状はそれを上回っている状況が続いている。
しかしそれがいつまで続くかは分からない。それに国内は飽和状態で今後は日本の
ユーザーも海外へ進出せざるを得ない状況にあることも間違いない。
その意味では売るほうも作るほうも国内だけでは飽和状態になりつつあることだけは間違いなかった。

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