1 法律実務家の仕事は案外肩が凝る。細かな気遣いを必要とするせいであろうか。私は比較的肩凝りに悩むことは少ないが,最近はいろいろと肩が凝る事件が多くなった。
2 そこで偶然にコンビニで見つけたツボの本を買ってきた。種々検討した結果,10か所余りのツボを自分で揉むことになり,本をコピーしてマーカーで線を引いたりして,資料を整備した。トレーニング計画表にもツボ揉みの欄を沢山追加した。1か所を30回ずつ,全体を4回転という目標にした。実践したら順次一覧表に○をつける。目標達成は案外大変であるが,きめ細かく散りばめて頑張る工夫をしている。
3 所詮遊びなので気楽な話ではあるが,パソコンに向かうなどして,ホッと一息つく時などに,1~2カ所ツボ揉みをするという具合である。案外気持ちがよいし,健康にもよいに違いない。特に肩と首を揉むと気持ちがよい。血圧や血糖値を下げるツボもあるし,指そらし体操もラクラク血圧を下げるとされている。
4 自分でするあん摩が思ったよりも気持ちがよいことに気付いた反作用として,肩懲り症らしい(?)妻の肩を揉んでやる回数を大幅に増やすことにした。妻孝行とでもいうのか,「できる亭主」を目指す場合の重要な要素になりそうである。「肩を揉んでやろうか」というと,妻はいつも嬉しそうに「ありがとう」と言う。「30分だぞ」と言って,夕食後2人で事務所のテレビを見ながら30分肩を揉む。案外30分はすぐ過ぎる。「もう30分が来たよ。」と言うと,敵もさるもので,「やっと気持ちよくなったのに。」などと言ってやめさせてくれない。「あと10分だけだぞ。」と言っても,結局敵の策略に敗れて1時間になることが多い。もっとも妻が私に惚れ直していることは確実で,結婚してよかったと思っている筈である。
5 ある宴会の席で,隣にいた若い弁護士にそのような話をした。すると彼は,「実は私も毎日1時間妻の肩を揉んでいるんですよ。」と言った。彼の肩揉みは確か1時間5000円程度のアルバイトとなっているそうである。これは名案だ。よいことを聞いたと思って妻にその話を持ちかけたが,即時却下。軽く一蹴されてしまった。まあよかろう。「できる亭主はつらいよ!」ということであろう。最近は私のあん摩の腕も上達してきたが,この際あん摩の本を買ってきて,一流のあん摩師を目指そうか知らん。あん摩マッサージ指圧師の免許を取れば,妻も有料に応じるのではあるまいか。
6 最近は,いろんな機会にツボ揉みや各種トレーニングをする細かな工夫が進んでいる。事務所から裁判所までの100メートルの歩行時などに,「ドローイン」と言って,腹を凹ませて歩いたり,手の甲のツボを揉んだりする。ドローインは消費カロリーが確か1・4倍になり,腹筋が強化されて腹部が引き締まるそうである。仕事で裁判所の支部に出かけたり,遠くの警察署への接見など車で遠乗りする時は,信号待ちの時間などにセッセとツボを揉む。朝と夜2度風呂に入り,風呂の中でたっぷりツボ揉みするのも名案である。手足の薬指以外の指の爪を両側から強く30回ずつ押す。免疫力が高まるらしい。「実践免疫革命 爪もみ療法」(福田稔著,講談社+α新書)という本もある。足の裏,ふくらはぎなどもたっぷり揉む。様々な待ち時間も案外忙しく退屈しない。
7 私はこのところツボ揉み名人になった気分である。最近毎朝洗面所の鏡の前で,何だか髪がますます黒くなっているような気がするし,減量にも少しずつ成功している。ツボ揉みは案外予期せぬ効果を発揮するかも知れないと思うようになった。(ムサシ)
第1位 裁判員裁判(覚醒剤取締法違反・営利目的密輸事件)での無罪判決を破棄有罪とした高裁判決を、最高裁が破棄し無罪判決(2月)
☆刑事裁判の控訴審について「1審と同じ立場で審理するのではなく事後審査に徹すべきで、1審判決を破棄するには論理則や経験則に照らして不合理だと示す必要がある」との判断。裁判員裁判の下での控訴審のあり方を示しており、今後の刑事裁判に与える影響が大きいと考えられます。
第2位 平成22年の参議院議員選挙について、最高裁が違憲状態との判決(10月)
☆最大5倍の「一票の格差」を「違憲状態」と判断。「都道府県単位で選挙区の定数を設定する現行の方式を改めるなどの立法的措置を講じ、できるだけ速やかに不平等状態を解消する必要がある」と選挙制度の抜本改正も求めています。
第3位 日弁連会長選挙、再投票でも決着つかず、史上初の再選挙で決着(4月)
☆これほど話題になった日弁連会長選挙はないのではないでしょうか。当選要件について議論もあるようです。
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第4位 法曹養成制度検討会議始動(8月)
☆法曹養成制度のあり方を検討するために、法曹養成制度関係閣僚会議が設置され、その下で有識者による検討会議が、1年以内(平成25年8月2日まで)の結論を目指して始動しています。
http://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00001.html
第5位 東電OL事件再審開始決定(6月)、無罪判決(11月)確定
☆再びDNA鑑定が話題となりました。12月には、DNA鑑定などの科学的証拠を、「正しい判断をするためには、限界を理解することが不可欠で、過信・過大評価してはならない」とした司法研究報告書が公表されました。
第6位 小沢一郎衆議院議員(元民主党代表)の無罪判決(地裁4月、高裁11月)確定
☆検察審査会の起訴議決に基づく強制起訴による政治資金規正法違反事件。3月には、同じく強制起訴による未公開株詐欺事件で、那覇地裁が無罪判決を言い渡しました。
第7位 裁判官ネットによる司法改革シンポ(6月)
☆司法制度改革審議会会長の佐藤幸治京都大学名誉教授を招いてのシンポジウム。2部構成で大成功。結果は、来年(平成25年)1月に判例時報に掲載予定です。
第8位 司法試験結果発表、予備試験組の合格率68.2パーセント(9月)
☆今年から予備試験組が受験。全体の合格率が25パーセントの中で、驚異的な高率で議論に。受験者数も初めて減ることに。
第9位 裁判官の自殺と逮捕事件が発生(8月)
☆共に大阪地裁所属で、部総括判事の自殺と新任判事補の逮捕事件(盗撮容疑)が発生。現職裁判官の逮捕は5例目で、当該裁判官は11月に弾劾裁判所に訴追されました。とても残念です。
第10位 光市母子殺害事件、最高裁で上告棄却(死刑判決が確定、2月)
☆犯行時18歳1か月で、様々な議論を巻き起こした事件でした。
番外で注目されるのは、君が代不起立訴訟最高裁判決(1月。戒告と減給・停職を区別)、新任判事補99人、富山、松江、釧路、徳島以外の本庁にはすべて配属(1月)、東住吉放火殺人事件で再審開始決定(大阪地裁、3月)、裁判員裁判で無罪となった被告人が控訴審の途中に死亡(鹿児島、3月)、大阪平野母子殺人差戻審、無罪判決(大阪高裁、3月)、大阪地裁、大阪地検元特捜部長らに有罪判決(3月)、さいたま地裁、鳥取地裁で、連続殺人事件で、女性被告人に裁判員裁判で死刑判決(4月、12月)、アスペルガー症候群と認定された被告人に求刑(懲役16年)を上回る懲役20年の判決(大阪判決、裁判員裁判、7月)、最高裁、会社分割の濫用を詐害行為として取消しの可能性を認める判決(10月)、最高裁、裁判員裁判の実態を検証した報告書発表(12月)などです。
(お詫び)時間的余裕がなく、今年は読者の投票をしていただけませんでした。お詫びします。来年は投票をしていただけるようがんばります。
「法科大学院制度による法曹人口の過剰増員と司法修習に対する給費制の廃止がもたらすもの」
1 12月21日に日弁連が主催した「周防監督が問う法律家の育て方~給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を考える市民集会~」に出席してみた。そこでの議論を聞いて,い ろいろ考えさせられた。
2 65期で,弁護士登録をしたばかりの人が,切実な実情を紹介した。司法修習生の借金をさせられるだけの無権利の地位に唖然とした。無給の準公務員で,修習専念義務だけを負い,二回試験に合格しなければ,何者にもなれないという頼りない地位である。こんな制度を誰が考えたのだろうか。おそらく最高裁当局を含む官僚ではないかと思うが,人間の尊厳を無視した扱いである。
3 法曹の役割は大きい。国と社会の安定のためには不可欠な存在である。 しかし,国や自治体の官僚には,弁護士は文句ばかり言って邪魔な存在だと考えられているのではないだろうか。司法官僚,法務官僚も,「優秀」な裁判官と検察官さえいればよく,弁護士は要らない,いても邪魔にならない存在であってほしいと思っているのではないだろうか。
しかし,良く考えてみると,弁護士を含む法曹の質が低下すると,裁判官,検察官 の質も低下してしまう。結局のところ,法曹の自爆への道ではないだろうか。
4 法曹になるのは,投資ではない。これは教育全般に言えることで,そもそも教育を投資と考えるのは間違っている。 職業教育なら投資と考えやすいが,法曹教育は単なる職業教育ではない。周防監督は,「真のエリートは,自分のことを考えないで,人のために尽くせる人である」という考え方に賛成だと言われた。
日本の弁護士の中に,こういう真のエリートが存在したことは事実である。社会正義を実現するために己を捧げた弁護士が相当数存在し,現在も存在している。 こういう弁護士の存在が,ある層にとって邪魔だと感じられているのではないだろうか。ビジネスマンとしての弁護士が多く存在し,便利に使えれば良いと考えているのではないか。
5 法学部4年,法科大学院2年ないし3年,司法修習生1年,すべて自費で自分を養成しなければならないのである。こんな苦労を,「今時の若者」がする気になるだろうか。大人は,こんな苦労を若者にさせて良いのだろうか。
法曹になる勉学は,法学部4年で十分である。法律学は常識であり,決して難しい学問ではない。初心を忘れないで,研鑽に励み,人の役に立つ法曹になるという意欲を堅持することができれば,それで十分である。しかも,年齢を重ねてから,法曹としての「真のエリート」精神を養うことは難しいと思う。
6 それに,法曹を目指す若者の多くは,富裕層の出身ではないという現実である。私も兼業農家の生まれであり,農地解放がなければ,「水飲み百姓」であった。 裕福でない家庭の子どもが,25歳を過ぎても稼げない法曹の仕事を目指す気になるだろうか。親に苦労と心配をかけたくないと考えるのが普通の子どもである。
7 法曹人口の過剰増員と司法修習生に対する給費制の廃止は,弁護士の変質をめざしたものであるが,法曹そのものの自爆につながるものではないかと危惧している。
8 司法修習生に対する給費制の復活は一般国民の理解が必要であるとはいえ,大多数の国民が理解するには時間が必要である。
原子力発電などの問題と同じく,「真のエリート」を自負する層がまず決断することが必要ではないかと思う。作った制度を廃止する勇気も必要である。
(万太郎)
テーマ
「地域司法とIT裁判所」
1 日時 平成25年2月9日 13時から17時まで
2 場所 東京・渋谷・道玄坂の「フォーラム8」 515号室 http://www.forum-8.co.jp
3 講師
ア 渡辺淑彦・松本三加弁護士・福島県いわき市「浜通り法律事務所」
渡辺弁護士は東日本大震災の震災・原発被害対応で奔走されている方です。いわきに定着される前は相馬 ひまわり基金法律事務所の所長をされていました。松本弁護士は、全国で三番目に開設された北海道紋別のひまわり基金事務所の初代所長を務めたのち,留学してアメリカの司法過疎を研究してこられた方です。
渡辺弁護士の講演内容は、以下の内容を更に充実したものとなるはずです。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ilss/120930sympo.pdf
イ 笠原毅彦教授・桐蔭横浜大学
「高度情報化社会と司法制度」を研究テーマとしておられ,司法のIT化研究の第一人者です。
4 進行の予定
第1部 13時から約1時間
渡辺淑彦・松本三加弁護士の講演
震災対応を含め,過疎地の司法の現状,問題点,改革の方向など
第2部 14時から約1時間
笠原毅彦教授の講演
司法にITをどのように取り入れられるのかなど
第3部 15時30分から17時まで
裁判所支部管内で活躍中の弁護士や支部勤務経験のある裁判官,元裁判官等からの発言
渡辺淑彦,松本三加弁護士及び笠原毅彦教授の鼎談
5 パーティ 17時30分から約2時間 会場はフォーラム8 771号室
6 パーティ会費
40期以上相当の法律家 1万円 その他の法律家 6000円 ファンクラブ員・一般の方 3000円
以上 文責 小林克美 中村元弥
神奈川県警の警察官から依頼され、暴力団幹部から覚せい剤の情報を聞き出したものの、頭に拳銃を突き付けられ、覚せい剤の注射を強要された。
このような被告人の弁明を一審の横浜地裁は「荒唐無稽」と一蹴していたが、控訴審は採用し、緊急避難を適用して逆転無罪判決。
極めて珍しいケースだが、信じられないような話が特定の府県警に集中して目立つ印象がしてならない。
明日は総選挙の投票日である。明日を控えて、ちょっと書いておきたいことが、あったので、ブログに掲げてみる。
今回の総選挙で投票に行けることを、首を長くして待っていたご夫婦を1組、存じ上げている。布川事件で先般再審無罪判決を得て公民権を回復した桜井昌司さん、そして、「夫と一緒に投票所に行くこと」が夢であると語っていた妻の恵子さんである。
http://blog.goo.ne.jp/syouji0124/e/52b0b4c6f55174a33e24a9456e0d396f
桜井さんのブログに対して、「選挙があるから、投票券が来るのは当たり前」というコメントがついているが、その「当たり前」の権利を回復するために、桜井さんは44年の歳月を要したのだ。それを踏まえて、この「投票所入場整理券」の写真を眺めると、胸をつかれる思いがする。
「自分が投票するくらいで何も変わらない」という無力感に苛まれている人も多いかも知れないが、この写真を見て、「棄権」を思いとどまっていただければ幸いである。
なお、明日は、最高裁判所裁判官の国民審査も行われる。最近は以前に比して、ネット上の情報も充実してきた。
例えば、下記の毎日新聞の記事や、
http://mainichi.jp/select/news/20121214ddm010010009000c.html
また、「裁判官の爆笑お言葉集」の著者長嶺超輝さんの作られた下記のサイトなどを参考にされてはどうだろうか。
http://miso.txt-nifty.com/shinsa/
(くまちん)
1 飼犬が死んだ。雄の柴犬で享年16歳6か月であった。老衰であり,まずまず穏やかに死んだ。少し前から変調をきたしていたが,深夜私が帰宅すると玄関に横たわっていたので,名を呼んで,「ヨシヨシ」と言って頭を撫でてやると,クーンと鳴いた。
2 人間の歳にすると80歳から90歳だろうか。一応長寿だったということか。3年前に雌猫が死んだ。火葬にして骨を庭の隅に埋めてやったが,犬も同様に猫の隣に骨を埋めた。2匹とも可愛がってやったつもりであるが,果たして幸せだったのだろうか。
3 2人の娘も結婚して家を出ているので,わが家は夫婦2人だけになってしまい,寂しい毎日である。私たちは元夫婦裁判官の転勤族で,宿舎住まいであったから,ペットの飼育は許されなかった。平成7年に私の郷里の近くに夫婦で転勤になったので,私の郷里で一軒家を借り,妻は新幹線で20分の通勤をし,私は単身赴任した。
4 借家してまもなく庭に白色の小柄な野良猫が住みついた。生後半年位かと思われ,風貌も穏やかで,元はどこかの飼猫が何かの事情で捨てられたかと思われた。1週間ほど庭で粘って,子供たちの強い要望によりわが家の住人になった。猫の粘り勝ちである。
5 それから1年後に自宅を新築した際,多少の経緯を経て,生後1か月程度のヨチヨチ歩きの柴犬がわが家の住人になった。
長女は3年間,次女は7年間,犬と猫と暮らしたことになる。2人とも,もしも動物好きで心優しい子に育ってくれたのであれば,飼犬と飼猫に負うところが大きい。私も毎朝30分犬の散歩を強いられたので,犬は私の健康の大恩人でもある。
6 猫の時と同じように,子供らに犬の死を電話で伝えた。悲しいことではあるが仕方がない。子供らも悲しんでいた。来年の夏には,3歳を頭に2家族4人の孫台風がわが家を襲うことになりそうであるが,もはや孫を迎える犬も猫もいない。その時に備えて子犬を飼うという秘策もあるが,どうやら妻は消極説である。
7 「ペットロス症候群」という症状があるそうである。ペットの死による悲しみに耐えきれず,悲嘆にくれるのだそうで,悲しみの余り,もう2度とペットは飼いたくないと思うらしい。ペットはいつか死ぬので,その悲しみを避けるために,ペットは飼わないことにしていうという人も多い。しかし私は,ペットを飼うことの喜びも悲しみも飼育の大変さも私どもを成長させてくれ,人生を豊かにする大きな要素であると思う。わが子が生まれたときの喜びや成長してゆく過程での心がとろけるような愛しさは,きっと親を人間的に成長させてくれるに違いないが,そこまでではなくても,ペットも我々を成長させてくれるに違いないと思うのである。
8 私はまた子犬を飼おうかなと思ったりするし,妻は猫を飼いたいと思っている節がある。猫の時も犬が死んだ今も悲しみに打ちひしがれてはいるが,もう2度とこの悲しみを味わいたくないとまでは思わないから,「ペットロス症候群」ではなく,「ペットロス症候群もどき」というべきであろうか。
9 わが家の猫は,ヨチヨチ歩きのチビ犬が家族になったときには,すでに犬を受け入れない歳になっていたので,2匹は喧嘩友達のままで終わった。チビ同士の犬と猫を同時に飼い始めると,2匹は仲良しになるものだろうか。もっとも今2匹のチビを飼い始めると,わが夫婦のアンティエイジングには役立つが,きっとわが夫婦の方が先にあの世に旅立つであろうから,どうするかは簡単には決められないことになる。(ムサシ)
それにしても、遺族もまた冤罪事件の被害者であることを痛感させられる。
面子にこだわらず再捜査を尽くしてほしいものだ。
先行した横浜地裁判決とは異なり、国の責任を認めた。
屋内の建設作業員について、防じんマスク着用を罰則付きで義務付けなかった点を問題にしたもの。
これを教訓にして、今後は労働者を守るため、早期の規制権限行使を期待したい。
周防正行監督の映画「終の信託(ついのしんたく)」が公開され、大沢たかおさん演じる検事の迫真的な取調べシーンが話題を呼んでいる(下記の公式ウエブページの予告編ご参照)。
http://www.tsuino-shintaku.jp/
その原作は、実在の「川崎協同病院事件」に取材した作家・朔立木氏(実は高名な刑事弁護人の筆名)の小説である。
周防監督は、言わずと知れた「それでもボクはやってない」を作られた監督であり、2007年には当裁判官ネットワークにおいでいただき、この映画を巡る意見交換を行った。
http://www.j-j-n.com/opinion/s_reikai2007/index.html
その後監督は、取調べ可視化問題などについて議論する法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」のメンバーとなられ、最近の会議でも、井上正仁教授や椎橋教授の意見に疑義を唱えられるなど、実質的に審議に参加しておられる(例えば、7月開催の議事録http://www.moj.go.jp/content/000102078.pdfの4頁、19頁参照)。
その周防監督をお招きして、きたる12月21日金曜日午後6時30分から、日弁連会館で「周防監督に問う法律家の育て方~給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める市民集会~」が開かれる。司法改革による法曹人口増のために、司法修習生の給費制は貸与制に切り替えられてしまったわけだが、修習生たちは、修習専念義務を課されてアルバイト等を禁じられて、貸与金で生活費を賄いながら日々の実務修習をこなし、多くがロースクール授業料での多額な負債を抱えながら、厳しい就職活動を強いられている現状にある。仮に給費制が復活したとしても、それだけで彼らの直面する問題は解決するわけでは無いが、周防監督からどのような示唆が得られるか、一聴の価値はあるだろう。
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/121221_2.html
http://beginners-net.jugem.jp/?eid=460
(くまちん)
現在発売中の「世界」2013年1月号(岩波書店)には、震災対応等で司法関係者が注目すべき記事が多い。
特集1「旗印無き解散・総選挙」では、検察・小沢事件に関する魚住昭氏のインタビューが注目される。
特集2「東北復興-置き去りにされた生活再建」では
【住宅の確保】住宅復興とまちづくり──何が問われているか
塩崎賢明 (立命館大学)
【震災と司法】「司法過疎」被災地と法的支援の課題
佐藤岩夫 (東京大学)
などが注目される。特に後者の佐藤岩夫教授は、先日行われた日弁連司法シンポジウムの分科会に参加され、被災地における法的ニーズ・アクセスの問題について発言しておられた。そうした面からの示唆に富む情報が得られるであろう。
また、特集の枠からは外れているが、
●...「被曝を避ける権利」の確立を
福田健治 (弁護士)、河健一郎 (弁護士)
も注目される。福田弁護士は、新62期という登録3年の若手ながら、原発事故対応について獅子奮迅の働きをしておられる。日弁連の会議にお子さんを連れてこられ、男子トイレにおむつ取り替え用の台が無いことを嘆かれるイクメンでもある。何よりも、彼は旭川修習で、旭川弁護士会の修習委員長としては、このような立派な「直弟子」の出現に大いに鼻が高い。
実は、日本裁判官ネットワークでは、来年2月9日に東京で「地域司法とIT裁判所」(仮)というシンポを行い、その中において福島県で震災対応に当たっている弁護士さんに講演していただくことを予定している。その構想を練るためにも上記各記事をしっかりチェックしておきたいと考えている。
その他、
●「東電女性社員殺害事件」が問いかけるもの 石田省三郎(弁護士)
も注目される。
なお、12月号の同誌には、先日のETV特集「永山則夫100時間の告白」を作られた堀川恵子ディレクターが同番組の内容を更に深めた記事「封印された鑑定記録が問いかけたこと」を掲載されているので、そちらも併せて参照いただければ幸いである。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/
PS さては、「直弟子」が使いたかっただけだな、というツッコミはなしで (くまちん)
奇しくも、厚労省・社会保険庁の職員2人が、同様の勤務外の「赤旗」配布で、有罪・無罪が分かれたものの、画期的な新判例を作った。