波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「新東京物語」②

2021-03-15 09:50:04 | Weblog
武家屋敷としてできた住まいはかなり年数がたっていると思われたが、とてもしっかりとしたつくりであった。離れの静かな部屋の前には枯山水の庭があり、立派な松が枝を周りへたれている。池こそないがその雰囲気は充分であった。その離れの部屋に一枚の写真が飾ってある。先祖の親の写真と思いきやそこにはかわいい赤ん坊が写っていた。ベビー帽をかぶり当時では珍しいと思われるかわいいべぴー服を着せられ、そのつぶらな目はぱっちりとしたかわいい女の子である。次男の昌吾が「これ誰なの」と聞いたことがあったが、美継も佳子も答えなかった。後日分かったことだが、その写真の女の子は長男の壱穂の次に生まれた長女だった。生まれて一年半ほどで大病に架り、亡くなったらしい。美継は悲しみに打ちひしがれてしばらくは口もきけないほどだったらしい。その後も写真をずっと懐にに入れて過ごしていたという。そんなことがあって、二人目の男のことの年の差が大きくな慣れてしまったらしい。佳子は3人の男の子を育てるうちに何時の間にか強くものいう言葉になっていったのはその影響もあったのかもしれない。そして長男は家庭教育でも「跡取り」の思想が強く大事に育てられ、教育にも配慮して家庭教師をつけ、学費も糸目をつけず力を入れていたようです。
その長男の壱穂が結婚適齢期を迎える年ごろになると佳子は「何としても相応しい嫁を」と真剣にその問題に関心を持ち始めていた。
そんな時、壱穂は学友と何不自由なく学生生活を謳歌していたのだが、親友の友人からあることを頼まれたのである。彼が話すのには「実は俺には岡山に許嫁がいてその女と結婚を約束しているんだ。しかし新しく好きな女性が出来て彼女とは結婚できなくなったのだ。そこで悪いがそのことを彼女に伝えて断ってもらいたいのだ。親友の頼みとしてよろしく頼むよ」と言われてしまった。

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