時間の過ぎるのが早く感じるようになった。そして何をしていても彼女の事が頭を離れず、何時も心のどこかに存在していた。電話がかかるとすぐ彼女からだと思い、心が躍る。
だから違っていると、急に力が抜けるような感じがしていた。彼女の訪問は次第に増えてきて食事や買い物をする機会も増えてきた。それは自然な流れであり、どちらが誘うものでもなければ頼むものでもなかった。こうしてその年の春が過ぎ、夏をすごし、秋が来た。
「ヨナさん、寒くならないうちに行きましょう。福島の冬は寒いわ。今ならちょうど紅葉が始まる頃で一番良い時よ。」上野から新幹線でもすぐである。静かなたたずまいの駅を降りるとバスで土湯温泉行きのバスに乗る。吾妻小富士を望む山際に湧き出る温泉地である。
あまり目立たない小さな宿に入る。少し熱く感じるほどの温泉は気持ちよく、出てからもふつふつと汗が出てくる。出された夕食を前に二人はビールで乾杯をする。無言の中に暖かいものが通う。すっかり無口になった二人だったがその時間は代えがたい幸せな時間だった。
「来年になったら、台湾へ二人で行かないか。私の生まれ故郷だから君を一度連れて行きたいよ。もう私の家族は誰もいないけど、私が小さい時育ったところだから、君にも是非見てもらっておきたいんだ。行ってくれるよね。」「私、まだ日本から出たこと無いの。一度海外の国を見たいと思っていたわ。お願い。連れて行って」「うん、そして出来れば二人だけでささやかな式をして結婚しよう。」ヨナさんは強い気持ちで言った。一瞬、時間が止まったかのように彼女の身体が固まった。だがそれは僅かの時間であっただろう。何時の間にか二人は肩を寄せ合っていた。肩に廻した手が彼女を引き寄せるとそのまま身体がヨナさんのほうへ寄りかかり、その手は何時しか彼女の顔を引き寄せ、二人は唇を重ねていた。
そっと、優しく静かに何時までも重ねられたままになっていた。
翌日、再びバスに乗って山を一回りして市内へ帰ってきた。彼女の育った町を歩き、買い物をしたり、コーヒーを飲んだりして時間を過ごした。
二人はこれからの生活を如何するかを真剣に話し合っていた。彼女は当面仕事を続け、ヨナさんも学習塾を充実させてしっかり確立させることを考えていた。しかし、それは自分たちのためと言うことよりも、自分たちの生活を改めて新しくスタートさせることであった。
より良く人生を過ごすために二人で如何することが良いことか、そのことを話し合ってきたのだ。
だから違っていると、急に力が抜けるような感じがしていた。彼女の訪問は次第に増えてきて食事や買い物をする機会も増えてきた。それは自然な流れであり、どちらが誘うものでもなければ頼むものでもなかった。こうしてその年の春が過ぎ、夏をすごし、秋が来た。
「ヨナさん、寒くならないうちに行きましょう。福島の冬は寒いわ。今ならちょうど紅葉が始まる頃で一番良い時よ。」上野から新幹線でもすぐである。静かなたたずまいの駅を降りるとバスで土湯温泉行きのバスに乗る。吾妻小富士を望む山際に湧き出る温泉地である。
あまり目立たない小さな宿に入る。少し熱く感じるほどの温泉は気持ちよく、出てからもふつふつと汗が出てくる。出された夕食を前に二人はビールで乾杯をする。無言の中に暖かいものが通う。すっかり無口になった二人だったがその時間は代えがたい幸せな時間だった。
「来年になったら、台湾へ二人で行かないか。私の生まれ故郷だから君を一度連れて行きたいよ。もう私の家族は誰もいないけど、私が小さい時育ったところだから、君にも是非見てもらっておきたいんだ。行ってくれるよね。」「私、まだ日本から出たこと無いの。一度海外の国を見たいと思っていたわ。お願い。連れて行って」「うん、そして出来れば二人だけでささやかな式をして結婚しよう。」ヨナさんは強い気持ちで言った。一瞬、時間が止まったかのように彼女の身体が固まった。だがそれは僅かの時間であっただろう。何時の間にか二人は肩を寄せ合っていた。肩に廻した手が彼女を引き寄せるとそのまま身体がヨナさんのほうへ寄りかかり、その手は何時しか彼女の顔を引き寄せ、二人は唇を重ねていた。
そっと、優しく静かに何時までも重ねられたままになっていた。
翌日、再びバスに乗って山を一回りして市内へ帰ってきた。彼女の育った町を歩き、買い物をしたり、コーヒーを飲んだりして時間を過ごした。
二人はこれからの生活を如何するかを真剣に話し合っていた。彼女は当面仕事を続け、ヨナさんも学習塾を充実させてしっかり確立させることを考えていた。しかし、それは自分たちのためと言うことよりも、自分たちの生活を改めて新しくスタートさせることであった。
より良く人生を過ごすために二人で如何することが良いことか、そのことを話し合ってきたのだ。