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通勤電車のドラマ

2007年12月17日 | 蕪勢
 通勤電車での長椅子席の座り方が気になってしようがない。私は,ラッシュアワーが一段落した時刻に始発電車に乗るのだが,9人,10人は座れる長椅子に,みんなが適当にまばらに座るものだから,7,8人で満席のように形になったり,右の座席の方は窮屈だが,左の方はたっぷりゆとりがあったりする。後に座る人のために,隣との間隔を考えて座る人は,意外と少ない。
 先日,興味深いシーンに出会った。一人の若い男が両側にかなりのすき間を空けて真ん中にどっかりと座り,盛んにケータイをいじっている。前に立った若い女性が静かに「詰めていただけませんか」と言った。男はこれを無視している。付近に立っていた別の男が,つかつかとそのケータイ男の前に来て,怒ったように「横に寄れ」と強い身振りを示した。ようやく気づいたふうのケータイ男は,左に身を寄せ,女性を見上げながら,空いた右側の座席を強くポンポンと何回も叩き,「座れ」と合図する。その仕草は異常であり,なにやら怖い感じもした。案の定,それを見た女性は,恐れをなして,顔を横に振り「結構です」とかぼそく言った。その直後,ケータイ男の右側に座っていた身だしなみのいい初老男性が,さっと左に動き,ケータイ男の右側に密着し,女性に,自分の座っていた空いた席に座るように仕草した。女性はその紳士にお礼を言って座った。一件落着。その紳士の行動の素早さと心遣いは,まことに格好がよかった。(蕪勢)