次男が娘だけを連れて実家へ帰ってきて、おふくろの面倒を見ると聞くことは全く考えていなかったので驚いていた。何でも長男の兄とも相談し、兄弟で決めたことだからと言う。年老いていつかそんなことを聞く時が来ると考えていたから、その話を聞いてもごく自然に受け入れることが出来た。次男の嫁は男が出来て出て行ったと聞いていたが、娘はそんな母の姿に憎しみを覚え、「父ちゃんと一緒にいる」と残ったのだが、家にいることは殆どなく、友達同士で寝泊まりして暮らしていることが多かった。次男は東京で営業タクシーの運転手の仕事をしていたが、その内特殊免許を取り個人タクシーの看板で一人で営業を始めていた。「子供が帰ってきて、3人で何とか一緒に暮らす生活が始まったのですが、別々の暮らしが長かったせいで最初は色々と気を使いました。今でも食事なんか時間も食べるものも違うので別々ですが、偶にばあちゃんこれ食べてみねえかと言われて
食べることもありますが、若いもんとは味も違って食べられねえですわ」と笑いながら本音が出ている。この調子なら単なる愚痴話で終わりそうだなと少し安心しながら聞いていると「所が先日急に個人タクシーの仕事を辞めると言い出したんですよ。もう10年以上も続けていて問題もなく、私もうちに散髪に来るお客さんも年寄りが多く、中には足の不自由な人もいるので、送迎を兼ねて手伝ってもらえば助かると話したばかりなのに、辞めると言い出したので、理由を聞くと何でも先が見えたからもうこの仕事はやってても楽しみがないと言うんです。でも私はお客さんが一人もいなくなるというのではないし、慣れている仕事なんだから身体にも合っていて良いだろうにと言うのですが、頑として考えを変えず、さっさとナンバーも外して廃車にしてしまったんですよ」
青山はいよいよ本題に入ったなあとなんとなく思いながら「息子さんは幾つになるんですか」「たしか43だと思います。」「そうだとすれば、20年近くやってきたわけですね」「そうなります。」「それでお母さんにはこの仕事は先が見えたからやめるとだけしか言わないんですね。」「そうなんです」
「でも、これから先どうするんですかね。何か仕事でも見つけたんですか。」
「えー何か仕事を探しているようで、派遣の仕事のような本を見ていますよ。だけど私は個人タクシーのほうが安定しているし、よいと思っているし、第一急にどうしてこの仕事を辞めるのか、納得がいかなくて、何があったのか、そこの所が気になって毎日落ち着かないのです」
食べることもありますが、若いもんとは味も違って食べられねえですわ」と笑いながら本音が出ている。この調子なら単なる愚痴話で終わりそうだなと少し安心しながら聞いていると「所が先日急に個人タクシーの仕事を辞めると言い出したんですよ。もう10年以上も続けていて問題もなく、私もうちに散髪に来るお客さんも年寄りが多く、中には足の不自由な人もいるので、送迎を兼ねて手伝ってもらえば助かると話したばかりなのに、辞めると言い出したので、理由を聞くと何でも先が見えたからもうこの仕事はやってても楽しみがないと言うんです。でも私はお客さんが一人もいなくなるというのではないし、慣れている仕事なんだから身体にも合っていて良いだろうにと言うのですが、頑として考えを変えず、さっさとナンバーも外して廃車にしてしまったんですよ」
青山はいよいよ本題に入ったなあとなんとなく思いながら「息子さんは幾つになるんですか」「たしか43だと思います。」「そうだとすれば、20年近くやってきたわけですね」「そうなります。」「それでお母さんにはこの仕事は先が見えたからやめるとだけしか言わないんですね。」「そうなんです」
「でも、これから先どうするんですかね。何か仕事でも見つけたんですか。」
「えー何か仕事を探しているようで、派遣の仕事のような本を見ていますよ。だけど私は個人タクシーのほうが安定しているし、よいと思っているし、第一急にどうしてこの仕事を辞めるのか、納得がいかなくて、何があったのか、そこの所が気になって毎日落ち着かないのです」