松山の人間関係は個人的には少ない。家族と、僅かな友人関係で、主にはは仕事関係での人たちである。その中に名越氏がいた。彼とは最初同業関係で、いわばライバルの関係でもあったが、いつしか個人的に親しくなり、付き合うようになっていた。家に行ったりきたり、同じ千葉に住んでいることもあって、そんなに不便でもなかった。松山に娘が二人、名越には息子、娘の一人づつである。
名越はその会社の社長と意見の衝突があり、突然その会社を止めて、転職したのだが、それは誠に唐突で、驚かされたのだが、その後あちこちの会社を点々とするところとなった。転職のたびに電話で連絡があり、「松山君、今度は○○会社にお世話になっているんだ。ついでの時に遊びに来てくれよ。」そして、又、「松山君、今度の会社で手続き上、保証人が必要だと言われてね。君すまないけど、名前だけでも貸しておいてくれよ。」と言ってくる。その度に、「今度は、其処なの。」とびっくりするのだが、当人は全然、気にしている様子は無かった。そして、十社近い転職の繰り返しの頃、「松山さんですか。実は名越君が会社へ出てこないので、探しているのですが、見つからないのです。保証人の名前で、あなたの事が出ているので、ご存じないかとご連絡したのですが、」と言う電話を受けた。
松山はそういえば、最近名越から連絡無いなあと思っていたが、まさか、行方不明になっているとは思っていなかった。「あいつ、又、トンずらしたか。しょうがないやつだ。」と心中思いながら、「申し訳ありません。私の所にもまだ何も連絡が無いので、分りましたらすぐお知らせします。」と電話を切った。
何日かが過ぎた。「松山君、今、横浜にいるんだ。自分の会社として仕事を始めたんで、良かったら遊びに来てくれよ。」例によって、なんの悪びれさも無く、いつもの明るい調子である。「名越君、この間、○○会社の総務から電話があって、
君を探していたぞ、連絡だけはちゃんとして置けよ。」「分った、分った、ちゃんとしておくから安心しろよ。それより、顔を出してくれよ。待っているから。」
怒りたくても、怒れない、これが友達かと思いつつ、今度は何を始めたのだろうと、彼のバイタリテイを感心していた。
彼の始めた工場は横浜から地下鉄で30分ほどのところにあった。駅まで迎えに来てくれ「しばらくだなあ。元気だったかい。」再会を喜んだ。
ちっぽけな一棟長屋の工場だが、家族で、働いていた。「ここのオーナーがね。がんで入院しているんだが、私とは長い付き合いで、同じような仕事をしていた関係もあって、後を頼むよと言われて、始めることにしたんだ。」
名越はその会社の社長と意見の衝突があり、突然その会社を止めて、転職したのだが、それは誠に唐突で、驚かされたのだが、その後あちこちの会社を点々とするところとなった。転職のたびに電話で連絡があり、「松山君、今度は○○会社にお世話になっているんだ。ついでの時に遊びに来てくれよ。」そして、又、「松山君、今度の会社で手続き上、保証人が必要だと言われてね。君すまないけど、名前だけでも貸しておいてくれよ。」と言ってくる。その度に、「今度は、其処なの。」とびっくりするのだが、当人は全然、気にしている様子は無かった。そして、十社近い転職の繰り返しの頃、「松山さんですか。実は名越君が会社へ出てこないので、探しているのですが、見つからないのです。保証人の名前で、あなたの事が出ているので、ご存じないかとご連絡したのですが、」と言う電話を受けた。
松山はそういえば、最近名越から連絡無いなあと思っていたが、まさか、行方不明になっているとは思っていなかった。「あいつ、又、トンずらしたか。しょうがないやつだ。」と心中思いながら、「申し訳ありません。私の所にもまだ何も連絡が無いので、分りましたらすぐお知らせします。」と電話を切った。
何日かが過ぎた。「松山君、今、横浜にいるんだ。自分の会社として仕事を始めたんで、良かったら遊びに来てくれよ。」例によって、なんの悪びれさも無く、いつもの明るい調子である。「名越君、この間、○○会社の総務から電話があって、
君を探していたぞ、連絡だけはちゃんとして置けよ。」「分った、分った、ちゃんとしておくから安心しろよ。それより、顔を出してくれよ。待っているから。」
怒りたくても、怒れない、これが友達かと思いつつ、今度は何を始めたのだろうと、彼のバイタリテイを感心していた。
彼の始めた工場は横浜から地下鉄で30分ほどのところにあった。駅まで迎えに来てくれ「しばらくだなあ。元気だったかい。」再会を喜んだ。
ちっぽけな一棟長屋の工場だが、家族で、働いていた。「ここのオーナーがね。がんで入院しているんだが、私とは長い付き合いで、同じような仕事をしていた関係もあって、後を頼むよと言われて、始めることにしたんだ。」