ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

陽春花形歌舞伎 「相生獅子・雪」「歌舞伎のみかた」「身替座禅」 @名古屋市・御園座

2022年04月22日 | 歌舞伎・文楽

陽春花形歌舞伎 「相生獅子・雪」「歌舞伎のみかた」「身替座禅」 (4月19日・御園座)

老母の接待で(笑)、御園座での歌舞伎観劇。コロナの具合は一進一退といった感じでまだ油断ならないが、もう取り敢えずこうやって日常を取り戻しつつ付き合っていくしかないんだろう。脚が弱い母と一緒だが、御園座はすぐ近くにバス停があるのでバスを使って会場入り。身元記入、検温、消毒を済ませ会場内へ。

場内はもう席の間隔を空けずに客を入れている。この日の客入りは自分の見回した範囲では8分といったところ。平日昼の部にしてはまあまあだろうか。チラシだけでなく演目の解説や見どころを説明した冊子が配られたのは気が利いている。これ、どの公演でもやればいいのに(そうするとパンフの売上が落ちてしまうか…)。

まずは梅枝と莟玉(かんぎょく)による「相生獅子」。莟玉(読めない・笑)は以前まで梅丸という名前だったが、最近梅玉の養子になってこう名乗るようになったのだそう。演目は能を基に作られたいわゆる「石橋(しゃっきょう)物」。今回は姫2人なので前半は大人の女の顔立ちの梅枝と、可愛らしい顔立ちの莟玉の舞踊がたっぷり楽しめる。梅枝を観るのは3年ぶりくらい。以前から舞台での美しさは白眉だったが、姫ではあれど大人の雰囲気も湛えた女形ならではの女性を演じられる貫禄が出てきたように思う。莟玉は現代的な”可愛い”感じの美しさなので対比も面白い。後半は獅子の精となった2人が豪快な毛振りを見せる。

続いて舞台が暗転し、菊之助による舞踏「雪」。シンプルな背景の元で暗い照明の中に菊之助演じる女が浮かび上がる。美しい。三絃(三味線のルーツ)と地唄、そして琴に似た筝(そう)の音色が物寂しくとても良い。いつも思うが、こういう舞踊ってどれもちゃんと型があるのだろうけれども、あれだけ長いのをどうやって覚えていくんだろう。

続いて幕間無しで萬太郎による「歌舞伎のみかた」。歌舞伎のあれこれを舞台上で説明する流行りの趣向だ。こういうのを今まで何度も観ているので知っていることばかりかもなんて思っていたが、普段混同してしまいがちな「常磐津(ときわづ)」と「長唄」の違いなど、とても分かり易かった。まだまだ知らないことだらけ。萬太郎は喋りも上手い。

そして今回のメインは「身替座禅」。自分は仁左衛門でも、父君の菊五郎でも観たことがある。理屈抜きで笑える演目。ちょっと女々しい感じの旦那役が菊之助にもよく似合っている。酔って浮気先から帰る道すがらの何ともふわっとした雰囲気(←「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」と表現するのだそうだ)が、浮気とはいってもあまり生々しさを感じさせず、思わず女性も(客の大半は女性だが)笑って許してしまいそうになる柔かさがいい。この演目では大抵いかつい感じの役者が奥方の玉ノ井の役に充てられるが、彦三郎の玉ノ井もなかなかの迫力だ。老母もまあまあ楽しんだとは思うが、横で見ていると途中で舟を漕ぐことも多くなってきた。歳だものなァ(また三味線の音色がちょうど眠気を…)。

 


一、

上 相生獅子(あいおいじし)

姫     中村 梅枝
姫     中村 莟玉

下 雪(ゆき)

女     尾上 菊之助


二、解説 歌舞伎のみかた

中村 萬太郎


三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)

山蔭右京     尾上 菊之助
太郎冠者     中村 萬太郎
侍女千枝     中村 莟玉
同 小枝     上村 吉太朗
奥方玉の井   坂東 彦三郎


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