波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

思いつくままに

2013-01-22 09:31:57 | Weblog
或る日、何気なく午後のTVを見ていたら山田洋次監督の「おとうと」と言う映画だった。(2010年作)この頃は映画館で見る機会がないので映画を見ることが少ないのだが、山田監督の映画は「男はつらいよ」シリーズが続いていたときは年二回は必ず足を運んでみていた思い出がある。その作品は一貫して「家族愛」をテーマにして
人間の弱さと愛とを見る私たちに前面に訴えてくるものがあり、忘れかけていた大切なものを思い出すとともに、自分本位になりがちな生活を反省させ、感動を呼んだものであった。計算されない一方的な人間的な愛が如何に儚いものであり、本当の愛は男女を越えたものであることもこの映画は教えてくれていた。
そんな思い出の中でこの「おとうと」を見ていて、途中でふと「あれっ」と気がつくことがあった。主人公は薬局を営む姉と風来坊的生活をしているおとうとだが、それは
「男はつらいよ」のさくらと寅次郎の兄妹の設定とほぼ同じであることだった。
(この場合は姉と弟で逆だが。)弟は姉に色々な場面で迷惑をかけて、姉は腹を立てながら弟を決して見放さず(兄は縁を切っていた)、最後の弟の病死の場面では手を握って別れを告げている。全編を通じて特別な場面はないが、一つ一つの場面が普段の生活では見られない、あるべき姿を表現し(他人にはどう見られようとも)こうあるべきであることを教えている気がした。それは普段忘れかけていたり、見かけなくなった
「隣人への愛」であったりするのだが、これは監督自身も今の日本になくなりつつある
大切な本当の「人間愛」を私たちに気づかせ、忘れないでほしいとの願望がこめられていたような気がした。
人はとかく無意識のうちに自分本位な行動に走り、とくに自分に利することがない人との関わりを敬遠する傾向がある。それは弱い人、苦しんでいる人悲しんでいる人たちである。そんな人たちのために、何ができると言うことではなくても共に悲しみ、共に
苦しみ、共に泣くことが出来る人が「そばにいる」と言うことが必要なのである。
一人ひとりがそんな気持ちを持って、寄り添って共に「歩く」人となりえたら、世の中がもう少し暖かいものになるのではないかと思う。
そして及ばずながら、自分自身がその一人になれたらと映画を見終わったとき、
そんな思いに浸っていた。そんな、ある日の午後のことだった。

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