日本裁判官ネットワークブログ
日本裁判官ネットワークのブログです。
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 今年も残り1ヶ月余りになり,我が簡易裁判所で今年1年間に受理する見込みの過払金訴訟(サラ金に対する不当利得返還請求事件)の件数が予測できる時期になった。今年は民事訴訟1係(週に1日の開廷)当たりの過払金訴訟の新受は108件になる見込みだ(新受事件全体に占める割合は28%)。平成22年は1係当たり421件(同60%),平成23年は1係当たり286件(同52%)だったから,急激な減少である。
 いよいよ一世を風靡した過払金訴訟が終焉を迎えるのだ。過払金訴訟で潤っていた司法書士や地方の法テラスの事務所の経営は大変だろう。ビッグ司法書士事務所の最近の電車内の広告には,補償金未請求のC型肝炎患者を掘り起こそうとしているものが出てきた。
 小生は法廷の事前準備として,A4縦書き1枚に事件を8件並べてメモをしているのだが,一覧性を高めるために,過払金訴訟には黄色マーカーを,交通事故訴訟には青色マーカーを,信用保証協会・日本政策金融公庫などの公的機関の求賞金請求事件には緑色マーカーを,民間金融業者が原告の事件にはピンクのマーカーをといった具合に色分けをしている。昨年までは法廷1回あたりのA4メモが4~5枚になり,黄色が半分を超えていたが,今年はA4メモが2~3枚になり,黄色よりも青色(物損交通事故)が多くなって様変わりである。
 過払金訴訟は数が多くても,そのほとんどが取下か和解に代わる決定で終わっていたから,裁判官の負担感はそれほどでもなかったが,交通事故訴訟は過失割合と損害額の争いがつきもので,双方の運転者の尋問を要する場合が圧倒的に多いから,裁判官の負担が増してきているのだ。 瑞月



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 みなさん,新年おめでとうございます。2012年がスタートしました。政治,経済ともに,国の内外にわたって,とても不安な門出ですが,いかなる時代においても,新しい年の始まりは,このうえなく喜ばしいことです。
 年賀に,京都・鴨川法律事務所の「かもがわ」第50号が届きました。毎号,読み応えのある論稿にあふれた弁護士事務所報です。今回の巻頭は,坂元和夫弁護士(13期)の「文明の敵・民主主義」というショッキングな本(著者は元東大教授・評論家西部邁)の読書感想でした。

 「どの民主主義国でも指導者は歓呼の声で迎えられた後,罵声を浴びせられて退場する。衆愚政治である。大衆は自らの愚かさを棚に上げて政治不信に陥り,強力な指導者の出現を待ち望むようになる。全体主義への転落はこうして始まる・・・・デモクラシーは最悪のものより少しだけましな政治制度に過ぎない(チャーチル)。そのようなものだと見定めて,独裁や全体主義に陥らないように,選挙民がパブリックマインドを持ち,口先だけの公約ではなく道理に従って行動する政治家を選ぶしかない。」というのがショッキングな本の著者の論旨のようです(私も早速読もうと思います。)。

 これを受けて,坂元和夫弁護士は,原発問題を国民投票(only Yes or No)で決めることに反対する民主党前原誠司政務調査会長の意見に共感を寄せています。 独裁や全体主義の防波堤は「選挙民のパブリックマインド」という不確かなものでしかないとすると,その前に「法曹のパブリックマインド」を試そうとしているのが,法曹増員による平成司法制度改革ではないでしょうか。今年は,平成司法制度改革を振り返り,後退しないで前に進む議論をしましょう。 瑞月

 



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12月24日の当ブログに紹介されている「日本国憲法と裁判官」(日本評論社)守屋克彦編について,林醇さん(京都大学大学院法学研究科教授・元高松高裁長官)が書評を書いて下さっています。

瑞月

http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20110207.html



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 11月20日の毎日,読売などの新聞に「無期受刑者戦後最多」などと題し,昨年(平成21年)末時点で法務省が調査した結果として,無期懲役で服役している受刑者が1772人にのぼり,戦後最多になったことが報道されていました。その原因は,厳罰化傾向によって無期懲役の判決数が大幅に増えたこと及び無期受刑者で仮釈放される者が大幅に減ったからです。1772人の無期徒刑者とは,既決囚総数約6万7千人(平成20年当時)の2.6%にも当たります。
 犯罪白書を調べましたら,平成元年から平成10年までの10年間に,無期懲役の判決を受けた者は352人(ちなみに死刑判決を受けた者は42人)であったが,平成11年から平成20年までの10年間には,無期懲役の判決を受けた者が906人(ちなみに死刑判決を受けた者は122人)でしたから,この10年で無期懲役判決は2.57倍(死刑判決は2.9倍)に増えたことになり,重罰化傾向が顕著です。
 また,上記新聞報道によると,平成12年から平成21年までに無期懲役で新たに服役した者が合計930人であったのに対し,仮釈放された者は65人だけであったこと(ちなみに,獄死した者は126人),平成21年に仮釈放された6人の平均服役期間は30年2ヶ月であって,平成12年に仮釈放された者の平均服役期間が20年2ヶ月であったこと比較すると,仮釈放が非常に厳しくなっていることが報じられています。
 死刑と無期懲役との落差が大きすぎるとの批判があって,仮釈放のない終身刑の新設が検討されているようですが,この10年間をみると,無期懲役は実質上,終身刑に近くなっているといえますので,仮釈放のない終身刑は必要がないと思います。 

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前の投稿にあぶれましたので,続きです。

 註釈全書(新版)(上)589頁�B参照】。

 この有力説によると,洞爺が起訴された日から再審無罪判決の確定まで,時効は停止していることになるのではないでしょうか? 洞爺に対する起訴が平成20年2月だということですから,同年8月8日の時効完成まで5ヶ月間以上の時効期間が残っておれば,洞爺に対する再審無罪判決の確定日を平成22年1月1日とした場合,検察官は同年5月までに牛山を起訴できたということになります。 この有力学説によると,姉小路さんの小説が成り立ちませんから,「被告人が犯人ではない場合(人違い)は,公訴時効は停止しない」とする学説【前記小野清一郎他・ポケット註釈全書(新版)(上)589頁�B参照】に立つ必要があります。 公訴時効に詳しい方,ご教示をお願いします。    瑞月



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 当ネットの例会にも来てくださったことがある著者から,表題の新刊を贈呈されて読みました。公訴時効制度の問題点を,実感をもって突きつける力作です。

 粗筋を大骨だけにして紹介すると,以下のとおりです。
 伊東美保子は平成5年8月9日に殺害されたが,捜査は迷宮入りし,15年の公訴時効の満了日である平成20年8月8日(北京五輪開催日)が迫ってきた。被害者美保子の異父弟である迫田健作は検事になり,同五輪開催まで342日という時期(平成19年9月1日ころ)に姉殺害犯人の捜査を再開した。そして,姉美保子が常勤講師として勤務していた私立高校の教頭洞爺忠彦に姉殺害を自白させ,平成20年2月に洞爺を起訴した(公訴時効完成までに5ヶ月を余していたと読める)。
 洞爺は一審の途中から否認に転じたが,一,二審で有罪判決(懲役12年)を受け,上告を取り下げて服役した。その後,姉美保子の教え子だった牛山猛が真犯人であると名乗り出,牛山の犯行を裏付ける証拠が卒業記念タイムカプセルの中から出てきたので,再審が開始され,洞爺の再審無罪が確定した。
 迫田検事は,牛山が公訴時効完成により起訴を免れたため,検察官を退職したうえ,牛山に対し損害賠償請求の民事訴訟を提起することとした。牛山は,実は,洞爺の身代わりに犯人と名乗り出たものであったため,牛山と洞爺は迫田元検事の損害証請求に恐れをなし,洞爺は牛山を共犯に引き込んで迫田元検事を殺害した。
 迫田元検事は,自らの身を挺して,公訴時効完成により処罰を免れた犯人を刑事処罰に追い込むため,洞爺と牛山による殺害計画を察知しながら,同両名の手に掛かって殺されたものであり,同両名の犯行であることを示す物的証拠を残して死んだので,同両名は迫田元検事殺害の罪で処罰を受けるに至った。

 実際の刑事手続からすると,少し現実離れした点もありますが,小説ですので,目をつむりましょう。
 ただ,法律論として気になる点がありました。182頁に「平成20年8月に時効完成」とあり,その理由は「洞爺が犯人でない→洞爺に対する起訴は無効→時効は停止しない」としている点です。
 特定の犯罪について起訴があれば,被告人が犯人ではない場合(人違い)であっても,公訴時効は停止する,という有力学説があります【小野清一郎他・ポケット註釈全書(新版)(上)589頁

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 簡易裁判所の刑事事件の国選弁護人として,新人弁護士さんがたくさん来られますが,簡易裁判所の刑事事件の事物管轄及び宣告刑制限を正解しておられない方が少なくないのです。公判請求事件の論告で検察官が罰金求刑をするのを聞いて,準備してきた弁論要旨(懲役刑の執行猶予を求めるもの)をあわてて訂正,変更しておられます。裁判所法33条を復習してみましょう。

1 裁判所法33条1項2号は,簡易裁判所の刑事事件の事物管轄を次のとおり定めています。
 ① 罰金以下の刑(罰金,拘留,科料)に当たる罪の訴訟
 ② 選択刑として罰金が定められている罪の訴訟
 ③ 刑法186条(常習賭博,賭博場開帳図利),252条(単純横領)及び256条(盗品譲受け等・かっては賍物罪といわれたもの)の罪の訴訟(これらの罪は選択刑として罰金がなく懲役以上の刑である。)

2 裁判所法33条2項は,簡易裁判所が刑を科することのできる限度を次のとおり定めています。
 ① 簡易裁判所は,禁錮以上の刑を科することができない。すなわち,罰金以下の刑しか宣告できないのが原則です。
 ② 例外として,次の各罪の刑をもって処断すべき事件(科刑上一罪の場合に次の各罪の刑をもって処断すべき事件を含む)では,3年以下の懲役を科することができる(地方裁判所の負担を軽くするための例外規定です)。
ア 刑法130条(住居侵入等)の罪もしくはその未遂罪
イ 同法186条(常習賭博,賭博場開帳図利)の罪
ウ 同法235条(窃盗)の罪もしくはその未遂罪
エ 同法252条(単純横領)の罪
オ 同法254条(遺失物横領)の罪
カ 同法256条(盗品譲受け等)の罪
キ 古物営業法31条から33条までの各罪
ク 質屋営業法30条から32条までの各罪

3 裁判所法33条3項は,簡易裁判所が3年を超える刑を科するのを相当と認めるときは,事件を地方裁判所へ移送しなければならない,と定めています。

 したがって,傷害,暴行,公務執行妨害など,上記2②アないしクに当たらない罪で公判請求がなされたとき,検察官の求刑は罰金しかないのです。簡裁での審理の結果,検察官が求刑を懲役に変更するときは,その前に地裁への移送を求めなければなりません。

 検察官が罰金を求刑する予定なのに公判請求をしてくるのは,略式命令の請求に対し被疑者の同意が得られなかったときや,被疑者に罰金を支払う資力がなく,未決勾留日数の本刑算入(刑法21条,18条)によって罰金を支払い終えたことにするためなのです。

4 検察官が罰金を求刑することが明らかな事件について,弁護人に期待される主要な活動は,罰金額の軽減を求めることではなく,被告人が再犯を犯さないように啓発し,指導して貰うことにあると思います。被告人は,今回が罰金で済むと,次も罰金だろうと軽く考えやすいのです。(瑞月)


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 簡易裁判所では,民事訴訟法の改正により,平成10年から,訴額30万円以下の金銭の支払を求める事件について,原則として「1回の審理で即日判決」をする「少額訴訟」を実施し,利用者から好評を得てきました。そして平成16年には,簡裁の訴額の上限が90万円から140万円に引き上げられたことに伴い,少額訴訟の訴額の上限も60万円に引き上げられたので,少額訴訟は増加傾向にあります。
しかし,近年は,少額訴訟としては不適切な事件が提訴されることが多くなり,原告の期待に添わない例が目立つようになってきました。別な言い方をすると,少額訴訟であれば「1回で勝てるんだ」と誤解して,難しい事件を少額訴訟に持ち込む人が少なくないのです。

 少額訴訟は「1回審理で即日判決」が標語ですが,これはあくまでも「原則」であって,例外があります。原告が勝訴判決を得たからといって,必ず被告から支払を受けられる訳ではなく,強制執行という面倒な手続をしなければならないことも少なくないので,裁判所は,被告が出頭してきた事件では必ず和解による解決を試み,和解による抜本的解決を目指しています。そして,和解が成立する可能性がある場合は,2回目の期日を指定することがあるのです。
 訴額が60万円以下の金銭請求であれば,少額訴訟にするか,従来通りの通常訴訟にするかは原告の選択にまかされますが,少額訴訟の判決に対しては控訴ができない仕組みなので(同じ簡裁の別の裁判官に再審査を求める「異議の申立て」ができるだけ),被告の権利を害さないため,被告には少額訴訟を拒否する権利が与えられています。被告が,訴状に対して答弁(反論)するまでに,「通常訴訟を求める」と言えば,無条件で通常訴訟に移ります。こうなれば「1回審理で即日判決」にはなりません。
 少額訴訟の判決に控訴ができないということは,原告にとってもリスクなのです。原告は少額訴訟を自ら選んだのですから,被告の反論と反証によって雲行が怪しくなってきても,原告には通常訴訟へ戻す権利がありません。裁判官が職権で通常訴訟へ移す方法がありますが,裁判官は原・被告どちらの味方でもありませんから,原告が不利になってきたからといって職権で通常移行させることはありません。即日原告を負かせる判決をするだけなのです。事件の内容からみて,慎重に審理し,控訴の道を残す必要があると考えた場合に,職権で通常移行させることがあるだけなのです。
 ですから,勝ち目の薄い事件を少額訴訟に持ち込んではいけないのです。勝ち目が濃いか薄いかを考えるためには,提訴前に被告と直談判して,被告の反論とその手持証拠を探っておく必要があるでしょう。少額訴訟の訴状を裁判所に出すとき,受付係から,被告とのこれまでの交渉経過や被告の言い分を尋ねられます。これに的確に答えられないまま,いい加減な返答をして少額訴訟を起こすと,あとで泣きを見ることになります。

 人間だれしも,自分の言い分の方が正しく,相手方の言い分が間違いだと信じたいものです。しかし,原・被告双方の言い分を第三者の立場で聞いている裁判官から見ると,裏付け証拠もないのに「自分が見たから,自分が聞いたから正しいのだ」と主観的に力説する人の主張ほど当てにならいものはありません。自分の言い分を第三者の立場に立って検討してみることが大事ですね。刑事裁判の裁判員をやってみると,第三者の立場に立って考えるということの大切さがよく分かるのではないかと思います。 



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20年振りの刑事裁判担当
 今年の4月から,サラ金に対する過払事件に追われた民事担当を離れて,20年振りに刑事事件を担当することになった。簡易裁判所なので略式起訴による罰金刑が多いのだが,窃盗,暴行,傷害等による公判請求(通常の起訴)も多い。窃盗罪の法定刑は懲役10年以下だったが,平成18年の刑法改正で,50万円以下の罰金刑が選択できるようになったので,被告人の身柄を拘束して公判請求された窃盗事件であっても,検察官が罰金を求刑することが少なくない。罰金刑と懲役刑との分かれ目の量刑相場が,まだよくつかめないのだが,この点はもう少し経験を積んでから書きたいと思う。
 刑事裁判官の仕事は,無罪の者を処罰しないことと,過大な刑罰をチエックすることだと考えているので,検察官が罰金刑を求刑した場合,被害者の立場に配慮して懲役刑を選択するようなことはしない。
 民事で交通事故の損害賠償請求事件をたくさん経験してきたが,その証拠として,当該交通事故の略式命令(自動車運転過失致死傷罪の刑事裁判)の記録の一部が提出されることが多かった。略式命令の「罪となるべき事実」は,起訴した検察官と略式命令を発した裁判官が当該交通事故について認定した事実を示しているものだと考えていたので,民事裁判の証拠としてもそれなりに尊重していた。無条件に略式命令の罪となるべき事実を受け入れていたものではないが,これを左右するに足りる証拠が民事裁判で提出されない限りは,略式命令の罪となるべき事実に添った認定をしていたと思う。
 しかし,自分が略式命令を担当するようになって,考えが変わった。略式命令の罪となるべき事実は,起訴検察官の事実認定であって,略式命令を発した裁判官の認定ではない,ということだ。起訴検察官の認定に疑問を抱いても,被告人に不利益な認定でなければ(すなわち,被害者にとって不利益な認定であっても),検察官の起訴事実を容認して略式命令を発しており,略式不相当(刑事訴訟法463条1項)として,正式裁判をすることはしていない。
 例えば,信号機のない見通しの悪い交差点を南から東へ右折した四輪車が,東から西へ対面進行してきた二輪車と衝突した交通事故において,検察官が四輪車運転手の過失を「徐行義務違反」と捕らえて起訴したが,自分は「四輪車がキープレフトしなかった」点が直近過失だと判断した場合,後者の過失の方が重く,罰金も多額になるから。検察官が起訴した過失のままで略式命令を発するという具合である。であるから,民事裁判では,被告人に有利な略式命令の事実認定には,引きずられないようにしもらいたいものである。
被害者参加がある地裁の刑事裁判からすると,ズレているという批判があるのだろうか?
瑞月

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日本裁判官ネットワークは,11年目の新年を迎えました。
今年は,民主党政権がその真骨頂を問われる年ですが,司法界も同じです。裁判員裁判では,全面否認事件や死刑求刑事件などの難事件が続々と係属し,長期間の審理と厳しい論点の評議という難関が待ちかまえています。民事裁判では,押し寄せる膨大な数の事件に対する対応が著しく遅れています。法曹養成では,3000人合格目標の修正の方向が問われます。裁判官の飛躍的増員を計ろうとしない最高裁の姿勢に対し,我々がどのように立ち向かうかも決断しなければなりません。
 困難な時代ですが,新年を迎えて気持ちを新たにし,この一年を頑張りたいと思います。当ネットワークのメンバー及びサポーターの皆さん,力を結集してください。ファンクラブの方々,このホームページを見てくださる大勢のみなさん,いっそうのご支援をお願いします。  瑞月

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 裁判所時報(最高裁事務総局発行の裁判所職員向け情報誌)第1488号(21年8月15日号)に,司法統計から見た平成20年の民事・刑事事件概況が報じられています(家事・少年事件については1486号)。
 平成20年には,刑事事件,少年事件,破産事件の新受件数は,平成16年からの減少傾向が続いており,強制執行事件は若干の増加に転じただけであるのに,民事の訴訟事件は,平成16年以来,激増を続けており,折れ線グラフの角度は60度を超える上り勾配です(家事事件の新受件数は,平成2年以後,約45度の上り勾配で増加中)。数字で示すと,地裁の民事訴訟の新受は,平成16年に14万件であったのが,平成20年に20万件(43%増)となり,簡裁の民事訴訟の新受は,平成16年に35万件であったのが,平成20年に55万件(57%増)となっています。
 長引く不況による企業活動の混迷,国民生活の困窮を見事に反映しているといえますが,平成21年に入ってもその傾向は止むことを知らず,私の所属する簡易裁判所の訴訟事件の新受は,今年の6月末時点で4000件に達し,去年の同時点では3000件だったので,33%の増加です。貸金・立替金業者の庶民に対する請求事件及び庶民のサラ金業者に対する過払金返還請求事件が増えているからです。
 ちなみに,最近,私が受けた1ヶ月の新受事件は約180件で,その内80件が貸金・立替金業者が起こした事件,80件が庶民の過払金返還請求事件,残りの20件が通常の市民型事件です。
 貸金・立替金業者の事件では,被告(庶民)の家計の窮状のため,分割払の和解ができない事件が多くなっています。過払金返還請求事件も,サラ金業者の財務状態が苦しいようで,和解が出来にくくなっており,毎週,過払金事件だけでも判決を5~6件書いている状態です。この状態が何時まで続くのか暗たんたる思いです。(瑞月)


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 私は,勤務する裁判所から約20㎞離れた自宅に住んでおり,月に一度,夜間の令状当番を自宅待機で勤める。夜9時までは裁判所に居残った裁判官が令状当番をするので(看護師でいうと準夜勤),夜間当番(深夜勤)は夜9時から翌朝8時まで当番をする。管内の警察署から令状請求(逮捕状,捜索差押許可状,鑑定処分許可状などの請求)を受けると,裁判所で当直している書記官が受付をし,記録を点検し,発布する場合の令状の準備をし,今から行くと私に電話をしてから,事務官がタクシーに約40分乗って私の家までやってくる。
 寝入る前に連絡があればよいが,寝入りはなに起こされると辛い。私は早寝早起きなので夜10時から午前2時までに起こされるのが辛いが,午前3時以後なら平気である。もっとも,そんな時間だと当直している書記官・事務官は大変だ。
 もちろん,犯人を追いかけて捕まえてくる警察官の苦労はもっと大変だが,彼らは夜勤明けはおそらく非番(休暇)だろう。
 しかし,裁判官・書記官・事務官は夜勤明けが休暇になるわけではない。深夜令状当番をした翌日に法廷立会とならないように当番を組んでいるけれども,法廷の立会だけが裁判所職員の仕事ではない。むしろ,法廷前の準備と法廷後の整理が大変であって,法廷と法廷との間の非開廷日は,大変重要な仕事の日なのだ。ここでしっかり準備し,整理していないと,法廷で良い仕事ができない。裁判官の場合は週に3日法廷を開く場合が多く,残りの2日を準備と整理にあてているから,深夜令状当番は法廷を開いた日の夜になり,翌日は法廷の準備と整理をすべき日なのに一日中眠いときを過ごすのだ。
 遠方に住んでいる裁判官は深夜令状当番を免除され,その代わりに準夜勤や日曜休日当番をしているのだが,裁判官の公平を期するためと,書記官・事務官の負担軽減を計るとして,私の勤める裁判所でも,今年中に,裁判官が庁舎に泊まり込んで深夜令状当番をする制度に移行する。これまで,警察は,裁判所の負担を気にして,夜間の令状請求を必要最低限度に押さえていた傾向があったが,裁判官が泊まり込むようになると,遠慮なく夜間に請求してきそうである。彼らは17時以後に仕事をすれば夜勤手当がつくだろうが,裁判官は夜勤も給料の内であって手当はない。夜間の令状請求に対しては,とりわけ厳しくチェックしないと,夜勤の日は眠れないことになり,翌日の仕事ができなくなりそうだ。(瑞月)

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昨日の新聞に,新61期司法修習生1731人(内女性491人)が修習を終了し,その中から判事補に75人(同29人)が任官したと報じられている。9月に修習を終了した旧61期(609人,内女性128人)から24人(同7人)が任官したので,今年の判事補任官は合計99人(同36人)となる。
 99人の判事補諸君,任官おめでとう。裁判官としてのご活躍を祈念します。裁判官としての自己研鑽のために,日本裁判官ネットワークのホームページとブログの愛読者になって下さい。また,来年1月31日に名古屋で開催されます当ネットワークの例会を覗いてみて下さい(ホームページのニュース参照)。
 今年,判事補任官を希望して不採用となったのは3人だという。ちなみに,今年の司法修習終了試験(二回試験)不合格者は123人(去年の不合格者33人中の不合格12人を含む)だった。
 修習生が500人前後の最後の年だった平成2年(45期)には,判事補として100人が採用されていたから,修習生が4.5倍以上に増加したというのに,判事補任官は全く増えていないことになる。弁護士任官も増加が見込めない現状では,裁判所の機能強化が望めない。最高裁は未だに少数精鋭主義を維持しているのだろうか。こんなことでは司法の将来が危ぶまれる。
 (瑞月)


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 京都家庭裁判所が捜索を受け,同裁判所書記官が私文書偽造等で逮捕されたというニュースが新聞紙面を賑わせている。書記官が記憶喪失者の就籍を許可する家事審判と貸金請求の民事判決とを偽造して,こともあろうに振込め詐欺被害救済法によって凍結された預金を差し押さえ,数百万円の払戻しを受けたと報道されている。現在捜査中なので,どのような方法でどのような審判・判決を偽造したのかは明らかでないが,これが事実とすれば,裁判所に勤務する者としては,情けないやら,腹が立つやら,痛恨の極みだ。
 裁判所部外者が判決を偽造した例はいくつも聞いているが,裁判所に勤務する者が審判・判決を偽造するということを,私は予想できなかった。裁判制度とは,武器対等,機会均等,抜打ち・闇討ち禁止,公明正大をルールとして喧嘩をするものであるから,裁判手続には必ず利害が対立する相手方が関与しており,一方に有利な審判・判決を偽造すれば,必ず他方からクレームが出て,すぐに偽造であることと犯人がバレてしまう仕組みである。相手が行方不明のため,裁判所の掲示板に貼紙をしただけで,呼出しや通知をした扱いにする公示送達という手続があり,相手方が実質的に関与しないこの公示送達手続による判決を偽造し,同判決によって強制執行をして相手方の財産を手に入れようとしても,判決に表示された原告に対して強制執行をする裁判所から何度も通知や連絡をするから,架空名義の原告では用を足さないわけで,役にも立たない判決の偽造に裁判所職員が駆られることはないと思っていた。
 就籍許可の家事審判を偽造してこの世にいないXを創作し,Xを原告として,振込め詐欺師が用いた預金の名義人を被告とする民事判決を偽造し,Xになりすまして強制執行手続を進めたのが今回の事件のようである。振込め詐欺師たちが名乗り出るはずのない預金の銀行支店名,口座番号,口座名義人及び預金額がインターネット上に公開されていたことを,今回の事件で知ったが,この情報開示が裁判所部内者による審判・判決偽造の誘引だったと思われる。インターネットによる情報開示の広さと速さに追いつけないことが悔しいし,怖ろしい。捜査によってこの犯罪の全貌を明らかにして貰いたい。 瑞月

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 先週末に郷里の村へ帰り,亡父の三三回忌の法要をしてきました。父は60歳9か月で早死にしましたが,私は父の享年を越えることができ,おかげで三三回忌を営むことができました。
 我が家の菩提寺は檀家数が20数軒の小さな田舎寺で,臨済宗妙心寺派の末寺です。昭和の初め以来,伊勢出身の尼僧が住職を勤められましたが,平成8年3月に亡くなられてからは,住職不在の留守寺となりました。20数軒の檀家では,尼僧お独りの質素な生活を支えるのが精一杯で,新たな住職を迎えることができないのです。私の子供の頃,このお寺は村の保育所のような場所で,私達はいつも境内で遊び,和尚さんからお釈迦さまや地獄のお話を聞き,和尚さんの使い走りをし,お駄賃にあめ玉を一個貰うのが楽しみでした。ある夏の夕刻,祖母が作った煮物を盛った鉢を両手に掲げ,日暮しの鳴き声を聞きながらお寺へ走りますと,夕闇の庫裏の土間で,和尚さんが背を向けて行水をしておられました。ビックリして煮物の鉢を上がり框に置くや,何も言わずに逃げ帰りましたが,薄明かりの中で斜め後ろから見たふくよかな胸の和尚さんの姿が,阿弥陀如来のように思えたものでした。このお寺は私の心のふるさとであり,その名を南谷山「瑞月寺」といいます(私のペンネームはこれを無断借用したものです)。
 留守寺となった小さな寺には,小浜市街地にある妙心寺派の大きなお寺の和尚さんが住職を兼務し,檀家の法事を勤めてくれます。裁判官不在の裁判所支部を裁判官常駐支部の裁判官が填補しているのと同じです。住職常駐のそのお寺は「常高寺」といって,浅井長政とお市の方の間の3人娘の真ん中「お初=常高院」ゆかりのお寺です(ちなみに上が秀吉の側室茶々,下が徳川2代目秀忠の正室お江です)。国道27号線を舞鶴向けに後瀬山(のちせやま)トンネルを抜けると右手にあります。後瀬山の頂きには,お初の夫京極高次の最初の居城跡があります。常高寺の和尚さんのお話では,来年が京極高次歿後400年だそうです。(瑞月)

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