日本裁判官ネットワークブログ
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 遅くなりましたが,今年の司法10大ニュースを選びました。4回目です。過去のもの(各年の12月下旬に掲載)と比べてみるのも一興です。

第1位 裁判員裁判始まる(5月。第1号事件は8月)
~平成司法改革中,最大の改革内容が始まりました。懸念や反対もありましたが,まずは順調な滑り出しでしょうか。今のところ,対象事件は自白事件が多いようですが,判決では量刑の格差が従来より大きくなったことが印象的です。性犯罪事件では重い量刑となった判決が目立つ一方,親族間の介護や暴力に絡む事件では,量刑が求刑を大きく下回るケースも多かったようです。執行猶予判決では,保護観察付きのものが増加するなどの傾向もあります。それから,裁判員を務めた828人のうち,約77%の636人が判決後の記者会見に出席し,感想などを語るなど(読売),事前の予想を超える裁判員の積極的な動きを頼もしく思いました。(第1号事件については,当ブログ8/3,11,12各欄参照) 

第2位 足利事件で再審開始決定(6月)
~再審公判では,録音テープの再生や取調検事の証人尋問などが実施予定となっており(来年1月21,22日の第4,第5回公判期日),異例の審理になっています。また,再審開始決定前に刑の執行停止もありましたし,再審被告人には,県警本部長や検事正が謝罪するなど,こちらも異例の対応でした。(こうした事件についての裁判官・裁判所の対応について,当ネットHPオピニオン・10周年記念企画,鳥越俊太郎さんの講演「冤罪と裁判官」要旨及び同講演について(1),(2)参照)
 なお,今年は,布川事件でも,再審開始決定が確定しました(12月)。

第3位 3000人合格計画達成困難に(9月以降)
~今年の新司法試験の合格は,2043人(目安が2500人~2900人)でした。合格率は27パーセントです。旧司法試験は合格者92人(目安100人)。併せて2135人で,昨年度の2209人(新司法試験2065人,旧司法試験144人)よりも減っています。来年度の3000人合格は困難になっているとするのが一般的です。(当ネットHPオピニオン「Judgeの目その24 新司法試験合格者減の中で考える~驚きと希望と」参照)

第4位 過払事件の急増,いわゆる過払バブル状況(年間を通して)。
~過払による不当利得返還請求事件が急増しました。その結果,地裁,簡裁の事件が増えました。昨年に比べて3~4割増です。関連しては,過払事件について,弁護士・司法書士と依頼者または税務当局とのトラブルも何度か報道されています 。裁判員裁判の実施で,刑事裁判にシフトしてきた裁判所ですが,これからは民事裁判にシフトすることになるのかどうか注目です。(当ブログ8/29欄「一審民事訴訟事件の新受激増」参照)。

第5位 参議院議員選挙上告審(大法廷)判決(9月)
~最大4・86倍だった参院選挙区選の定数配分を合憲としましたが,「投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にある」「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる」と指摘しました。10人が多数意見,5人が反対意見(違憲,ただし,全て事情判決の法理適用を肯定)。年末には,大阪高裁で,今年8月に行われた衆議院選挙について,一票の格差が2倍以上あったのは憲法に違反するが,選挙無効請求は棄却する旨の判決がありました。

第6位 被疑者国選弁護人制度の適用範囲が拡大(5月)
~必要的弁護事件(長期3年を超える懲役・禁固の事件)にまで拡大され,大半の刑事事件が対象となりました。被疑者の利用は10数倍になったと言われ,弁護士の少ない地域の弁護士からは悲鳴を聞くこともあります。

第7位 芸能人の薬物事件で,捜査及び裁判報道が過熱(特に8月以降)
~芸能人のほかに,学生や弁護士の薬物事件もあり,日本中で薬物汚染が進んでいることを感じさせられました。

第8位 裁判官ネットによる裁判員裁判実施記念企画(6月)と10周年記念企画(11月)
~前者では,韓国の国民参与裁判制度について,李東熹韓国国立警察大学教授をお招きしての講演会とデスカッション,及びメンバー裁判官で退官した伊東武是元神戸家庭裁判所判事による「裁判員裁判に期待する」の講演会を開催しました。後者では,江田五月参議院議長(元裁判官)などからお祝いのメッセージをいただいたほか,鳥越俊太郎さんの講演や,ネットの10年を振り返り,かつ今後のために刑事,民事,司法行政にわたる第2次司法改革の提案をする企画など盛りだくさんでした。いずれの企画も大成功でした。ネット関連の行事は,いつもは,控えめに第10位としていますが,手前みそながら,今年はよくがんばったので,第8位にさせていただきました。あしからず。

第9位 労働審判制度の利用拡大(年間を通して)
~不景気を反映してか,3年前の3倍の利用率と言われます。簡易迅速かつ適正な解決を図れる制度との評価が高く,労使双方に好評です。民事裁判の分野で,最も成功した改革との評価もあります。来年もさらに利用が増えるでしょうか。

第10位 和歌山毒カレー事件上告審判決(4月)
~とにかく,話題と議論の多い事件でした。4月上告棄却。判決訂正の申立ても,5月18日付けで棄却決定がありました。

 番外にしましたが,触れておきたいものがあります。今後の動向に目が離せないものとして,① 債権法改正の動きの本格化と,② 検察審査会法改正(5月)です。①は,4月,民法学者や法務省の担当職員らが参加した民間の「民法(債権法)改正検討委員会」が改正試案を発表し,10月,法相が法制審議会へ諮問。11月には法制審議会民法部会が開催され,1年半程度の調査審議を経て中間的な論点整理を行うことが提案されています。②では,検察審査会の権限強化が行われ,1回目に続き,2回目も起訴相当の判断の場合は,起訴議決がなされ,裁判所が指定した指定弁護士が原則として公訴を提起することになりました。いずれも,来年以降に,今後の動向が10大ニュースに入ってくるものと思われます。その意味で,今年は番外にさせていただきました。
 残念なものとしては,昨年に続き,今年も裁判官の不祥事があったことです(2月,福岡高裁宮崎支部判事の準強制わいせつ事件。6月,懲役2年執行猶予5年の有罪判決。当該判事は,4月に任期終了退官。)。
 なお,これも番外ですが,今年の出版・ドラマ関係では,骨太の作品が多かったように思います。例えば,長沼事件,平賀書簡事件に係わった福島重雄さんの証言本「長沼事件 平賀書簡 35年目の証言」が出版され(当ブログ5/6欄参照),戦時中の翼賛選挙を無効にし,東條英機首相と争った吉田久裁判長の「気骨の判決」がドラマ化 (同6/29欄)されたことなどです。ETV特集のドキュメンタリー「死刑囚・永山則夫ー獄中28年間の対話」(同10/21欄,12/16欄)もありました。その他には,話題漫画のドラマ化「サマヨイザクラ」(同6/9欄)など裁判員裁判を対象にしたものが数知れずありました。

 10大ニュースと番外を眺めていると,今年の最大の特徴は,平成司法改革の内容が,全て実施されることになったこと(第1位,第6位,番外②)でしょう。これで,枠組みづくりとその実施は一段落ですが,昨年に続き,平成司法改革の揺り戻しの動きもありました(第3位)。来年以後,どうなるのか興味あるところです。 
 今年は,判決や決定では,3つ挙げました(第2位,第5位,第10位)。昨年は,婚外子の国籍法規定は違憲との最高裁大法廷判決,青写真判決見直しの最高裁大法廷判決,相次ぐ原爆症認定集団訴訟の判決,福島県立大野病院事件について,医師に無罪の福島地裁判決の4つでしたので,1つ減ったのですが,足利事件の再審開始決定は,法曹界だけでなく,社会的に影響力がとても大きいものでした。再審の判決は,来年3月26日が予定されているようです。
 その他,民事刑事や労働審判の事件の中で,顕著な動き(第4位,第9位)や印象的な事件(第7位)があったのも今年の特徴かもしれませんね。



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毎年年末恒例の司法10大ニュースの候補です。おそらく第1は,裁判員裁判が始まったことでしょうが,他は順位に争いがあるでしょうね。感想やご意見をお願いします。

○ 裁判員裁判始まる(5月。第1号は8月)
~懸念や反対もありましたが,まずは順調な滑り出しでしょうか。今のところ,自白事件が多いようですが,量刑の格差が大きくなったことが目立ちますね。求刑どおりの判決や,保護観察付き執行猶予判決の増加なども。

○ 被疑者国選制度の範囲が拡大(5月)
~利用は10数倍になり,弁護士の少ない地域の弁護士からは悲鳴を聞くことも。

○ 検察審査会法改正(5月)
~検察審査会の権限強化がなされ,起訴相当が2回なされれば,起訴議決がされ、裁判所が指定した指定弁護士が原則として公訴を提起することになりました。第1号はまだのようです。

○ 和歌山毒カレー事件上告審判決(4月)
~とにかく,話題と議論の多い事件でした。4月上告棄却。判決訂正も5月18日付で棄却です。

○ 芸能人の薬物事件で,捜査及び裁判報道が過熱(8月以降)
~芸能人のほかに,学生や弁護士の薬物事件もあり,日本中で薬物汚染が進んでいることを感じさせられました。

○ 足利事件で再審開始決定(6月)
~再審では,録音テープや取調検事の証人尋問など,証拠調べが実施または実施予定となっており,異例の審理になっています。また,再審被告人には,県警本部長や検事正が謝罪するなど,こちら異例の対応。再審決定前に刑の執行停止もありました。
 なお,今年は,布川事件でも,再審開始決定が確定しました(12月)。

○ 参議院議員選挙上告審(大法廷)判決(9月)
~最大4・86倍だった参院選挙区選の定数配分を合憲としましたが,「投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にある」「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる」と指摘しました。10人が多数意見,5人が反対意見(違憲,ただし,全て事情判決の法理適用を肯定)

○ 過払事件の急増。いわゆる過払バブル状況(年間を通して)。
~地裁,簡裁の事件が急増。昨年に比べて3~4割増。弁護士・司法書士と依頼者または税務当局とのトラブルも増加か?

○ 労働審判の利用拡大(年間を通して)
~3年前の3倍。民事分野で,最も成功した改革との評価も。

○ 債権法改正の動きが本格化(年間を通して)
~4月,民法学者や法務省の担当職員らが参加した民間の「民法(債権法)改正検討委員会」(委員長=鎌田薫・早稲田大教授)が改正試案を発表し、10月法相が法制審議会へ諮問。11月法制審議会民法部会開催。1年半程度の調査審議を経て中間的な論点整理を行うことが提案されている。

○ 裁判官の不祥事,今年も(2月)。
~福岡高裁宮崎支部判事の準強制わいせつ事件が起きました。懲役2年執行猶予5年の有罪判決。当該判事は,4月に任期終了退官。

○ 3000人合格計画達成困難に(9月以降)。
~今年の新司法試験の合格は,2043人(目安が2500人~2900人)。合格率は27パーセント。旧司法試験は合格者92人(目安100人)。来年度の3000人合格は困難に。

○ 裁判官ネット裁判員裁判実施記念企画(6月)と10周年記念企画(11月)
~どちらも大成功でした。





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1 これは私の失敗談である。若い弁護士や弁護士経験の短い元裁判官など,法律実務家の参考になればという話である。
 先ごろ国選弁護人として刑事控訴事件を担当した。被告人は1審の判決前に,1審の国選弁護人による保釈請求で保釈されており,1審で実刑判決を受けた。そして控訴し,控訴後被告人の請求で再保釈されていたのである。その段階で私が当番弁護士として国選弁護人となった。

2 高裁での審理は1回で終わり,判決宣告日が指定された。控訴棄却の可能性が高い事案であった。控訴棄却となると保釈が失効して即時収監となる。「保釈中の被告人に控訴棄却又は再度実刑判決が言い渡された場合,原則として直ちに収監されることはない。」(「実践刑事弁護・国選弁護編(3訂版)」東京弁護士会刑事弁護委員会編55頁)と記載されているが,これは誤りだと思われる。その点については,「実践刑事弁護・国選弁護編,三平弁護士奮闘記(新版)」東京弁護士会刑事弁護委員会編73頁で,「保釈の効力が失効するため,直ちに収監されることになるので,直ちに再保釈申請ができるよう準備しておくべきである」と記載されており,これが正しい。

3 被告人は公訴棄却であれば上告をすることと,保釈請求をぜひ希望するという。私は上告には賛成ではなかった。しかしやむなく判決直前の段階で,判決宣告日の日付で控訴審弁護人の名で上告申立書を書いた。原審における弁護人は,被告人の明示の意思に反しなければ,被告人のために上訴をすることができると規定されている(刑事訴訟法355条,356条)。
 ところで,控訴審弁護人は,その名(権限)において,上告審の保釈請求ができるのであろうか。保釈の請求先は最高裁なのか,高裁なのか。保釈の可否の判断は誰がするのだろうか。

4 手持ちの資料で調べたが,よく分からない。資料の整備が不十分であった。とにかく急いで保釈請求書を書き上げなければならないので焦っている。そんなことを調べている余裕はない。仕方がないので教えて貰うことにした。困ったときの「神頼み」で,いつものように早速ネットの某元刑事ベテラン裁判官に電話した。すぐに調べて教えてくれたが,細かい点ではあやふやな点もある。そこで更に高裁支部の担当書記官にも電話していろいろと教えてもらった。また刑事訴訟法の条文も読み直した。

5 当日の判決は控訴棄却であった。即日私の名で上告申立書と保釈請求書を提出した。保釈請求の宛先は高裁支部であり,間もなく却下された。そこで,なお被告人の強い希望で,控訴審弁護人の名で保釈請求却下決定に対する異議申立てをした。裁判所は私には保釈請求却下決定に対する異議申立てをなす権限はないとして棄却したが,「なお念のため」として,異議申立ての当否を判断し,「禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった後」であるから,刑訴法89条(必要的保釈)の規定の適用はなく(同法344条),上告審は法律審であり,単なる量刑不当は上告理由とされていないこと等控訴審とは性格が異なるとして,控訴審判決後に保釈を許可しなかったことが刑訴法90条の裁量を逸脱したとはいえない,とした。被告人は納得して上告を取り下げて,事件は決着した。(ムサシ)



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 11月下旬から12月中旬にかけては,喪中の葉書をいただくことが多い。文面の多くには,両親や祖父母の永眠のために,年末年始の挨拶を遠慮したい旨が書かれている。私の父も数年前に75才で亡くなり,同様の葉書を出したことがあるが,その年には,実家や病院に帰ることが多く,いろいろ考えることが多かったと記憶している。おそらく,喪中の葉書を出された知人の方も同様かと推察する。

 ところで,そうした喪中の葉書の中に,時に子供さんをなくしたという葉書があることがある。これには,本当に心が痛む。両親や祖父母であれば,「生まれた順」と諦めもつくが,子供であれば,事情が全く異なる。両親の悲しみや嘆きはいかばかりかと思われる。私の亡くなった祖母は,「親より先に子が亡くなるほど,この世の親不孝はない。」と孫の私に言ったことがある。全くそのとおりで,子供さんを亡くしたという葉書をいただくと,いつも祖母の言葉を思い出すのである。今年の大河ドラマの主人公直江兼続も,子供達が次々と先に亡くなるので,夫婦で嘆きあう場面がドラマ中にあったが,知将で「愛」の字をあしらった兜で有名な兼続も,家庭的には最も「親不孝」なことに何度も会い,心を痛めていたのだろうかと思われる。子供が先に亡くなる原因にはいろいろあるが,自分も,最低限,親よりは長生きしないといけないと考えたりする。

 裁判の仕事は人の死と関係することが多い。刑事事件もさることながら,民事事件や家事事件も,人の死によって権利義務関係が発生,変更するので,人の死は法律的に重要な事象である。しかし,事件に関係するのは人間であるから,権利義務だけでなく,上記のような悲しみや感情が訴訟でも渦巻くことになる。私の担当している民事事件には,交通事故で,子供さんを亡くしたという事件がときおり見られ,相続人である両親の気持ちを察し,喪中の葉書と同様の思いをもつことがある。両親の思いは同じではあろうが,一人息子や一人娘を亡くしたとなるとなおさらである。もちろん,暴走気味で子供さんの過失が重い場合と,居眠運転による追突被害などで子供さんの過失がゼロの場合で,感じることは同じではないのであるが・・・。ただ,日常の感覚は,持ち続けながら裁判の仕事をしなければならないと常々思う次第である。

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6 事務員の1人は大学を卒業して間がない若い独身女性であるので,いずれ生涯の伴侶を見つけなければならない。そのためには相手の男性から,素敵な女性だと思われることが望ましい。素敵な女性であるためには,多くのことを知っており,話題が豊富で面白いことは有力な要素になる。読書も必要であろう。そしてその知識を単に多くのことを知っている物知りということではなくて,その知識に自分なりにひと工夫を加えて,ユーモアとウイットに富んだ話題に作り変え,それをメモなどに蓄積することはとても意味がある。

7 そして時間をかけて少しずつ努力し,準備した結果として身につけた豊かな話題を,女性としての控え目でさりげない,しかし素敵な聡明さに転化してほしいと私は考えるのである。これはいささか高度な要求には違いないが,そのような視点さえしっかり持っておれば決して難しいことではなく,日々のささやかで粘り強い努力の継続により充分可能なことである。面白くて味のある話題は,その気にさえなれば,テレビや新聞や日常生活の中など,案外身近なところで見つけることができる。人は,相手の異性の,ほんのちょっとした話題や言葉などに,その人の知性や感性を感じて,面白い人だなとか,魅力的な人だなと,案外敏感に反応して,関心を抱いたり惹かれたりするものだと私は思うのである。勿論そのような技術論だけではなくて,前提として女性としての優しさが重要であることはいうまでもない。

8 私は結婚に至る過程で,自分でも驚くようなアイディアがひらめいたのだと言ってきた。そのいくつかは既にこのブログでも披露した。しかしそれは実は人知れず積み重ねた密かな努力の成果を,効率よく活用したに過ぎない。以前に書いた「鯉の笹焼き」(「恋の囁き(ささやき)」)の話も,かねてから用意が出来ていたものであり,いつ使おうかとその時をジッと待っていたものである。そして散歩中に池のほとりで,泳いでいる鯉を2人で見ているという絶妙なタイミングで,クイズの形で「恋の告白」の手段として使ったものである。結果的には見事にこれが私の生涯の伴侶を得るために,決定的な意味を持った「最善の一手」となったということである。真面目であることはとても大切なことではあるが,「真面目だけれど面白くない」人間だと評価される場合には,必ずしも異性の心を捉えることができない恐れがある。私も自分が真面目人間である故に,かつてその努力の必要を感じたことが動機となって,その努力を開始し,そして成果があったということである。

9 少しずつ工夫を積み重ねることの重要性は,単なる机上の空論ではなく,その一部は既に私自身の人生で実践によって確かめられている。その秘伝の一部は彼女に伝授しておいた。また私が40年以上をかけて苦心して集めて整理した珠玉の俳句や短歌などを,活用できる材料として私のフロッピーから印刷して彼女に進呈した。これらも参考にし,またこれから見ることになる豊富な内容のビデオなど,単に「大変参考になりました。」というのではなく,彼女独自の努力と併せて,彼女の実践的な知恵となり,武器として活用できるための一助になるのかどうか。果たして密かに意図された私の「昼休み大作戦」が見事に功を奏することになるのかどうか,今暫く見守る必要がありそうである。そして私には,妻の方から愛を告白されて結婚したのだと,嬉しそうに語る友人が何人もいることを付記しておきたい。(ムサシ)


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 年末年始は,テレビマニアにはたまらないシーズンである。忙しさにかまけて見逃してしまった名作が再放送される機会も多いからである。私は最近テレビドキュメンタリーにはまっているので,地味ながら内容の濃い作品が再放送されることを期待しながら,テレビ雑誌のページを繰っていたりする(学研の「TVライフ」誌は,他誌に比べてドキュメンタリーの紹介が多いので定期購読している。)
 実は私は,北海道を拠点として活動しているメディア・アンビシャスという団体の会員である(ホームページはこちらhttp://media-am.org/)。
 どのような団体かというと,設立趣旨としてホームページには以下のように記載されている。
「私達は、近年ますます強くなっているメディアスクラム(集団的加熱取材)、危機と不安を煽るマスメディア状況の中で、それでもメディアリテラシーの大切さを思い、多面的な視点でとらえようとする番組や報道が決してないわけではないことを知っています。少数になることも恐れずに番組を作り、報道している人達が確実にいることも感じています。
マスメディアを批判することも勿論必要ですが、私達は、メディア状況をよりよく改善していくために、そのような人達を、スタッフを、多面的な視点でとらえた番組や報道や表現を、むしろ、より積極的に応援していこうと考えました。クラーク博士の”ボーイズ・ビー・アンビシャス”に倣うわけではありませんが、志を持ち、それぞれの良心に従って伝えていこうとする人達を、私達は、年に数回、勝手に表彰して応援しようと思います。より良いと感じた番組や報道を応援し、それらが少しずつ増えていくこと、そのことがメディア状況の改善に、少しでも役立つ事を願って、私達の活動を始めたいと思います。メディアリテラシーの大切さを思う多くの方々のご参加をお待ちしております。」
 そして今年末,ついにその「勝手に表彰して応援」する機会が訪れ,受賞作が以下のように決定された。

映像部門
★ 大賞 「死刑囚 永山則夫 ~獄中28年間の対話~」 NHK
★準大賞 「夕張、年老いた町で~医療再生700日の記録~」 NHK
 準大賞 「「イチオシ! 」シリーズ調査報道 地方議会ウオッチング」 HTB
活字部門
★ 大賞 「マレーシア67年前の惨劇/華僑虐殺 語り継ぐ」
     「語り、伝える マレーシア華僑虐殺(全5回)」
     「水平線 マレーシア華僑虐殺/史実共有し教訓に」の一連の報道
                                北海道新聞
★準大賞 「現代かわら版 プルサーマルの現場を歩く(上・下)」 北海道新聞

 そして,12月21日月曜日に,札幌市狸小路6丁目にある映画ファンには著名な映画館「シアターキノ」において以下のようなスケジュールで表彰式が行われることになった。
  18:50頃 開場予定
  19:00~映像部門大賞「死刑囚 永山則夫~獄中28年間の対話~」鑑賞
  20:30~表彰式と受賞者の一言ご挨拶
   堀川恵子さん、米原尚志さん、HTB報道部、川村史子さん、
  20:45~ミニシンポジウム「受賞作と今年のメディアを考える」
   パネラー 堀川恵子さん(上記大賞作品ディレクター)
      山口二郎さん(メディア・アンビシャス世話人代表)
      中島岳志さん(メディア・アンビシャス世話人)
  21:20 終了予定
 そう,瑞祥氏が10月21日付けのブログで触れられたETV特集「死刑囚 永山則夫」が栄冠を勝ち得,札幌周辺の会員に見てもらえる機会を得たのである(残念ながら,NHKオンデマンドには挙がっていないようである)。会員である私も是非参加したいところであるが,諸般の事情により東京出張予定で参加できないのが残念である(そのかわり妻と二人,六本木ヒルズでお上りさんになって大東京を見下してやろうと企み中)。
 参加は会員に限られるが,当日入会も可能である(年会費3000円、学生1000円)。
 地方で始まったささやかな試みが,良質なジャーナリズムの育成,更には市民意識の高揚にわずかなりとも役立てれば幸甚である。
(くまちん)


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 本年11月21日,東京渋谷・道玄坂「フォーラム8」で日本裁判官ネットワーク創立10周年記念企画が行われました。江田五月参議院議長(元裁判官)や木佐茂男九州大学大学院法学研究院教授からお祝いのメッセージをいただいたほか,多くの方にご来場いただきました。鳥越俊太郎さんの講演や,ネットの10年を振り返り,かつ今後のために第二次司法改革の提案をする企画など盛りだくさんであり,盛況の内に終えることができました。
 今月号は,特集号として,上記記念企画のエッセンスや参加者の御感想・御意見などを掲載しました(http://www.j-j-n.com/)。力のこもったものが多いと思います。特に,鳥越さんの講演「冤罪と裁判官」要旨と,それに対する裁判官側の対応を是非ご覧下さい。
 その他,法科大学院,捜査用語,ETV特集等についての投稿の他,いつもの肩の力を抜いた楽しい投稿も満載です。ご意見,ご感想もどしどしお寄せ下さい。今後の参考にさせていただきます。


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先日,はじめての裁判員裁判を弁護人として体験しました。

まず,弁護人の複数選任の手続をとり,またパワーポイントを使える若手弁護士を補助者として裁判所に申請して認められました。彼は法廷で発言こそしないものの,準備会議や接見に参加してもらい,立派なプレゼンソフトを作ってもらい操作もしてもらったので大変助かりました。

次に,被告人の法廷での解錠手順や弁護人の隣への着席申請などをしましたが特に問題はありませんでした。


公判前整理手続ももちろん初めてで,いろいろまごつきました。類型証拠開示請求をして主張書面を作成するまでは順調でしたが,検察官から弁護人請求証人について供述すると思料される内容を記載した書面(刑訴法316条18第2号)が出ていません,と電話があったときは,思わず「そうだたっけ」と叫んでしまいました。

公判前整理手続きは被告人も出頭し,法廷で行われましたが,やはり非公開で証拠の採否まで決めてしまうのはどうかと言う気がしました。

事件は量刑を争う事件でしたが,事前に弁護団が何回も接見を重ね,さらに弁護団会議,といっても3人ですが,十分議論したため,審理自体は冒頭陳述から証拠調べ,弁論まで,充実した内容だったと自負していました。

しかし,検察官が論告で予想外の論陣を張ったため,あわてて口頭で反論し,弁論を書き直して提出するという事態もありました。

結果は,求刑8年に対し,執行猶予相当の弁論をしましたが,懲役3年・5年間執行猶予の判決でした。(未確定)

裁判員裁判では,求刑にとらわれず,裁判官と裁判員が納得できる判決するという
強いパワーを感じた裁判でした。

                    初めての体験に緊張した「花」

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 最近,静岡地裁浜松支部における裁判員の記者会見での発言をきっかけに「裁判長の誘導」を批判する記事が散見されるようになりました。このようなことは,模擬裁判でも指摘されたのを聞いています。時間が足りなくなって結論が出ていないと,裁判長はつい結論を出すことを急いで,裁判員のペースと合わなくなってしまうことがありました。心しなければならないことです。ところで,回覧された裁判員裁判の記事の中で,中日新聞「話題の発掘 ニュースの軌跡」ここがおかしい!裁判員制度 裁判官まるで誘導役という特集記事をみて,ひっかかるものがありました。この記事には誤解も含まれているのではないかと思ったので,皆さんのご意見を伺いたいと思います。

 それは千葉の強盗致傷事件(平成21年9月18日判決)に関して触れられた部分でしたが,裁判員の会見の際の「私は下着窃盗ではないかと思っていたが,裁判長の強盗になるという説明を受けて納得しました」という趣旨の発言を引用し,これを静岡地裁浜松支部での「重要な点を決める際に,裁判官から『法律で決められている』といわれちゃって」「見えない線路が敷かれている気がした」という裁判員の発言と並べて,「千葉地裁の裁判員裁判でも”線路”が垣間見えた。」と評議における裁判長の態度に問題があるかのような取り上げ方をしているものでした。
 他の新聞の記事から事案を見ると,被告人の男が,女性宅から下着を盗み,車で逃げようとしたが,目撃者の男性にドア越しに胸ぐらをつかまれたために,腕にかみついて5日間のけがを負わせ,強盗致傷で起訴されたものです。弁護人は,窃盗と傷害を適用すべきであると争いましたが,判決では強盗致傷が認定されました。判決後の会見で,複数の裁判員からは,「これで強盗と?」と思ったが,裁判長が,強盗にもいろいろあると説明して下さったという趣旨の発言があったようです。この裁判員の発言をとらえて,中日新聞の記者は「裁判長が検察官の味方をしたように聞こえた」と論評して制度運用の疑問点の一つに加えているのです。しかし,裁判員の会見を引用した別の新聞記事を見ても,裁判長は強盗にも色々あることを丁寧に説明したようにしか読めませんでした。

 ところで,蛇足になるかも知れませんが,強盗には,例えば,犯人が万引き窃盗をしたつもりが,これを見とがめた被害店の店員に呼び止められた際に,逮捕を免れようと店員に抵抗して強い暴行を加えると,窃盗が発展して強盗の扱いになるものがあり,これを「事後強盗」といいます(刑法238条)。相手に怪我をさせた場合には強盗致傷となって裁判員裁判の対象事件になるのです。
 したがって,千葉地裁の事例も事後強盗による強盗致傷として起訴されたのです。もちろん,暴行の程度が軽い場合は,その事件の弁護人のように強盗とするのは問題だ,窃盗と傷害と認定すべきだと争うこともよくありますし,検察官が初めからそのような起訴をする場合もあります。もちろん,暴行の程度が軽いから,「被害者の抵抗を抑圧した」とはいえないと考えて強盗にはならないというのは立派な意見です。もし,このような事実を踏まえた意見を裁判長が法律解釈だとして無視したりすれば,問題だと思います。しかし,裁判員の常識では,窃盗と傷害ではないかと疑問を持ったとしても,法律解釈上は強盗致傷になるということはあり得ることです。法律解釈自体については,法律専門家である裁判官の意見を尊重してもらう必要があります。中日新聞の特集記事は,当たり前の評議の経過についての裁判員の説明が誤解されたのではないかと懸念されます。なお,報道記事には,判決で小坂裁判長は、被告の行為を「犯人を捕まえることをあきらめさせるのに十分な強さがあり強盗罪の暴行に当たる」と認定したとあり,判決でも問題のポイントについて丁寧な説明がなされたことが窺えます。マスコミの皆さんも,裁判長が事実認定を含めて自分の見解を押しつけたのか,それとも法律について説明しただけなのかを良く判断して論評してもらいたいものだと思った次第です。                 (ミドリガメ)



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1 わが事務所の昼休みには,事務所の応接机を囲んで,各自が持参した弁当を食べる。女性事務員3人のうち1人が育休中なので,事務員2人とわが夫婦の4人であるが,妻は大学と掛け持ちなので,事務所での昼食は週の半分くらいである。

2 応接机の脇には昨年買ったTVセットがあり,みんなでテレビを見ながら雑談をする。毎日12時から20分間はNHKニュースを,12時45分から15分間は連続テレビ小説を見る。12時20分から45分までの25分間は,テレビを見ていることもあるが,私が持参するビデオを再生して見ることが多い。

3 先日は日本裁判官ネットワークの10周年記念講演会とシンポジウムが東京の渋谷で行われたが,その際放映するために私が編集した「日本裁判官ネットワークのこれまでの10年」のビデオを見せた。私もネットの設立当初は地元のテレビやラジオに何度も出演したが,最近もネット以外のことで時々テレビに出ることがあり,これらも選んで見せた。

4 私はNHKの「試してガッテン」のファンなので,これを録画することが多く,健康論や美味しい料理の工夫などをよく録画する。また最近はNHKのアナウンサーと有名な女性登山家が数日間北アルプスを縦走した放送を録画したものを見た。その中に,ぜひ行って見たいような山や怖くて行きたくない山などがあり,ガヤガヤそんなことを言いあいながら見た。以前,妻が帰郷する前の,今育休中の事務員と2人きりの昼休みには,毎日少しずつ長期間かけて藤沢周平の名作「蝉しぐれ」の映画を見たこともある。またそのころ毎日10分ほど実務英会話を聞いたこともあるが,さすがに強化合宿的昼休みとして欲張り過ぎであると反省したので,英会話を聞くのは中止した。昼休みの計画は意欲的ではありたいが,昼休みが苦痛になっては困るので,昼休みが楽しみで待ち遠しくなる内容に限ることにした。

5 私の家にはよさそうなテレビ番組をタイマー録画した未整理のビデオテープが100本を超えて存在する。これを今少しずつ整理しているが,その中の見る価値のあるものは,順次昼休みに事務員に見せようと思っている。ずっと以前のヘールボップ彗星や,数年前に感動的であった獅子座流星群のテープが出て来たが,事務員は放送を見ていないそうなので,近く見せることになるだろう。料理番組や健康論や,時には最近の金融恐慌などの経済学など硬軟両様で,甚だ豊かな内容の昼休みになっていると,私の自負するところである。(ムサシ)


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 ネットワークOBで現在ロースクールで教鞭を執っている立場から,ロースクールの最近の情勢をお伝えします。
 「理論と実務の架橋」を旗印に始まったロースクールですが,結局,従来の大学の司法 試験合格者ランキングとロースクールの司法試験合格者・合格率・人気はほぼ重なってきて落ち着いた感があり,一橋大学,千葉大学,神戸大学がかなり躍進したこと,早稲田が慶應に逆転されたことくらいがめぼしい変化でしょうか。
 多くの大学では,2009年度入学生から定員を削減しましたが,実際の入学者はその削減した定員さえも大きく割り込むところも少なくないようです。大学進学希望者数が入学定員を下回る「全入時代」が到来していますが,ロースクールも選ばなければどこかには入れる時代になっています。
 しかも,進学には学力だけではなく,経済力も必要なため,学力はあっても経済力の乏しい者は進学を断念せざるを得なくなってきています。そのため本来法曹になるにふさわしい資質のある学生がロースクールを敬遠する傾向も顕著で,数年先には法曹の質の低下が深刻になると危惧されます。
 もともと旧司法試験の受験生が予備校でのマニュアル的な勉強に依存しているという弊害が叫ばれて始まったのがロースクールです(私は勉強には方法論が必要で,それをエキスパートに指導してもらうこと自体悪いとは思っていませんが)。しかし,実際にはロースクールの学生は今まで以上に試験を意識した勉強に走っており,試験に必要かどうか,役に立つかどうかを非常に気にしています。かつての司法試験受験生のように自分から学ぼうという姿勢に乏しく,教員におんぶに抱っこで要求ばかりする者も増えているように思います。
 今,ある大学の歯学部でも教えていますが,歯学部も乱立のためレベル低下が著しいようで,授業中話を聞くという姿勢すらなく,学級崩壊状態です。国家試験の合格率が7割に達しない大学も多く,結局,資格が取れないまま,親のすねかじりになる者もいるようです。自嘲的に「高学歴フリーター養成所」と自分の大学を呼んでいる先生もおられるくらいです。薬学部も6年制になって,親の経済力が必要になり,かえって人気が落ちてレベ ル低下したようですし,民主党は教員まで6年制にすると言っています。
 しかもそこまで時間とお金をかけても,薬剤師も教師もそれほど待遇がいいわけではありませんし,弁護士でも就職難に苦しみ,歯科医師さえ倒産する時代です。家計に余裕がなければ人生をかけてまでチャレンジできるものではありません。
 日本は,金持ちでなければ資格をとるスタートラインに立つことさえできない社会になりつつあるようです。しかも,そのチャンスに恵まれた若者はそれを所与のものとして,そのチャンスがない者への理解も共感もなく,特権を浪費しています。なぜ,有り余る冨を持つ世帯にまで定額給付金や子ども手当を税金から配らなければならないのか,理解に苦しみます。
 文明論者によると,ギリシャ,スペインからアメリカに至る世界の歴史を見ると,その覇権のピークになると弁護士,医師,保険業者が増え,その後その社会は衰退していくそうです。果たして日本はどうなるでしょうか。
 個人的には,中卒,極道の妻からでも,一念発起して弁護士になった大平光代さんのような方にも開かれている旧司法試験の方が平等でよかったと思います。

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1 先日,日本裁判官ネットワークの10周年記念講演会とシンポジウムが東京の渋谷で行われ,100人近い参加者があった。マスコミ取材もあり,関東ではテレビ放映もされたということである。第1部としてテレビキャスターの鳥越俊太郎さんの「冤罪と裁判官」という講演があり,「自分が担当し有罪と判断した刑事事件が冤罪として確定した場合に,なぜ裁判官は謝らないのか」という,怒りに満ちた迫力ある講演があり,それに対するサポーターである元裁判官の適切な質問と,鳥越さんの裁判官の良心のあり方に関する回答など,感銘を受けた。その内容はA4紙20ページに及ぶテープ反訳が完了したので,近くネットワークのHPなどに何らかの形で掲載されることになるだろう。

2 また第2部として「日本裁判官ネットワークのこれまでの10年とこれからの10年」というシンポジウムが行われ,第二次司法改革の必要性などが提言された。

3 ところで第2部の冒頭に会場で放映するために,裁判官ネットワークのこれまでの10年を,ビデオに15分程度に編集する作業を私が担当した。全部で13巻のビデオテープが私の元に集められて,それを編集したのである。重複しているものも多かったが,これまでの10年間には,ネットの設立総会を始めとして,ネットのメンバーは結構多数回,NHKほか全国的なテレビ放送に登場していたことが再確認され,改めて驚いたり,新たな感慨を抱くことになった。編集したのは結局7回のテレビの放映(その中に模擬裁判に関するものが1回あった)と,その他にテレビ放映はされなかったが,ネットによるおそらくわが国の最初の裁判員模擬裁判が含まれており,年代順にその冒頭部分の2分ないし3分を編集したのであるが,結局全部で38分になっていた。

4 ところで,私の事務所には1年程前に購入した最新式(?)のテレビセットがあるが,未だに充分使いこなせない代物である。これを使用してのビデオの編集は結果的には上手くいったのであるが,一時肝を冷やした。説明書も出来が悪く,使用方法がよく分からず,結局上京前夜一睡もできなかったのである。

5 当日の放映は,DVDだと確実に放映出来るか不安があるということで,VHSビデオテープを使用することになっていた。そこで編集の際,一旦VHSからDVDに編集し,更にDVDからVHSにダビングし直したのである。例えばニュースの場合,冒頭部分と当該ニュース本体部分の2駒になり,全体では30数駒に分断した。ところが,1枚のDVDでは18駒分しかダビングできないことが後で判明したため,約半分の作業をやり直したのである。作業の約半分が無駄と分かった瞬間に徹夜を覚悟した。というよりも,一体編集が間に合うのかと肝を冷やしたのである。説明書には何の説明もなく,途中ダビングできていないという表示も出なかった。結局作業が完了したのは,乗車予定であった朝1番の新幹線が既に発車した後のことであった。

6 編集を終えたVHSテープが上手く編集できているかどうかを確認する時間もないままに,天に祈る思いで,講演会の2時間半前に設定されていた集合時間に1時間遅れて到着した。新幹線に乗り込んで,買った弁当とビールで朝食を済ませ,すぐに熟睡してしまい,気がついた時は既に新横浜を過ぎていたので,3時間余りは寝込んでいたことになる。あわて気味に品川駅で山手線に乗り換えた。

7 編集したビデオは,放映時私が簡単に解説したが,会場で試写してはじめて上手く編集できていることが確認できてホっとした。会場では参加者は熱心に見てくれた。阪神ファンであるネット裁判官の夫婦の話の場面では,会場は大爆笑に包まれた。編集したビデオが好評であり,ダビング希望者が多く,今事務所で量産中で嬉しい悲鳴を上げているが,メンバー裁判官の1人が,「徹夜した甲斐があってよかったですね。」と喜んでくれた。

8 当日の企画は大成功だったと思う。ビデオもよかった。会場での懇親会では久しぶりに会った友人も多く,大学時代の友人も来てくれており,旧交を温めた。夜は宿の狭い1室に宿泊者が大勢集まって,ギューギュー詰めの楽しい2次会を行なったが,私は途中から部屋の隅に座り込んで,深い眠りに落ちていたようである。(ムサシ)



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