忘れるとも無く小林のことを忘れてしまった。もう自分には過去の人であり、関係ない気がしていた。中山にも断りをして、いずれ改めてのお話にしてくださいと了解を取った。身辺を整理してしまうと、何となくさっぱりして、心にかかることは無かった。毎日を無難に過ごし、ミスが無ければ日は過ごせる。責任も昔に比べれば軽くなり、上からとやかく言われることはほとんど無かった。
営業活動も昔に比べると、すっかり落ち着いてしまって何の問題も無い。あるとすれば、定期的な人の異動であり、転勤、転職の話だった。
親しく、協力関係にあった商社の一人に井坂氏がいた。家が近いこともあって、プライベートでゴルフを一緒にしたり、酒を飲んだこともあったが、イギリスへ転勤になって、数年になる。帰国したことを聞いてその後の様子を聞くと、今度はアメリカだと言う。「海外の生活は楽しいかい。」と聞くと、「昔は良かったと聞いているけど、今はとても厳しいよ。下手すると給料じゃやっていけなくて、持ち出しになることもあるよ」「そりゃあ、大変だね。外から見ていると良く見えるけど、楽じゃないね。」「それと、一度、海外へ出ると、余程の事がないと、国内の仕事に戻れないんだ。何しろ、高度成長期と違って、縮小気味だからね。人余りなんだ。」「君のところみたいな、大会社でもそうなんだ。」そんな話をして別れたが、井坂氏はその後アメリカへ行った後、噂でその会社を辞めたらしい。
日本へ帰国することも無く、現地で転職をして頑張っているとか、松山は人それぞれの運命を噛みしめながら、何となく力が抜ける思いがあった。
自分には何があるのだろう。家庭があり、仕事もある。それなのに何故か、燃えるような生きがいが感じられない。年をとった事もあるかもしれない。仕事が安定していて、何の不安も無いからかもしれない。しかし、そのもっと、奥のほうに何か足りないものを感じていた。それが何なのか、自分は何を目的に毎日を生きているのか、そんな不安と頼りなさを覚えた。自分は何を頼りにすればよいのか。万が一の時には誰に相談すればよいのか。そう考え始めて見ると、自分には何もない。
そして、誰を頼ることも出来なかった。本来ならば、世話になってきた中山であり、小林であるはずなのだがそんな気持ちには到底なれなかった。
いったい、自分はどうすればよいのか。どうすればこれから安心して人生を過ごせるのか。
営業活動も昔に比べると、すっかり落ち着いてしまって何の問題も無い。あるとすれば、定期的な人の異動であり、転勤、転職の話だった。
親しく、協力関係にあった商社の一人に井坂氏がいた。家が近いこともあって、プライベートでゴルフを一緒にしたり、酒を飲んだこともあったが、イギリスへ転勤になって、数年になる。帰国したことを聞いてその後の様子を聞くと、今度はアメリカだと言う。「海外の生活は楽しいかい。」と聞くと、「昔は良かったと聞いているけど、今はとても厳しいよ。下手すると給料じゃやっていけなくて、持ち出しになることもあるよ」「そりゃあ、大変だね。外から見ていると良く見えるけど、楽じゃないね。」「それと、一度、海外へ出ると、余程の事がないと、国内の仕事に戻れないんだ。何しろ、高度成長期と違って、縮小気味だからね。人余りなんだ。」「君のところみたいな、大会社でもそうなんだ。」そんな話をして別れたが、井坂氏はその後アメリカへ行った後、噂でその会社を辞めたらしい。
日本へ帰国することも無く、現地で転職をして頑張っているとか、松山は人それぞれの運命を噛みしめながら、何となく力が抜ける思いがあった。
自分には何があるのだろう。家庭があり、仕事もある。それなのに何故か、燃えるような生きがいが感じられない。年をとった事もあるかもしれない。仕事が安定していて、何の不安も無いからかもしれない。しかし、そのもっと、奥のほうに何か足りないものを感じていた。それが何なのか、自分は何を目的に毎日を生きているのか、そんな不安と頼りなさを覚えた。自分は何を頼りにすればよいのか。万が一の時には誰に相談すればよいのか。そう考え始めて見ると、自分には何もない。
そして、誰を頼ることも出来なかった。本来ならば、世話になってきた中山であり、小林であるはずなのだがそんな気持ちには到底なれなかった。
いったい、自分はどうすればよいのか。どうすればこれから安心して人生を過ごせるのか。