毎日が何事もなく過ぎていく。ヨナさんの生活はスケッチと、子供との時間であったが、
やはりそれだけでは物足りないものを感じていた。何とか自分の中に充実したもの、しっかりと持っておきたいものを探し、それを掴みたい、そんな思いが強くなっていた。
お天気の良い午後、ヨナさんは図書館へ出かけた。のんびりと歩くことで時間を気にせず、
身体の状態を感じながら行く事が出来る。周りを見ると、忙しそうに何かを求めて、いや
何かをしなければいけないという、追われているような人もいる。それぞれが何か余裕の無い雰囲気で行動しているのが分る。図書館までは約3キロぐらいあるだろうか。着く頃には
汗ばんでいて、身体がすっかり熱くなっている。冷たい水を飲み一息つくといつものように
借りていた本を返却し、書棚の中を歩く、ジャンル別に並べられている本を眺めながら歩き始めると、新しい世界に入るような気になる。そこにはまだ会った事のない多くの作家が
立ち並んでいる。どの人も立派であり優れた作品を書き、それが置いてある。その一つ一つを見ていると、どの本にも自分が持ち合わせていない大きな宝が隠されていて、「サア、あなたにあげる宝がここにあるよ」と囁いているかのように聞こえてくる。
其処に立ちつくしていると、そこから多くのことを吸収して自分の糧として持ち得たいと言う衝動に駆られてくる。あまり難しいものは読めなくなっていた。
しかし読んでみたいものはたくさんあるので、わくわくする。不図気がつくと肩越しに
何か優しい果物のような爽やかな匂いが漂ってきた。それは図書館にはふさわしくない匂いであったが、それが何なのかあまり気にしないでいた。暫くして振り向こうとして向きを変えると、其処に一人の女性が立っていた。若くは無かったが年を感じさせない装いはセンスの良さを表していた。ヨナさんは思わず、「誰の本をお探しですか。」と声をかけていた。
「三浦綾子さんです」短く答えが返ってきた。「ああ、三浦さんの」そして、そのまま立ち去ろうとしたのだが、何か惹かれるものを感じ、そのまま立ち尽くしていた。
二人はやがてそれぞれ本をとると、借り出しを済ませた。「どうですか。お急ぎでなければ図書館を出たところの公民館にお茶を飲む所があるので、少しお話しませんか。」
ヨナさんは自分でも不思議なくらいに積極的に声をかけていた。
やはりそれだけでは物足りないものを感じていた。何とか自分の中に充実したもの、しっかりと持っておきたいものを探し、それを掴みたい、そんな思いが強くなっていた。
お天気の良い午後、ヨナさんは図書館へ出かけた。のんびりと歩くことで時間を気にせず、
身体の状態を感じながら行く事が出来る。周りを見ると、忙しそうに何かを求めて、いや
何かをしなければいけないという、追われているような人もいる。それぞれが何か余裕の無い雰囲気で行動しているのが分る。図書館までは約3キロぐらいあるだろうか。着く頃には
汗ばんでいて、身体がすっかり熱くなっている。冷たい水を飲み一息つくといつものように
借りていた本を返却し、書棚の中を歩く、ジャンル別に並べられている本を眺めながら歩き始めると、新しい世界に入るような気になる。そこにはまだ会った事のない多くの作家が
立ち並んでいる。どの人も立派であり優れた作品を書き、それが置いてある。その一つ一つを見ていると、どの本にも自分が持ち合わせていない大きな宝が隠されていて、「サア、あなたにあげる宝がここにあるよ」と囁いているかのように聞こえてくる。
其処に立ちつくしていると、そこから多くのことを吸収して自分の糧として持ち得たいと言う衝動に駆られてくる。あまり難しいものは読めなくなっていた。
しかし読んでみたいものはたくさんあるので、わくわくする。不図気がつくと肩越しに
何か優しい果物のような爽やかな匂いが漂ってきた。それは図書館にはふさわしくない匂いであったが、それが何なのかあまり気にしないでいた。暫くして振り向こうとして向きを変えると、其処に一人の女性が立っていた。若くは無かったが年を感じさせない装いはセンスの良さを表していた。ヨナさんは思わず、「誰の本をお探しですか。」と声をかけていた。
「三浦綾子さんです」短く答えが返ってきた。「ああ、三浦さんの」そして、そのまま立ち去ろうとしたのだが、何か惹かれるものを感じ、そのまま立ち尽くしていた。
二人はやがてそれぞれ本をとると、借り出しを済ませた。「どうですか。お急ぎでなければ図書館を出たところの公民館にお茶を飲む所があるので、少しお話しませんか。」
ヨナさんは自分でも不思議なくらいに積極的に声をかけていた。