日本裁判官ネットワークブログ
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国際ニュースになっていた事案で「表現の自由とユーモアの範囲内」と認めたそうです。さすがはユーモアを解するお国柄。
もちろん誰にも裁判を受ける権利はありますが、国家の最高権力者が裁判に訴えるというのはあまり美しくない感じもします。ロワイヤルさんは笑って許したそうですし。
もしも日本で「××ソーリの藁人形」が発売されて同様の裁判が起きたら、どんな判断になるのでしょうか。
(チェックメイト)

(朝日から抜粋)
フランスでサルコジ大統領の人形に針を刺す「呪いのサルコジ人形」が売り出され、大統領が発売元に回収を求めた緊急審理があり、パリ大審裁判所(地裁)は29日、大統領の請求を棄却する判断を下した。現職大統領が裁判で敗れるのは仏第5共和制で初めて。


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1 ある解決済みの事件である。別居中の若い夫婦の離婚調停事件で,調停申立前に,母と暮らしている生後数か月の子供と夫とが,2週間に1回の割合で面会(面接交渉)してもよいという口頭の合意が成立していた。離婚する場合には夫は自分が親権者になると強く主張して譲らないが,子供がごく幼いことから,それは到底無理であることが明かなケースである。

2 調停期日前の第1回目の面会日の直前に,夫が妻に相談することなく,自分と子供の住所を,それまでの妻の実家から夫の実家に移したため,妻は面会により子供を夫の実家に連れて行くことを認めると,子供の住所が夫の実家となっているのだから子供はその住所地に住むべきであると主張して,夫が子供を妻の元に返してくれないのではないかと心配した。そこで妻は約束した面会を拒否することにしたところ,夫から抗議の内容証明郵便が来たので,困った妻が私に相談し,私が代理人となり,夫宛ての内容証明郵便で返事を書いた。近く第1回目の調停期日が決まっていたので,その席で面会をどうするか決めようという内容であった。

3 その後私は妻の代理人として,妻と共に第1回目の調停に出席し,とり急ぎ面会をどうするかに絞って決める必要があることを調停委員に説明し,面会の都度子供を間違いなく妻の元に返すことを約束することを夫に求めたところ,夫もそれには応じるという。私はこの案件は,将来子供の奪い合いで,人身保護請求事件に発展する恐れもあると考えたので,夫が「面会の都度子供を間違いなく妻の元に返すと約束したこと」を中間合意として調停の期日調書に記載することを求めたところ,調停委員は,おそらく書記官にその話をしたものと思われるが,それはできないという回答であった。

4 しかしこのような手法は,裁判官によってはしばしば活用していることであって,裁判官や書記官がそれができないという態度を取った理由はよくわからないが,私には,「法律上不可能ということではありませんが,裁判所の負担を増やすことはしたくないのでしません。」と答えたように聞こえた。

5 人身保護請求事件では,以前最高裁は,別居中の夫が妻の元から子供を連れ去った場合に,夫も親権者であるにもかかわらず,妻からの子供の引渡請求を容易に認めていたが,平成5年の判決で判例変更し,夫も共同親権者として親権者であるから,夫による子供の監護も原則的には適法であって,夫による子供の監護・拘束が顕著な違法性を有するためには(同法規則),子供の幸福に反することが明白であるという特段の事情が必要であるとした。更に最高裁は平成6年の判決で,共同親権者が幼児引渡を命ずる仮処分等に従わない場合などには,顕著な違法性があるとの判断を示したのである。

6 したがって本事案においても,妻の側から将来子供の引渡を求める仮処分が必要になった場合に備えて,共同親権者である夫が,面会が終われば,その都度必ず母の元に子供を返すという約束をしていたこと,その約束に反して子供を返さないことを証明(疎明)することが必要になった場合に,調停調書が重要な機能を果たす可能性があったものである。

7 そこで私は,それまでの別々に調停を進める別席調停から,同席して調停を進める同席調停にすることを求めて,夫に直接確認したところ,間違いなく子供を返しますという。そこで私はやむなく「合意書」を作成すると申し出て,それを予め夫の元に郵送し,夫がその合意書に署名押印して,面会の日に妻の元へ持参することになり,面会問題はとりあえず解決し,面会は成功裏に繰り返された。1か月先の次回調停期日までに2回面会し,その都度子供を妻の元に返すことを確約するという内容の合意書を私が作成し,事件の解決まで,その作業を繰り返すことになったのである。面会の方法について細かく記載したり,子の健康に留意すべきことなど,やや細かなことも書き加えたため,いささか面倒な合意書ではあった。

8 調停の期日調書に,中間合意事項として記載することを求めた内容は,夫が妻に「面会が終わればその都度必ず母の元に子供を返すと約束をした」ことだけであるから,わずか1行か2行で済む作業であり,裁判所の負担といっても大したことはない。他方で,その内容を調書に記載することは,調停が顕著に役に立つ場面であるし,調停が重要な機能を果たしていることを証明するよい機会ではないかと思う。当事者も裁判所に感謝するであろうし,調停委員もよい仕事をしているという実感を持つことができるに違いない。裁判官や書記官としても,仕事のやり甲斐を感じる場面でもあるだろう。また私も弁護士として,合意書を2か月分の面会のために2度作成し,その都度1時間余りを必要としたが,調停の一場面において,弁護士として役に立つ仕事をしていることに満足感を覚えつつも,裁判所も負担軽減を最優先するのではなく,もっと前向きに可能な限り国民に役に立つ裁判所になろうという姿勢を持って,いろいろと工夫することが必要なのではないかという強い思いを抱いたのである。(この項続く・・ムサシ)


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 イタリアの重罪裁判所は,2人の裁判官と6人の参審員による参審制度がとられています。参審員は選挙民から無作為抽選で選出され,任期は原則3ヶ月です。手続きは当事者主義がとられ,被害者の代理人弁護士が参加するなど,かなり日本の裁判員裁判に似た構造があり,以前からその実態に関心を持っていました。

 現地では,法廷通訳に経験の深い日本人女性に通訳をお願いしましたが,イタリアでは都市国家の伝統から,ローマ,ベネチア,フィレンチェその他で法廷の構造や運用にはかなりの個性的違いがあるとのことでした(たとえは記録は録音か速記かなど)。

さて,ローマの刑事裁判所は刑事控訴審と同じ場所にあり,なぜか人が多く賑やかでした。傍聴した重罪裁判所法廷は,ステンドグラスを正面に飾り,「法の前に万人は平等である。」と書かれた衝立をバックにした法壇があり,比較的明るい構造でした。ただ法廷専属の警察官が常時警備をしていましたので,開放的とまではいえないかもしれません。

 参審員がイタリア国旗の三色をあしらった襷を掛けて誇らしげに入ってきました。法廷では,裁判官はもちろん検察官,弁護人,書記官,廷吏がそれぞれ法服を着用しており,権威を重んじる様子もありました。ただ,開廷前に裁判長が検察官や弁護人と親しげに話し,通訳の方も顔見知りの方だったので,私にも気軽に話しかけるなど,くだけた雰囲気がただよっていました。
 
 特にびっくりしたのは,陪席裁判官はイタリアでは知られた推理小説作家でもあるとのことで,そんなことがどうして可能なのか大変不思議でした。余裕があるのでしょうか?

 審理の様子はまた次回にお知らせします。
                         引き延ばしの「花」


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10月24日の京都新聞朝刊に,タイトルの見出しの記事が載った。同じ事件について裁判員裁判の模擬裁判が全国11の裁判体(東京4,高知,松山,奈良,大津,山形,大阪,京都)で行われたが,有罪が5(懲役5年が3,同6年が2),無罪が6であったという。
 事件は,42歳の被告人が,一緒に飲酒していた大工仲間の39歳の男性を,路上で踏みつけて死亡させた,という傷害致死被告事件であり,被告人は,記憶がハッキリしないが,死亡させるような暴行はしていないと否認した。
 検察側は,二人がほぼ一緒に行動していたこと,被害者のシャツについた足跡が被告人の靴の形と類似していること,被告人が事件後,知人に対し「蹴ったかもしれない」と話したことなどを主張し,弁護人は,二人が別行動した時間が約10分あること,足跡鑑定は類似というだけで信用性がないこと,被告人に動機がないことなどを主張したという。
 同じ事件を扱いながら,結論が二分したことについて,読者は裁判員裁判の信頼性について不安を感じられたかも知れない。
 しかし,今回の事案は,もともと結論が別れるように微妙な証拠構造に設定されていたものであるうえ,11の裁判体が同じ事件の審理に望んで評議をしたとはいっても,模擬裁判ですから,それぞれの審理毎に,配役の演じ方に微妙な差が出たことは避けられず,11の裁判体が「全く同じ証拠」に基づいて判断したとはいえないのです。したがって,11の裁判体で結論が二分したことは当然であると思います。
 むしろ,結論が別れてもおかしくない事件で,無罪が有罪を上回ったということから,裁判員裁判の評議が適切に行われたものといえ,積極的に評価したいと思います。 瑞月

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ロシア最高裁は、今月1日、革命政権によって1918年7月17日に銃殺されたロマノフ朝最後の皇帝ニコライ2世とその家族6人が政治弾圧の犠牲者だったとし、90年ぶりに名誉回復を認める判決を下したそうです。
昨年11月、同裁判所は名誉回復を求めた皇族末裔らの訴えを退けたものの、最上級審である同裁判所幹部会が上告を受けてその判決を破棄したといいます。これまで下級審は「国家権力が殺害を命じた証拠はない」などとする検察側の主張に沿った判断を下していました。
それにしても、名誉回復が裁判の対象となり、裁判所の「幹部会」が判決を破棄するといったあたりが、日本の裁判所のイメージからはかなり距離があります。制度面ではソビエト時代の名残もあるのでしょうか。
(チェックメイト)

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退官後弁護士登録までの期間を利用して夫婦でイタリアのパック旅行に参加してきました。老人向きの各都市連泊というスケジュールのため参加者はリタイア組のご夫婦と意外にも新婚さんが半々の構成でした。
 
 アリタリア航空が倒産寸前ということで出発も危ぶまれましたが,なんとかイタリア政府などがてこ入れ(いまはやりの資本注入でしょうか。)してくれましたので,無事現地に到着しました。ベネチアとフィレンチェ,ローマの3都市を回るツアーでした。整然とした石造りの町並み,屋根がなぜか皆赤っぽい色に統一されていること,所々にある大教会の中の宗教画の数々,美術館内のルネッサンス期の絵画の躍動感,紀元前の建築技術とは信じられない規模とデザインのコロッセオなどに圧倒されました。

 ただ今回の各都市はなぜか似たところがあり,撮りためた写真をあとからみるとどこの写真だったかはっきりしないといった感があります。

添乗員からすり,置き引きに気をつけるように何度も注意されていましたので,地下鉄の中でも身構えていましたが,同行の方が幼児をつれた母親が接触してきたので幼児をかばうような動作をしているうちに財布をすられた,という事件がありました。

 ローマでは知人に紹介していただいた通訳の方の案内で刑事裁判所を傍聴してきましたが,その内容などは長くなりそうなのでまた来週にでも。
    イタリアかぶれ?の「花」

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1 犯罪を犯した人が逮捕され,勾留されると接見禁止となることがある。弁護人以外とは面会できないのである。証拠隠しを画策したり,共犯者と連絡を取って口裏合わせを画策することなどが主な理由である。普通は接見禁止は公訴提起までであるが,第1回公判期日までとされることもある。
2 接見禁止決定がなされている場合に,家族がどうしても面会したいというときには,弁護人が接見禁止の一部解除を申請することになり,裁判官が検察官の意見を聞いた上で,接見を認めることになる。
3 一般に,面会希望者が多いため,全国どこでも同じというわけでもないのだろうが,当地では1回につき10分に制限されている。10分というのは余りにも短くて,アッというまに過ぎてしまう。顔を見て元気であることが確認できれば満足できる場合はそれでよいが,深刻な話がある場合には,余りにも短くて,また会いに行きたいということになる。
4 ところが驚いたことに,弁護士が接見禁止の一部解除を申請して,家族が面会する場合にも,1回10分という制限は同じだというのである。接見禁止でなければ,また翌日にでも出かければ面会できることになる。しかし接見禁止の一部解除による面会の場合には,その都度弁護士が裁判所に申請手続きを取らねばならない。家族の各人の色んな面会の必要に会わせて,その都度その申請をすることになるが,その申請回数が多くなると,さすがに怒りを抑えきれなくなる。接見禁止自体の全面解除や特定人についての全面解除も認められないわけではないが,なかなか容易ではない。さすがに第1回目だけは事実上15分とされているとも言われている。
5 接見禁止が公訴提起までであれば,比較的早くその日は来るが,第1回公判期日までとなると,それまでの期間が長く,弁護士がいろいろと使い走りをさせられることになって大変である。時には第1回公判後も(例えば第2回公判期日まで)接見禁止となる場合もないわけではない。
6 一般にわが刑事司法は,被疑者,被告人の身柄の拘束に関しては,被疑者,被告人に厳しく,保釈にも厳しいと言われているが,安易に接見禁止にし過ぎる傾向も強いように感じる。接見禁止の一部解除で面会する場合には,1回30分を認めるなどのような運用を考えないと,余りにも非現実的で実情にあわない。わが刑事司法において改善が必要と思われる点は甚だ多いように感じられる。(ムサシ)


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 今年は,ソフトバンクホークスの王監督が引退するようである。私の生まれた頃からずっとヒーローであり,長島元巨人監督と共に忘れられない存在である。プロ野球ファンの1人として,巨人に入団してから50年間,王監督,本当ご苦労さまでしたと言わずにはいられない。王監督に比べると年齢はかなり下であるが,阪神タイガースの岡田監督も引退のようである。今年,セリーグ優勝を逃したのはさぞかし悔しかろうと思う。ただ,年齢からして阪神での再登板もあり得るであろうし,王監督と同じように,他球団に招聘されることがあるかもしれない。いつかまた,プロ野球ファンを楽しませて欲しいと心から願うものである。

 このように,今年は,プロ野球界で大物の引退が続いているが,司法界も大物の引退が続いている。わが裁判官ネットワークでは,代表格であった安原浩元裁判官が6月に退官した(6月30日欄参照)。民事の集中審理方式や各種の判決で民事裁判官として名高い井垣敏生元裁判官(退官時大阪高裁部総括裁判官)も10月9日に退官した。その他にも,今年退官したか退官予定の大物や名物の裁判官は多いが,11月22日には,島田仁郎第16代最高裁長官が退官を迎える。あと1か月余りである。裁判官の場合,政治家と異なり,退官について特段のサプライズは一般にはないから,島田最高裁長官も予定どおりの退官と思われる。島田最高裁長官の長官としての在任期間は2年余りであったが,時期的に,平成司法改革の中で最大の改革といわれる裁判員裁判の準備の統括指揮官として,重要な役割を担ったのではなかろうか。王監督と比べるわけではないが,島田最高裁長官も,昭和39年4月の裁判官任官以来退官まで,実に44年7か月余りの期間,裁判官職にあることになる。本当ご苦労さまでしたと言わずにはいられない。小生も,大阪高裁に勤務しているころ,島田最高裁長官が大阪高裁長官であったので,お世話になった。退官後は,心身共にお休みいただきたいと心から思う。(瑞祥)
 


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最近、タイ憲法裁判所は全員一致でサマック首相の辞任を命じたそうです。
政治的背景や、どんな番組かがよく分からないのですが、テレビに出てもいけないとは厳しい憲法ですね。(チェックメイト)

(タイ大使館HPから)
憲法裁判所は2008年9月9日、サマック首相がテレビ番組「シムパイボンパイ」と「ヨッカヨーン・ホックモーンチャーオ」に出演したことに対し、閣僚の民間企業での就業を禁止した憲法に違反すると判断し、判事全員一致でサマック首相辞任の判断を下しました。それを受け、閣僚が総辞職することになります。


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 二葉が出そろった。シネラリアは,これからお日様を浴びてぐんぐん大きくなっていく。

 シネラリア(サイネリア)の鉢栽培を楽しむようになって10年。
 毎年9月の下旬にタネを蒔く。以前はホームセンターで手軽に買えたのに,最近は通信販売でないと,タネが手に入らなくなった。どうしたことだろう。今年は2袋を注文した。1粒が1ミリにも満たない小さなタネである。それを15×20センチのピートバンに落としていく。移植の時に根が絡み合わないように,一つ一つ間隔を空けて丁寧に蒔くのは,結構慎重な仕事となる。

 2,3週間で二葉がきれいに並ぶ。今年は20本ほど出た。まあまあの成績か。二葉からひと月もしないうち,背丈が2センチ,葉っぱも3,4枚となった頃,一つ一つビニールポットに移し替える。ここで,秋の貴重な陽射しをしっかり浴びさせると,12月になる頃には,背丈6,7センチのがっちりした苗となる。育てやすい。途中で枯れてしまうものはほどんどない。きれいな緑が元気な証拠だ。これを5号鉢に植え替える。どんな花を咲かすか,心が弾む。

 普段は,陽当たりのいい庭先で大丈夫。外気が5度を下回るときは,念のため家の中に入れる。鉢の数が沢山あると,その出し入れは結構大変となる。

 2月の半ばころから次々と開花する。どんな色合いとなるかは,咲いてみないと分からない。それがシネラリアの楽しみなのである。鉢一杯に小さな花が盛り上がる。1鉢で1か月は十分に鑑賞できる。

 近所にお配りして,「まあ,きれい! お上手ですね」と誉めて貰う。これがまた嬉しいのだ。(蕪勢)


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 9月20日のブログでも触れたアメリカ発の金融危機の影響が広がっていますね。株安も深刻で,ここ1か月で,日本が36パーセント,アメリカが25パーセント,イギリスが23パーセントの株安だそうです(朝日)。世界で,日本の国内総生産の3倍近い14兆ドル(約1400兆円)が失われたという試算もあるようです。投資家の方々は,こうした株安にストレスがたまって仕方がないのではないでしょうか。自分の資産が,何もしていないのに,実質的にどんどん目減りしていくのですから,気が気ではないでしょうね。信用取引をしている人なんかは特にそうでしょう。本来の仕事が手につかないとか,家庭内で配偶者や子供の声に気もそぞろとなんて事態になっておられる人もおられると思います。

 ところで,裁判官の中にも,個人的に,株取引をしている人はいると思います。資産運用も,昔とは違って一般的には大事なことであり,特に裁判官だけ許されないという根拠はないでしょう。あまり表だって議論されたことはないのですが,自分の資産を運用する程度の株取引は,経済活動の自由として裁判官の市民的自由の一つといえるかもしれません。裁判法52条2号,3号では,裁判官の経済活動として,「許可のある場合を除いて,報酬のある他の職務に従事すること」「商業を営み,その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」を禁止していますが,それ以外の経済活動については特に触れていません。株取引が上記条項に直ちに該当するというのは無理がありますし,上記条項は,裁判官の職務専念義務との関係の禁止条項であり,株取引が直ちに職務専念義務に反するとまではいい難いので,裁判官の株取引については,一般的な法規制はないというほかありません。法規制にまでいたらない倫理の問題としても,株取引が直ちに裁判官の倫理に反するとするとまで断定する根拠には乏しいように思います。逆に,裁判官は,実際の民事や刑事の裁判でも,株やデリバティブズ(金融派生商品)の事件を担当することが少なくないですから,株式を始めとした金融の知識や実体験を有していることは,裁判実務にも有用ともいえ,一律許されないというのは到底できないように思います。

 もっとも,裁判官の場合,あまり過度の株取引は,自粛した方がよいのではないかと個人的には思います。上記のとおり,株取引は市民的自由の問題ともいえ,かつその経験は職務にも有用なのですが,裁判官が,自分の余裕資金を超えて株取引をしだすと,今回のような事態が生じた場合,心の平穏を保つのがなかなか難しく,当事者の人生や命に係わる事件を扱う際に影響が出かねないと思うからです。個人差はあるでしょうが・・・。
 裁判実務のサボタージュなど,明確に裁判実務に影響し出すと,職務専念義務違反となりますが,そこまで至らなくとも,できるだけ心を平穏にして,あせりや曇りのない目や心で事件をみるために,ほどほどの取引が肝心かと思います。過度かどうかの具体的判断は,各裁判官の良識に委ねられることになるでしょうが,「保有株式の価格がゼロになっても,生活には響かないし,いい勉強になった」と思える程度の取引範囲内にとどめた方が無難でしょうね。ただ,日本の多くの裁判官は,そんなことより,今回の事態で,株やデリバティブズ取引をめぐる事件が増えて新たな法的問題が生じるのか,資産の減少や融資の引き締めで民事再生や破産の各申立てが増えるのかなどという点に興味を持っていることと思います。それは,それで健全な姿のように思います。(瑞祥)
 

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 タイトルに記載の講談社から新刊のミステリーを読んだ。作者から寄贈を受けた本である。作者は司法界を題材にしたミステリー作家で,日本裁判官ネットワークの例会にも参加して下さったことがあり,そのとき同氏が私の出身大学法学部の後輩であることを知った。それ以来のお付き合いである。
 同書は,平成21年7月21日,京都地裁刑事部で開廷される裁判員裁判第1号事件の審理を,8人の裁判員(補充員2人を含む)及び3人の裁判官の立場から,裁判員裁判に対する批判や思い入れと共に,詳細に描いている。
 被告事件は殺人・現住建造物放火である。裁判員選任手続で,志願者が,裁判員に選任されなかったことに異議を述べるトラブルに始まり,第1回公判では,自首した被告人が否認に転じ,真犯人は夫であると暴露供述をする。検察官は,僅か2日後の第2回公判と第3回公判で多数の証人による立証をし,被告人の夫などの弁護人申請証人を尋問した時点で,裁判員・裁判官は有罪が多数であった。その間に,裁判員二人が順次,評議の秘密を漏らしたとことで解任され,補充員が昇格するというハプニングがあり,弁護人による被告人とその協力者らの完璧なアリバイ立証により,裁判員・裁判官は一人を除いて全員無罪に固まるが,京女である裁判員(補充員から最後に昇格した女性)ただ一人の意見に皆が折れ,検察官の共謀共同正犯への訴因変更と追加立証を許容し,被害者の異母妹が,被告人ら複数の京女と共謀して実行したと証言して,裁判員・裁判官は全員一致で有罪判決をするという,小説ならではのドラマティックな流れである。
 裁判員裁判が実施された場合に起こり得るあらゆる問題を提起し,多様な経歴の裁判員と裁判官の立場で考えさせ,対応させるとことを経糸とし,京の町屋という独特の建物や,よそ者に対し陰険な京女が,異質な存在の被害者(有婦の夫を次々と寝取る多情な女)を排除するために結束(共謀・実行)するという,京都の独自性を緯糸にしたミステリーである。
 小説なので非現実的な部分も少なくないが,裁判員裁判の実施を先読みして大いに参考になる内容であり,それがミステリーとして一気に読ませる面白さを持っているので,裁判員制度の広報誌として大きな影響力があると思う。
 裁判員たちが,刑事裁判に参加した経験から,人生を積極的に生きていこうとするフィナーレが嬉しい。   瑞月(新人です)

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1 昨日の土曜日に京都で結婚式があり参列した。京都御所のすぐそばの神社の木造の質素な神殿で結婚式が行われた。参道には萩が咲き乱れており,風情があった。萩の句会が行われて間もないようで,萩の木に俳句が書かれた短冊がたくさん風に揺れていた。そういえば私の萩の名句の収集が不十分であることを残念に思った。

2 披露宴が終わり,帰途銀閣に立ち寄った。長年の解決できていない宿題の解答を求めるためである。お気に入りの俳句に,「山茶花は 全て白なり 銀閣寺」というのがある。その句が掲載されていた俳句集は転勤の際に妻が勝手に捨ててしまい,その後本屋を探し回ったが見つからず,作者は不明のままである。

3 山茶花は晩秋以降に咲くように思われるので,まだ咲いてはいないだろうと思っていたが,予想どおりであった。ただ山茶花の小径でもあれば,それを見ることで満足するつもりであった。門を入るとすぐに,それらしき並木があった。聞いてみると藪椿とサザンカとのことである。入場券を売っている女性に,「このお寺の山茶花は全て白でしょうか。」と聞くと,「違いますよ。」という。入場券を受け取る男性に,俳句を告げて聞いてみると,「確かに以前は当寺の山茶花は全て白だったと思うが,今は違いますよ。」と答えた。なるほどこれが正解なのであろうと納得した。

4 いずれ来年ころにも,山茶花が咲いている季節に,2泊程度の京都見物を企画し,妻と確かめに来てみようと思った。銀閣は今1年程度の予定で修理工事中なので,見物は今は避けた方がよい。

5 また別の年には2泊程度で奈良を回って見たいものだ。そういえば一昨年の夏,夫婦で1週間のマイカー北海道旅行をして,運転を交替して2000キロを走破し楽しかった。いずれ九州や四国や中国地方などを,夫婦でマイカー旅行をする予定ではある。そういえば富士山に登る予定もあるが,早く膝を治さねばならない。テニスも忙しい。いずれにせよ,大いに遊びまくってやろうという野望を実現するためには,仕事を頑張っておかねばなるまい。(ムサシ)


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 先週、韓国最高裁長官が国民に謝罪したというニュースがあった。

 李容勲長官は26日、韓国の司法制度が確立されて60周年を迎えた式典で、過去の政権が体制維持のために民主化運動家や一般市民を拷問するなどして多数の事件をでっち上げたことに裁判所が加担した責任を認め、司法機関トップとして初めて国民に謝罪した。李長官は、過去に裁判官が「正しい姿勢を保てず憲法の価値に反する判決を出した」と認めた。

 日本では戦後もこのような例は無いので、とても新鮮に感じられた。
 日本の裁判員制度施行に先立って、韓国では既に国民参加裁判制度がスタートしている。
 そこで、日本裁判官ネットワークでも、裁判員制度が施行される来春にでも、韓国の司法民主化をテーマに例会を開きたいと相談している。私は、韓国に視察旅行団を組んでもいいのではないかと思っている。
(チェックメイト)




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