東京農工大学大学院のPrutphongs Ponrapee氏(博士前期課程2年)、伊藤遼成氏(博士前期課程1年)、青木活真氏(2024年3月博士前期課程修了)、情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)の原基揚主任研究員、早稲田大学理工学術院の池沢聡研究院講師、東京農工大学大学院の岩見健太郎准教授は、メタサーフェスを利用して、レンズ・プリズム・波長板の3種類の光学素子を1枚の超薄型素子に統合することを実現した。
この成果は、スマートフォンに搭載可能な超小型原子時計への応用が期待される。
従来のRb原子時計には、レンズ・回折格子・波長板が用いらるが、組み合わせて利用するとかさばってしまうため、極めて高い時間精度を有するものの小型化が困難であった。
現在、数cmの厚さをもつ原子時計を、数mm程度まで小型化することができれば、スマートフォンへの搭載の可能性が見えてくる。
今回我々は、メタレンズに関する研究を発展させ、プリズムと波長板の機能を追加することで、レンズ・プリズム・波長板の3種類の光学素子を1枚の超薄型素子に集積化する技術を開発した。
メタアトムと呼ばれる光の波長より小さいサイズの構造体を配列して光を制御するメタサーフェスは、数ミクロン程度の薄さで様々な光学的機能を実現できることから、次世代の光学デバイスとして注目されている。
今回開発された集積化素子は、基板上に半導体の製造プロセスを用いてメタアトムを配列したものであり、非常に薄型であるだけでなく大量生産も可能な特徴を持っている。
今回、ルビジウム(Rb)小型原子時計に用いられる波長795nmで動作するメタサーフェスを開発した。レンズ・プリズム・波長板の3機能を1枚に統合した多機能集積化メタサーフェスになる。
これは、光源から入射する拡散直線偏光を、円偏光の平行光に変換して、角度を変えて出射することができる。
設計ではまず初めに、長方形断面をもつ水素化アモルファスシリコン柱構造(メタアトム)の電磁場解析を行い、偏光のx方向成分とy方向成分との間に1/4波長(90度)の位相差を生成できる寸法を抽出した。
そして、偏光間の位相差を保ちつつ、全体の位相遅延を0~360度の間で自在に制御できるよう設計し、縦298 nm×横2,384 nmの範囲に8本の異なる寸法の柱を並べることで、プリズムと波長板の2機能の統合ができることを確認した。
詳細な誤差解析をおこなって、寸法誤差が回折効率・集光効率に与える影響を調査した。
実験ではプリズムと波長板の2機能の統合と、レンズ・プリズム・波長板の3機能統合に取り組んだ。
3機能統合では、0.3mm×0.3mmの範囲内に360種類の異なる寸法の柱を配置した。2機能統合では回折効率72.8%、3機能統合では集光効率77.3%を達成し、高い性能を示すことができた。
情報化社会の進展に伴い、高速かつ大容量で安全な通信技術への需要が高まっている。そのためには高精度かつ安価なタイミングデバイスの開発が必要であり、スマートフォンに搭載可能な超小型原子時計はその有力な候補。
同研究で提案された多機能集積化メタサーフェスは、1枚の超薄型素子で光の伝搬方向・集束性・偏光状態を高効率に同時精密制御する技術を提供するものであり、大量生産に対応することも可能であるため、次世代の超小型原子時計開発のための重要技術となることが期待される。<情報通信研究機構(NICT)>
従来のRb原子時計には、レンズ・回折格子・波長板が用いらるが、組み合わせて利用するとかさばってしまうため、極めて高い時間精度を有するものの小型化が困難であった。
現在、数cmの厚さをもつ原子時計を、数mm程度まで小型化することができれば、スマートフォンへの搭載の可能性が見えてくる。
今回我々は、メタレンズに関する研究を発展させ、プリズムと波長板の機能を追加することで、レンズ・プリズム・波長板の3種類の光学素子を1枚の超薄型素子に集積化する技術を開発した。
メタアトムと呼ばれる光の波長より小さいサイズの構造体を配列して光を制御するメタサーフェスは、数ミクロン程度の薄さで様々な光学的機能を実現できることから、次世代の光学デバイスとして注目されている。
今回開発された集積化素子は、基板上に半導体の製造プロセスを用いてメタアトムを配列したものであり、非常に薄型であるだけでなく大量生産も可能な特徴を持っている。
今回、ルビジウム(Rb)小型原子時計に用いられる波長795nmで動作するメタサーフェスを開発した。レンズ・プリズム・波長板の3機能を1枚に統合した多機能集積化メタサーフェスになる。
これは、光源から入射する拡散直線偏光を、円偏光の平行光に変換して、角度を変えて出射することができる。
設計ではまず初めに、長方形断面をもつ水素化アモルファスシリコン柱構造(メタアトム)の電磁場解析を行い、偏光のx方向成分とy方向成分との間に1/4波長(90度)の位相差を生成できる寸法を抽出した。
そして、偏光間の位相差を保ちつつ、全体の位相遅延を0~360度の間で自在に制御できるよう設計し、縦298 nm×横2,384 nmの範囲に8本の異なる寸法の柱を並べることで、プリズムと波長板の2機能の統合ができることを確認した。
詳細な誤差解析をおこなって、寸法誤差が回折効率・集光効率に与える影響を調査した。
実験ではプリズムと波長板の2機能の統合と、レンズ・プリズム・波長板の3機能統合に取り組んだ。
3機能統合では、0.3mm×0.3mmの範囲内に360種類の異なる寸法の柱を配置した。2機能統合では回折効率72.8%、3機能統合では集光効率77.3%を達成し、高い性能を示すことができた。
情報化社会の進展に伴い、高速かつ大容量で安全な通信技術への需要が高まっている。そのためには高精度かつ安価なタイミングデバイスの開発が必要であり、スマートフォンに搭載可能な超小型原子時計はその有力な候補。
同研究で提案された多機能集積化メタサーフェスは、1枚の超薄型素子で光の伝搬方向・集束性・偏光状態を高効率に同時精密制御する技術を提供するものであり、大量生産に対応することも可能であるため、次世代の超小型原子時計開発のための重要技術となることが期待される。<情報通信研究機構(NICT)>