波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「新東京物語」①

2021-03-12 09:38:38 | Weblog
美継は戦後、岡山の県北の田舎へ家族と一緒に引き上げた。田舎に家もなく帰るところがないために勤めていた会社の世話で住む所を用意してもらえたからである。落ち着いて数年後、会社からそう遠くない所に武家屋敷跡が売りに出たのを買い求め、そこを終の棲家として住んでいた。若かったミ美継も何時の間にか70歳を過ぎ、子供たちはそれぞれ成長し、家を出ていつの間にか老夫婦の二人暮らしが始まっていた。若い時から実直で真面目な美継は
創立者の山内氏から信頼があり、本社では創立者に代わり会社の代表として責任を負い、銀行をはじめ、工場の労働組合の管理まで一手に責任を負い、頑張っていた。そんな夫を妻の佳子はあまり顧みることなく、自分の好きなことをして暮らしていた。佳子も美継と同じ岡山の田舎育ちだったが、長女として生まれ、わがままに育ったせいもあり、あまり家庭的ではなかった。東京の店は倉庫や事務所もかねて借家とはいえ3階縦の家に住み、田舎から姉を頼って出てくる妹やいとこの面倒を見ながら女中代わりにしていたこともあり、気ままに過ごす習慣がついていたようだ。美継はそんな佳子をあまり気にせず、ひたすら自分の努めに時間を過ぎしていたこともあり、田舎生活で時間と余裕ができると佳子はお茶。お花。琴と田舎でもなかなかできない趣味を生かして火を過ごしていた。家は古かったが、武家屋敷とあってつくりはしっかりとして庭もあり、裏には畑も僅かながらあったので食べるには困ることはなく、余裕の生活が出来ていた。
二人には子供が三人いた。何れも男の子で長男は軍隊経験を一年して終戦を迎え、戦後仕事がないので美継が所有していた鉱山会社の管理を任せていた。次男は10歳年下になり、東京でサラリーマン、そして3男は大阪で就職していた。

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