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●科学技術ニュース●理研、神経幹細胞の再生能を発見

2019-12-26 08:21:32 |    生物・医学

 理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 非対称細胞分裂研究チームの松崎文雄チームリーダー、藤田生水研究員、下向敦範専門職研究員らの研究チームは、哺乳類の脳が作られる際に神経幹細胞が柔軟に「形」を再生する仕組みを発見した。

 同研究成果は、脳が形作られる基本的な仕組みや、その形成不全に伴う脳疾患の原因解明に貢献すると期待できる。

 脳の神経細胞(ニューロン)やグリア細胞を生み出す神経幹細胞は、非常に細長い柱状の細胞であり、発生途中の脳組織は、この柱が無数にひしめき合って構成されている。

 今回、同研究チームは多光子顕微鏡などを用いて、マウス胎仔の脳組織に存在する神経幹細胞の形状変化を鮮明に捉えることに成功し、神経幹細胞が柱状の形態を柔軟に再形成することを明らかにした。

 この再生能により、脳発生初期に神経幹細胞が細胞分裂するとき柱状構造が分断されたとしても、脳組織の細胞配置が保たれる。

 脳発生後期になるとこの性質は失われ、柱状構造が分断された神経幹細胞が次第に蓄積していき、脳組織の中には別の神経幹細胞層が出現することも分かった。

 この新たな幹細胞層の出現は、特にヒトのように大きくしわのある脳が形作られる際に見られる特徴であることが分かっており、今回の発見はその裏に潜む細胞の振る舞いを明らかにしたといえる。

 今回、LGN(GPSM2<ショウジョウバエではPins>とも呼ばれ、ショウジョウバエから哺乳類まで広く保存されたタンパク質で、細胞が分裂するときに形成される紡錘体の末端と細胞膜をつなぐ役割を持つ)による分裂軸の厳密な制御をなくしても増殖期には頂端面が高効率で再形成されたことから、分裂軸の厳密な制御は放射状グリアの対称分裂に不要であることが明確となった。このことから、従来のモデルは見直しが必要となった。また、新たに発見した神経幹細胞の持つ「形」の再生能力は、哺乳類の脳発生と進化に新しい知見を与え、ヒトを含む脳の発生をつかさどる機構の研究が一層活性化されると期待できる。(「理化学研究所」ウェブサイトより)


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