1 先頃の土曜日に,預金後何年も放置していたある大手の銀行預金口座から預金を少し下ろすことになり,約2キロの距離の銀行まで自転車で出かけた。自動受払機にカードを差し込むと,カードが期限切れで使用できないという表示が出た。キャッシュカードに使用期限があったかなと怪訝な思いで帰宅した。
2 翌週のウイークデイの昼休みに銀行の窓口に行き,払戻請求書を作成して支払いを求めたが,支払いを拒否された。私のカードはキャッシュカードではなく,クレジットカードになっているらしく,有効期限が決まっており,新カードが送られている筈だというのである。しかし私は,クレジットカードにしたという記憶がなく,使用期限などがあるカードになっているという認識がなかったので,おそらく送られてきたカードをどこかに放置したようである。こんな面倒なカードにしなければよかったと後悔したが,とにかく支払いを求めて,通帳と届出印と身分証明書を提示したが,支払いを受けられなかった。私のその銀行口座は「身体認証対象口座」となっており,機械で指掌紋のチェックを受けることになっているカードだから,新カードがなければ引き出せないというのである。
3 しかし,弁護士としては銀行の態度は理解不能である。普通預金した本人が自ら銀行の窓口に出向いて,通帳と届出印と身分証明書を所持して支払いを請求しているのである。これ以上に完全な権利行使の方法はないだろう。正当な権利者が正当に権利を行使しようとしているのに,銀行の勝手な理由で権利行使を認めないとは,一体どういうことなのか。コンピューターでさえ,一兆分の一くらいの確率で間違うことがあるとされているが,私の権利行使の方式は完璧である。カードを作成したのであるから,カードによるのでなければ権利行使を認めないというのは本末転倒というほかない。
4 係の女性と少し押し問答をした。しかし時間の余裕がなかったので,切り上げて帰ってきたが,暫く怒りが治まらなかった。二度も出かけたのにという思いもあったように思う。仮に私が自営業者などで,急ぎの資金を必要とする場面で,カードが見つからなかったとして,「通帳と印鑑では支払いませんよ。」というのは,余りにも非常識で,場合によっては大きな打撃を与えることもあるだろう。銀行が支払いをしても後日何らの問題が起きる筈もない。こういう場合には当然,カードでなく通帳でも払い戻しを認めるべきである。何とまあお粗末な話であろうか。
5 帰宅後,送られてきているかも知れない新カードを捜したが,見つからず,また腹が立った。もうこの銀行の利用を止めて口座を解約しようかとか,他の銀行も同じなのかとか,カードのことはそのままにして,支払請求の民事訴訟を起こして,この方式を改めさせてやろうかとか,怒りのままに色んな思いが渦巻いている。しかしまあその内怒りも治まって,バカバカしくなるに違いない。クレジットカードを止めて,通常のキャッシュカードに切り替えることで矛を収めることになるのだろう。(ムサシ)