産業技術総合研究所(産総研)太陽光発電工学研究センター先端産業プロセス・低コスト化チーム 齋 均 主任研究員は、太陽光発電技術研究組合(PVTEC)と共同で、薄膜シリコン太陽電池内部の光吸収力を増強する新しい光閉じ込め構造を開発し、この構造を用いた薄膜微結晶シリコン太陽電池で、これまでで最高となる発電効率10.5%を達成した。
今回開発した光閉じ込め構造は、従来用いられてきた不規則性をもつ光散乱構造と異なり、直径数µmの穴が蜂の巣状に並んだ周期構造(ハニカムテクスチャ)をもつ。この周期構造では、光閉じ込め構造の形状やサイズと太陽電池特性の相関を明確に把握できた。
これを基に、ハニカムテクスチャを最適化し、さらにドーピング層と透明導電膜を高度化したことで、高い短絡電流密度が得られた。
この結果は、高度に制御した光閉じ込め構造によって太陽電池内部の光吸収力を効果的に増強できることを示し、設計の最適化や多接合太陽電池への応用によって、一層の高性能化・高効率化が期待される。
今回は微結晶シリコン太陽電池について高効率化を行ったが、薄膜シリコン太陽電池は多接合構造が一般的で、発電の高効率化には全ての要素太陽電池の光吸収力増強が必要である。今後は今回開発した光閉じ込め構造を多接合型太陽電池に応用し、さらなる発電効率の向上を目指す。
また、今回の成果を大面積太陽電池に応用する技術も検討し、低コスト太陽電池の実現を目指すことにしている。