裁判所は人事の季節である。既に転勤予定の裁判官には次の任地が内示され、そろそろ裁判所内の一定範囲で公になり、次の任地についての情報収集等がなされる一方、転勤前にフルスロットルで仕事を片付けておられるころである。
そういう一般的な意味とは別に、今年は裁判所にとって大きな「人事の節目の年」となりそうだ。今年正月現在で高裁長官であった8人の方のうち6人が今年中に65歳の定年を迎えられるからである。今月一足早くに、大阪高裁の佐々木茂美長官が定年を迎えられ、札幌高裁の山崎恒長官が定年を待たずに依願退官されたが、この後も4人の方(※)が続々定年を迎え、しかも定年日は10月、11月に集中しており、そのあたりで玉突き的に大きな人事異動がありそうだ。
各高裁長官と65歳定年を迎える誕生日を列記すると以下の通り
東京高裁長官 ※吉戒修一 2013/07/07
大阪高裁長官 永井敏雄 2014/07/13
名古屋高裁長官 山崎敏充 2014/08/31
広島高裁長官 西岡清一郎 2014/09/28
福岡高裁長官 ※中山隆夫 2013/10/11
仙台高裁長官 ※一宮なほみ 2013/11/22
札幌高裁長官 大橋寛明 2014/11/09
高松高裁長官 ※出田孝一 2013/11/29
更に、これに裁判官出身の最高裁判事の70歳定年の日を重ねると興味深い。
竹崎博允 2014/07/07
白木 勇 2015/02/14
金築誠志 2015/03/31
千葉勝美 2016/08/24
大谷剛彦 2017/03/09
寺田逸郎 2018/01/08
つまり、裁判官出身の最高裁判事のうちで最も70歳の定年が近いのは竹崎長官であり、彼が定年を迎える来年7月7日まで高裁長官の座にいないと、最高裁判事の椅子にはたどり着けないのだ。したがって、※の4人の方には残念ながら最高裁判事の目はなく、残りの4人プラス※の後継者で1つの椅子を争う構図となるのだが、4人とも次の白木さんの定年前に65歳になるのでラストチャンスでもあるのだ。そして、着任間もない2人とまだ見ぬ後継者は事実上除外され、おそらく山崎敏充長官と永井長官のマッチレースとなるだろう。吉戒長官の定年後の東京高裁長官にどちらが座られるかが着目点である。
裁判官も定年が近くなると、こういうことを否応なく考えるのである。そして自分に番が回ってくるという自覚と自信がある人は、その立場になった時のことを考えて日々行動しておられる。それが裁判所の組織としての強みとは言えるだろう。(くまちん)