日本裁判官ネットワークブログ
日本裁判官ネットワークのブログです。
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1 私と妻は昭和53年4月に新任判事補として任官したが,新任判事補研鑽の一環ととして,当時最高裁判事を勤められていた団藤先生が,新任判事補70数名に講演され,裁判官の心構えなどを話されたことがあった。その正確な内容は記憶していないし,資料も残っていないが,今でも記憶に残っている部分がある。
2 当時の団藤最高裁判事は,後輩の裁判官たちに次のような話をされた。「諸君はこのたび判事補として任官したわけだが,仕事はしっかり頑張って貰いたい。諸君は民事,刑事事件などの合議体の左陪席裁判官として仕事をすることになるが,裁判長はベテランで経験も知識も豊富であり,判例などもよく知っている。事件について合議する際には,諸君が裁判長を論破するようなことは不可能に近いかも知れない。諸君は裁判長に比べて甚だ未熟である。しかし経験豊かな裁判長が持っていないものを若い諸君は持っている。諸君には若々しい感性がある。正義感と情熱もあるだろう。諸君は裁判長のいう内容に簡単に納得しないで,自分はこう思う,この最高裁判例はおかしいのではないかなどと精一杯裁判長に意見を言って貰いたい。裁判長も未熟な左陪席裁判官も対等な立場であることを認識してほしい。そうすることによって,時には裁判長が意見を変えることもあるかも知れない。第一審の判決が前進しないと,最高裁の判例もよくなって行かない。わが国の司法の将来は若い諸君の肩にかかっているんですよ。」。そんなお話であったと思う。
3 われわれ新任判事補は,その講演を聞いて感動した。そして裁判官になってよかったと皆で話しあったものである。その後団藤先生の講演のことは,同期の裁判官は皆,心の底で大切にしてきたと思っている。
4 実は団藤先生は,現在の岡山操山(そうざん)高校の前身である旧制岡山二中のご出身であり,私の高校の大先輩に当たられる。その講演をお聞きした翌年,私は初めて団藤先生に年賀状を差し上げて,私が先生の大学,高校の後輩であること,先生のご講演に深く感動したことなどを書いたのである。大学の後輩ということだけでは,甚だその数も多いが,高校の後輩の裁判官の数は甚だ少ないので,年賀状の返事を事実上強制することになるのではないかと,いささか迷ったうえでのことではあったが,先生は丁寧な返事を下さり,私たち夫婦を励まして下さった。その後30年以上も年賀状の交換が続いたのであった。そのうちにお訪ねしたいという思いもあったが,残念ながら果たせないでいた。このたび98歳という長寿を全うされ,老衰のため逝去されたという報に接して,夫婦でお訪ねして,ご講演をお聞きして感動したことや,後輩として(妻は後輩ではないが)様々な思いをお話しておけばよかったと,痛恨の思いを禁じ得ないでいる。不肖の後輩として,心からお悔やみを申し上げたい。合掌。(ムサシ)


 



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高名な刑法学者である団藤重光先生が亡くなられたと報道されています。http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25028_V20C12A6000000/

50歳以上の法律家なら、団藤先生の本を基本書にして勉強した人が多いのではないかと思います。40歳代の人でも少なくはないのではないでしょうか。

私も上記のような一人で、定型性や人格責任、人格形成責任など、団藤先生の基本書の言葉が懐かしく思い出されます。「格調のある文章の行間を読め」と先輩に言われ、必死になって何度も読みましたが、行間の意味まで読めたかはなはだ自信がなかったのが正直なところでした。先生の後の世代の平野竜一先生の本も難解でしたが、団藤先生の説を批判されるので、平野先生の本を読んだりお話を聞くと、団藤先生の説がよく分かったりしました。同じ経験をされた人も多いのではないでしょうか。

先生が最高裁判事をされていたころ、補足意見や反対意見が判例集を賑わしました。新聞にもかなり書かれたと思います。影響力は大きかったのではないでしょうか。思い出す判例も多いですね。

生前に一度もお会いできなかったのが残念でしたが、先生のように思索の深い学者や法曹がどんどん育つのが望まれますね。自分もその末席の末席にいることができればと思いますが・・・。

先生の思い出のある方は是非書き込みをしてください。

先生のご冥福を心からお祈り致します。                        合掌                                    

 



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  過日、地元弁護士会の若手を中心とした判例勉強会で、銀行預金差押えに関する最高裁平成23年9月20日決定について議論を交わしました。ご案内の通り、メガバンクの預金差押えについて、支店番号順に当該債務者の全預金を差押えるという申し立てを却下したものです。高裁段階では認める決定が複数出ており、一部には最高裁の判断に対する期待感があったのですが、残念な結果に終わりました。

  その際、若手弁護士から言われて愕然としたことがあります。「裁判官は、せっかく苦労して判決を書いたのに、最高裁にその執行力をそぐような決定を書かれて悔しい思いはないのでしょうか」。そうです。若手弁護士ひいては依頼者から見れば、お金を払えという判決を書く裁判官は、その後のことについても十分思いをいたしてくれている、と思うはずです。

  ところが、自分の判事補時代を顧みても、そのような発想はありませんでした。和解が成立すれば、確かにそれは嬉しいのですが、判決の場合は書いてしまえば終了です。控訴審でどうなるかは気になりますが、確定後どうなったかなどは、よほどの案件でないと気にしません(小さい庁であれば、代理人弁護士を通じて事実上聞くことがあるでしょうが)。執行事件は、訴訟事件とはまた別のジャンルの事件として、その特殊なルールの中で処理をします。かくいう私も、15年以上前の裁判官時代には、同じ金融機関の三つの支店に順番を着けて差し押さえるという申し立てを却下し、高裁で逆転されたという経験があります。執行裁判所の論理からすると、じゃあどこまで支店の数を増やすことを認めるのかという境界線が事実上明確でなくなると考えたからです。

  韓国の弁護士にTwitterで問い合わせたところ、韓国の債権差押え制度では、金融機関さえ特定すれば良く、支店の特定を求められることはないそうです(まあ、色々法制度の違う韓国では、日本と違って同一人の口座把握が簡単にできる事情があるのかもしれませんが)。

  弁護士法23条の2に基づく照会という制度があって、各銀行にこの人にはどの支店に預金があるのか照会するという方法もありますが、メガバンクは預金している人(つまり判決で支払義務を負っている人)の同意がないと、回答してくれません。

  また、そもそも差押えをしようとしても、その人にどんな財産があるのか判らないという場合に、財産開示手続と言って、正直にどんな財産があるのか明らかにするように求める制度があるのですが、日本では殆ど使われていません。これに対し、韓国では、財産明示宣誓手続というものがあり、従わないと監置と言って身体を拘束される可能性があるためか、よく利用されているようです。2009年の統計だと、韓国の財産明示命令申立てが13万4072件であるのに対し、日本の財産開示申立ては894件しかないそうです(金融商事判例1378号1頁)。

  こうした点で、国民に裁判を起こしても相手からお金を回収できる可能性が高いですよと言うメッセージを発しないと、国民はせっかくアクセスした司法手続に愛想を尽かして二度と使わないと思わないかと心配になります。

 

 PS この原稿は、佐藤幸治先生の講演の前には概略完成させていたものですが、ブログでの先生の講演の宣伝を優先させようと、掲載を遅らせていました。佐藤幸治先生の講演に関しては、福岡の家電弁護士さんのような反応(http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-11282244179.html)もいただいているところであり、当ネットワーク関係者にも色んな考え(私の佐藤幸治先生宛の手紙は、一番佐藤先生をびびらせたそうです。笑)があることをお示しする意味でも、少し加筆して掲載させていただきました。



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1 裁判官のブログに健康論ばかりを書くのもいかがなものかとも思うが,どうやら私の頭は,今健康に関して異常な回転状態にあるらしく,書きたいことが溢れている。私が健康論を書いている趣旨は,法律実務家特に裁判官は激務であるので,健康に留意して,仕事を含めて裁判官としての人生を頑張って,よい仕事をしていただきたいという思いからであるが,余りくだらないことばかりを書いていると,ブログの品位を害するとしてネットのサポーターを除名されそうである。しかし書きたいことを全部書いて,自ら退く道もあるだろう。今暫くは書きたいままに書くことにしたい。法律的な文章も少し書き貯めたものもあるが,もう少し調査したりして手を加えたいのに,それをさぼって気楽な駄文を書いているのである。
2 古希間近の私の体に,最近いろいろと異変らしきことが起きている。 それは悪い意味ではないのであるが,まだ誇るに足る成果とまでには至らない。ただ少しだけ触れておきたいという気にはなるものである。
3 体重が減りつつあること,血液検査の結果がかなり改善されていること,髪が相変わらず黒いことなどもあるが,ごく最近視力が向上したのではないかと思われる出来事があった。月1回の眼科での定期検診で,矯正視力が0・2ほど向上したというだけのことであるが,私には思い当たることがあるのである。私は正常眼圧緑内障という病名で,既に15年近く眼科に通院しており,視力が除々に低下していたのである。そこで眼の健康に関する本や健康雑誌などで研究して,約2か月前からかなり本気で視力向上トレーニングをやっているさなかの出来事なのである。視力検査を担当した女性看護師さんが,怪訝そうな表情で検査を繰り返した結果なので,検査の結果には間違いはないと思われる。私もいつもと違ってよく見えるような気もしたが,日常生活では変化はなかった。体調などで視力に変化が生じることもあるだろうから,私の研究と努力の成果であるのか,単なる偶然であるのかはまだ明確ではない。しかし悪い気分ではないし,時間を要する訓練でもないので,益々トレーニングを頑張ってみたい。今後の経過の中で成果として公表できるかどうかは不明ということにしておきたい。いずれ担当眼科医とも努力の成果であるのかどうか,議論する日が来るように努力することにした。
4 その他にも,ごくささやかな工夫と努力の展開もあるが,これらを全部書いてみても,よほどの健康マニアでなければ興味が湧かないような気もするので,具体的な成果が生じて,努力してみようと思う人が出てきそうな場合に限定して,書くことを検討したい。(ムサシ)



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弁護士になって裁判結果がなかなか自分の思ったとおりにはならず,非力を感じることがよくあります。

しかし,最近,約3年前の事件について,社会復帰調整官から処遇終了の申立をしたとの連絡を受け,ほっとしたことがあります。

いわゆる老老介護の末の殺人事件の女性被告人ですが,幸い裁判員裁判で執行猶予になりました。

ただ犯行時も判決時も重度の鬱病で,自殺のおそれがあり,医療観察法による通院措置決定がなされ,社会復帰調整官が中心となって医師,

社会福祉士等と連絡調整をしながら,本人の治療と社会復帰に向けた努力がずっと継続されました。

特に毎年の犯行時と同じ月あたりが危ないとも言われていました。

私も時折訪問して激励などしておりましたが,2年くらいたつと少しずつ明るい表情に変わっきている,と感じられるようになりました。

医療観察法による長期の見守りが成功したと思います。そのような場面では法律家はあまり役立ちませんね。

処遇終了決定が出たら,本人と祝いたいと思っております。

                                                                  たまには役に立つ「花」



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昨日の裁判官ネットワークシンポにご参加のみなさん、ありがとうございます。心から御礼を申し上げます。

言葉は正確ではないかもしれませんが、佐藤先生が、司法改革について、難しい問題があるかしれないが、との前提で、表題の趣旨のことを強調されていたのがとても印象的でした。また、ローマについて大著を書かれた塩野さんの「本当の改革は簡単ではない。時間と手間がかかる。でも手間を惜しむものは衰退する。」という言葉の引用が意味深で何ともいえませんでした。

ご参加の方で、シンポについてご感想のある方は是非ご発言ください。よろしくお願いします。

 

 



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17日のシンポジウムが近づきました。再度お知らせします。

日本裁判官ネットワーク主催

シンポジウム「司法改革の経緯、成果、そして課題」

日時:平成24年6月17日(日)午後1時から19時半ころまで
場所:法曹会館 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-1 法務省赤煉瓦の東側 TEL:03-3581-2146

内容:

 1 記念講演(13時から14時半ころまで)
   【佐藤幸治】司法制度改革審議会会長(京大名誉教授)をお招きして,今次の司法制度改革を振り返る講演をお願いしています。  

   「司法改革の経緯、成果、そして課題」

   Ⅰ はじめに
   Ⅱ 司法改革の経緯
   Ⅲ 司法制度改革審議会意見書とその具体的展開
   Ⅳ 今後取り組むべき課題
   Ⅴ おわりに

 2 パネルディスカッション(15時から17時まで)
   民事裁判改革,刑事裁判改革,裁判官人事制度改革,法曹養成制度改革などについて,現職裁判官,弁護士,学者らが討論   します。

 3 懇親会(17時半ころから約2時間)
   会費は,ベテラン法曹1万円,その他の法曹6000円,その他の方は4000円の予定です。

 今回は,参加資格を法曹,学者,司法修習生,法科大学院生及び当ネット・ファンクラブ員に限定します。

連絡先 TEL:090-6061-0830 小林克美

 

  



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1 とりあえず早朝サイクリングが始まった。「毎朝」を目標ということではあるが,そう簡単ではない。しかし面白いことに何だか朝が来るのが楽しみになっている。続けるためにはいろいろと工夫がいる。就寝時間も少し早めることにした。実行した日はトレーニング表に記載するし,体重も記録を取る。さて月何回ということに落ち着くのだろうか。数年単位で続くように頑張ってみたい。
2 先日の日食の日の午前7時半ころ,少し予定より遅れて私は漱石の句碑の前で空を見上げた。私はテニス用にかなり色の濃いサングラスを持っているので,それで大丈夫だろうと思っていた。当地も金環食ではないものの,皆既日食に近く,かなり暗くなるのではないかと思い込んでいたのであるが,予想していた状況にはならず,辺りは明るいままで,サングラスではまぶしくて全く役に立たなかった。日食用のグラスを購入しておかなかったことを後悔していたところ,見知らぬおじいさんが近づいてきて,「見えますか。」と聞く。「まだ明るいですが,もう始まっているんですか。」と聞くと,「今が一番ですよ。」と言った。「これを使いますか。」と言って,日食専用サングラスを貸してくれた。私は近眼なので,私の度付きサングラスを通して二重に見ると,なるほど太陽が8割程度欠けている。しばらく見て,お礼を述べてサングラスをお返ししたが,それにしても辺りはいつもよりもほんの少し光の量が少ない気はしたが,殆ど日食の気配はなかった。その後昼のニュースで日食を見て,夜のニュースをDVDに録画した。
3 サイクリングのコースも,いろいろと工夫ができそうである。後楽園の外周を1周すると約8分30秒である。時速16キロとして計算すると,1周2200メートルになる。2周するとか,土,日は,後楽園の外周を1周した後,午前7時30分の開園に合わせて中に入って散歩するのもよい。老人用の入園料は140円である。シーズンごとに,いろいろな花などの撮影もできる。
4 先日の日曜日にロングサイクリングを試みた。通常のコースの帰路をそのまま延長して,隣接しているサイクリングコースを突っ走った。終点まで行くと全長約10キロの舗装された快適なサイクリングコースになっている。
5 今回は,その途中を横道に入り,川沿いの草深い細道を約1キロ余り走行した。ウグイスが鳴いている。誰もいないと思っていたら,草むらに人影があり,何か採っている様子である。停車して「何か採れますか。」と聞くと,「わらびですよ。」と言って,片手では持ちきれないほどのわらびを見せてくれた。これはよいことを教えてくれた。今年はわらびももう終わりだろう。来年はわらび採りに挑戦してみよう。実は私は秘密の「つくし採り」の場所を知っており,密かにわらびの採れる所はないかと探していたのである。来年は自分で採取したわらびとつくしを食べることができそうである。かねてから,わらびやつくしの料理法は研究済みである。これは楽しみだ。
6 まず当面1か月間熱心にサイクリングを続けることになった。その間の実践も全部記録しておくことになる。ビュンビュン全力疾走しているときは,「今脂肪が分解しているに違いない。」と思ったりする。1か月で2キロの減量は無理だろうか。そのためには,土,日の頑張りが必要ということだろう。そのうち土,日には,全長10キロのフルコースに挑戦してみようか。いずれにしてもサイクリングの継続は,生活サイクルの改善が必要になった。腹7分の減食も頑張ってみたい。さて一体どうなりますか。(ムサシ)
    



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 お伝えしている6月17日(日、午後1時から、東京法曹会館)のシンポジウムにおける佐藤幸治先生の記念講演ですが、演題は、「司法改革の経緯、成果、そして課題」であることは数日前にお伝えしました。

 先生からレジメをいただきました。当日写しを参加者の皆さんに配布しますが、項目建ては下記のとおり5つになっています。網羅的でとても興味深そうな内容です。焦点のⅣについても、詳しくお話いただけるようです。

Ⅰ はじめに
Ⅱ 司法改革の経緯
Ⅲ 司法制度改革審議会意見書とその具体的展開
Ⅳ 今後取り組むべき課題
Ⅴ おわりに

  ご講演は司法制度改革全体を振り返るものでとても貴重です。第2部もあります(裁判官による司法改革の現状や評価についてのパネルディスカッション)。参加資格は、法曹三者、司法修習生、法科大学院生、ファンクラブ会員です。ぜひご参加ください。特に裁判官の方々(身近なところで、メール、ブログ、ツイッターなどで、お誘いあわせ下さい。)、またとない機会ですので、ぜひご参加ください。


 



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