日本裁判官ネットワークブログ
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守屋前防衛事務次官の軍需専門商社に絡む収賄事件の捜査が進んでいる。

 どこの世界でも悪貨が良貨を駆逐しているのだなといまさらながらに思う。
ゴルフ代や家族への便宜等に係る賄賂を受け取った疑いがあることをまつまでもなく、記者会見等での受け答えを見る限りでもトップの器とは思えない。

そのような人がなぜ、4年間も防衛庁(省)のトップに居座り続けることができたのか。

彼以上の器量を持つ人材はいくらでもいたはずである。
しかし、良貨は駆逐されて悪貨が残るという不公正な悲劇が起こってしまった。
あるいは、守屋前次官も任官する際には理想に燃えた有能な人材であったのかも知れない。
そうであるなら、彼をスポイルしてしまうものが官僚世界にあったのだろう。
スポイルされた現在の彼を上に押し上げるような不公正な力関係が働いていたのだろう。
その陰で国民にとって財産というべき有為の人材がどのくらいつぶされてしまったのだろうか。
 
裁判所も司法の危機といわれた1970年ころから少なくとも「司法改革」がなされた2003年ころまで(裁判所の冬の時代)にはあからさまに、悪貨が良貨を駆逐するといわれても仕方がない人事が続けられた。

不公正な人事行政の中で有為な人材が失意のうちに裁判所を去って行き、事件に目を向けず、上にばかり気を遣う「ヒラメ裁判官」を続けるうちにスポイルされる者を出し、これが裁判内容にまで影響を与え、利用する多くの国民が目に見えぬ被害を受けた。

「司法改革」の中である程度は改善された面があるが、現在、公正な人事がなされているといえるであろうか。

裁判をなすのは人であり、人を生かした人事の運用がなされければ、社会的な損失である。
特に憲法でその独立の重要性が規定され、国民の権利義務を左右する裁判官が不公正な処遇を受けて人材として有効に活用されず歪んでいるとしたら国民にとっても悲劇である。
 
私たちは、人事についても関心を持って、絶えず公正な運用がなされるように改善を求めて行くことが必要とされているように思う。(あすなろ)
 

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産経連載「君たちのために」第3回(07年4月18日大阪版夕刊)

           弁護士 井垣康弘

少年院へ行くか、行かないか

 毎年何十人もの中学2、3年生の身柄付き審判をする。少年鑑別所に入れて、心身の鑑別を受けさせ(報告は書面でもらう)、審判の席に、鑑別所の職員が(手錠を掛けて)連れてくるのを、身柄付き審判と言う。

 進んで、「少年院に行きたい」と言う中学生は1人もいない。全員が、「懲りた、家に帰りたい、学校に行きたい、勉強も一から頑張りたい」と半泣きの顔で言う。審判の席には、親の他、中学の先生方も見えている。校長・生徒指導・担任のセットが一番多い。   

 神戸家裁の実際では、審判の何日か前に、中学の先生が裁判官室を尋ねてきて、「あの子には手を焼いています。少年院に入れてください」とこっそり言う例が多かった。その種の陳情と分かっていて平気で取り次ぐ調査官には驚いた。私は、もちろん、「ご意見は審判の席上少年本人の前で述べてください」として全部お引取り願った。

 すると、審判まであまり日数がないが、学校側と少年側とで、真剣な話し合いが始まるのだ。先生たちが何回も鑑別所に通って少年と面接を繰り返し、親とも話を詰める。審判の前日は徹夜の交渉だったというケースもあった。

 ともあれ話がついて学校が引き取る決断をした場合、それを無視して少年院に送った例はない。

 校長が、その中学校始まって以来最悪の不良とされていた少年と鑑別所で直談判し、2人だけの秘密の約束をした。何と校長の趣味である毎週末のハイキングに卒業までの半年間少年が付き合うことになったのだそうだ。実践の結果はなかなかのものだったらしく、ビデオに撮ってある、卒業式での少年の「ボクと校長」という「謝辞」は、校長いわく、「教育にたずさわる人間として、自分をほめてやりたい宝物だ」そうである。

 話がまとまっていない場合は、審判の席で、「条件闘争」が始まる。まず、学校側が、その子のためどのように困っているのを具体的に語る。そして、学校に戻りたいのなら、「あれこれを親子とも全部守ってほしい」と多くの条件が示される。

 たいていは、「ともかく実践してみるので…」と約束し、半信半疑の学校側から「家裁の調査官による支えがほしい」との要望が出されて、試験観察になることが多い。

 しかし、親子とも、「全部実行できる自信がない」と正直に告白することもある。そして、「少年院ってどんなところですか?」と質問攻めに会う。親は、普通、「ひどいイジメに会い、悪いことを一杯教えられて箔が付いて帰ってくる」と恐れおののいている。詳しく説明すると、では「半年ほど少年院で頑張ってこようか」という流れになる。教師も「月2回面会に行きますから…」と助太刀する。裁判官も「一度は会いに行くよ」と励ます。そのようにして少年院に送った中学生の場合、少年院での成績がよく、その後の経過もすばらしい。



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 2日の総会以後,ブログに新規投稿が続き,活性化しております。小生もこの流
れにあやかるべく,土曜日に投稿するはずでしたが,ほんのちょっと遅れてしまいました。お詫びします。
 ところで,従来は,司法のニュースを毎日取り上げていましたが,他の投稿が続いていますので,土曜日に,一週間のまとめだけを取り上げたいと思います。もちろん,他に面白い書き込みができるようだと,そちらも書き込みます。(瑞祥)
 今週の司法のニュースのうち,目に付いたものでいくつかありました。時節柄,裁判員裁判向けの動きと,法曹人口増に関するニュースが多かったですね。
① 裁判員模擬裁判で,全国の8地裁が同じ想定で殺人事件の模擬裁判をしたところ、判決は無罪から求刑を上回る懲役14年まで、大きく分かれたという結果がでているようです(朝日)。これの評価は分かれるでしょうね。
また,民主党が4日、捜査段階の取り調べの様子を録音・録画して「捜査の可視化」を実現する刑事訴訟法改正案を参院に提出するとのことです。懲役・禁固3年以上の犯罪を対象に、取り調べの全過程の記録を義務づけ、録音・録画のない「自白」供述には証拠能力を認めない内容ということです(朝日)。警察庁も,取り調べの適正化に関する指針策定に向け、有識者による懇談会を設置することを決めたとのことです(時事通信)。岡村勲弁護士,河上和雄弁護士、高井康行弁護士、プロデューサー残間里江子さん、平良木登規男慶応大名誉教授,刑事法専門の前田雅英・首都大学東京都市教養学部長、川出敏裕東大大学院教授などそうそうたるメンバーのようです。裁判員裁判対策というだけでなく,鹿児島の事件や富山の事件などから捜査のあり方が問われているようですね。
② 法曹人口増の関係では,日本弁護士連合会が,旧司法試験に合格して司法修習を今秋終えた約1400人のうち弁護士の未登録者は17人だったと発表したということです(毎日)。また,6日の日弁連総会では,会員が納める月会費1万4000円を「新人」弁護士に限って半額にする会則改正案を賛成多数で可決したのですが,合格3000人計画に反対する立場の出席者から「計画への賛成を見直さずに減額するのは本末転倒だ」といった意見が相次いだとのことです(朝日)。
③ ちょっと,心しなければならないのは,東京地裁で,DV元夫に女性の住所漏らすとの報道です(毎日)。民事訴訟中であり,ミスといえるかどうかの言及は避けますが,裁判所も,公開でない事件では,特に個人情報の管理が必要でしょうね。
④ 裁判に関するニュースでは,薬害肝炎訴訟(大阪高裁)の和解案提示が13日に延期されたとの報道が目を引きました(産経)。当初は,7日までに提示されるようでしたが,救済の範囲について,意見の対立があるほか,諸般の事情が考慮されたようです。今後の動きが注目されます。
⑤ 渋めの記事としては,横浜地裁相模原支部(相模原市)が県内の地裁支部で唯一、重要事件である合議事件を扱っていないことから、地元の弁護士から「司法の地域格差が起きている」との声が上がっているとの記事です(東京)。合議体の問題が取り上げられるのは少なく,記事でも,「一般になじみの薄い問題のため、市民の理解を得にくいのが難点だ。」としています。

 

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