まだまだ法曹人口を吸収できていませんが,将来的には有望ではないかと思います。よく言われる行政官庁や自治体はどうでしょうか。以下,朝日新聞からですが,本文に出てくる高山弁護士は元裁判官で,一緒に野球をしたのが懐かしい。裁判所から去ってしまって少し寂しい限りです。
法務部、増す存在感 買収防衛・法令順守…役割拡大
「企業の法務部門」と聞いて何を思い浮かべますか。契約書式のチェック? 特許の登録事務? 確かにそれも法務部門の仕事ですが、最近は中身も陣容も大きく変わりつつあります。法令順守や企業倫理が社会から厳しくチェックされるようになり、法律や制度も次々に大きく変わります。世界的な企業合併・買収(M&A)時代にも備えなければいけません。変化のなかで、関係者の悩みもまた多いようです。
経営法友会の会員数と企業内弁護士の人数
企業内弁護士が多く所属する企業上位10社
●不可欠な現場感覚
約400人の企業の法務担当者らが9月半ば、都内のホールを埋めた。法務部門の交流組織「経営法友会」が毎月開く定例会。この日のテーマは買収防衛策だった。
米投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックソースに仕掛けた敵対的買収など、国内で本格的なM&A時代が幕を開けたことを印象づける事例がこの数年、相次いだ。企業は、買収防衛策の検討などいや応なく対応を迫られている。
その最前線にいるのが法務部だ。「防衛策導入の効果はあるのか」「どんな仕組みにすべきか」。講師の弁護士の話に、法務部員らは熱心にメモをとった。買収防衛策の導入を決めた上場企業は約1割の400社に過ぎず、経営陣にも判断材料はまだ乏しい。法的な実務を仕切る法務部門の判断が重要になる。
大買収時代到来だけではない。「ここ数年は大きな制度改正が続いた激変期。規制緩和でビジネスも多様になり、法務で扱う案件が増えた」。大和証券グループ本社法務部長の桑原政宜さん(43)は話す。06年施行の新しい会社法で、様々な組織再編や資金調達が可能になり、国境を越えたビジネスも増えている。
加えて、投資家保護を強めた金融商品取引法も9月末に全面施行された。証券会社員が商品説明を今まで以上に十分果たさないと法令違反の恐れがあるなど、経営リスクにかかわる事例が増加。社会や消費者の目も一層厳しくなっている。
71年に約100社で発足した経営法友会への加盟は今年、1000社を突破した。会の代表幹事を務める三菱商事法務部長の松木和道さんは「法務は契約書の草案作りなど黒衣役だったが、今は営業の最前線に立つことも多い。仕事の領域が広がっている」と話す。
課題は人材。桑原さんは「法律知識だけではだめ。変化が早い現場の動きを把握しなければ仕事にならない」と、人材育成の重要性を指摘する。
●弁護士の採用は道半ば
そんななかで、企業法務界で期待されているのが、「企業内弁護士」の役割だ。昭和シェル石油の井上由理・法務室長もその一人。同社の顧問をしている法律事務所にいたが、03年に請われて室長に就いた。
石油業界は近年、需要低迷や激しい価格競争にさらされている。同社も太陽光発電などの新規事業を拡大中で、法務室の仕事も契約の審査だけでなく、最新技術の知的財産権保護や活用が重要度を増している。井上さんの室長就任時に8人だった室員は12人に。井上さんは「法務部の力が、企業の基礎的な力として試される時代になってきた」と実感している。
国内の企業内弁護士は現在約190人。TMI総合法律事務所の弁護士、高山崇彦さんは「早い段階で法的なチェックができ、法律事務所に持ち込まれる案件でも問題点が事前に整理されている」と利点を指摘する。
だが、日本弁護士連合会が今年まとめた約5000社を対象に行った調査では、企業が今後5年間で採用する予定の弁護士は約70~170人と、「非常に低調」(日弁連)な結果となった。
背景には、企業が求める実務に通じた人材は応募が少なく、「企業側が望む人材と就職を希望する弁護士のミスマッチがある」(企業の法務担当者)という事情がある。一般に弁護士の所得水準は民間企業の従業員より高く、処遇が難しいことも二の足を踏む原因になっているようだ。
ただ、司法制度改革により、現在は年間約1500人の司法試験合格者が、2010年に2倍に増える見通しだ。弁護士資格を持つ人が企業に入り、営業現場なども経験しながら法務担当者になる可能性は今後増える。
企業や官庁で働く弁護士で作る日本組織内弁護士協会理事長の梅田康宏さん(33)は「日本企業が国際競争力を保ち続けるには、法律の知識や経験豊かな人材が社内にも不可欠なはずだ」と話す。企業が弁護士を社内で活用する機運を高め、弁護士側も企業で働くことへの抵抗感を薄めるなど、「産業界も法曹界も意識を変える必要がある」と梅田さんは指摘する。
●「ブレーキ役」期待
企業の法務部は、経済記者もあまり接する機会がない。初めて取材して、広い守備範囲に驚いた。ビジネスや研究開発の現場から見れば、口うるさいブレーキ役に見えるかも知れないが、大きな事故やトラブルを回避して仕事を進めるための、縁の下の力持ち的な存在だ。
法務部門には、経営陣が万一、暴走した場合にブレーキをかける役割も一層大きくなっていくだろう。社会正義の実現を旨とする弁護士が、企業内で働くことの真価も、その局面で問われるのではないか。
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