日本裁判官ネットワークブログ
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私の兄が亡くなってから10年になる。
通夜の時にも兄の遺体から血液が流れ出て止まらなかった記憶が鮮明に残っている。
血液中の血小板がほとんどなかったために血液が凝固しなかったのだ。


 兄は、工学部を出てエンジニアとして働いた。
勤めていた会社がプラントを輸出していたことから、工場を造るために、海外に出張することが多かった。
辛いことや苦しいこともあっただろうが、怒ったり、不満を言う姿を見たこともない。
その人生の時間の殆どを仕事と妻子のために費やし、自ら遊んで楽しむようなことはなかった。
その兄が会社の健康診断でC型肝炎に罹患していることがわかった。
そのときには既にC型肝炎は相当進行していてインターフェロン治療もできない状態となっており、数年して肝硬変に移行し、さらに肝細胞癌に移行した。
癌細胞を摘出するための手術をしたときには、施術をした医師によると肝臓そのものがボロボロになっていて機能不全に近い状態になっていたという。
手術後、一時改善があったものの、腹水で腹部が膨満する病状が続き、その苦しみから解放されるようにして死を迎えた。

 感染原因は判然としない。
血液製剤フィブリノゲンやクリスマシン等のウイルスの混入した製剤の投与による可能性も否定はできないが、予防接種等の注射針や注射器を介しての感染である可能性もある。
少なくとも覚醒剤等の回し射ち等自らの責任による結果でないことは明らかであり、信頼して医療行為を受けたことによって感染した蓋然性が高く、無念というほかない。

 まして、血液製剤フィブリノゲンやクリスマシン等のウイルスの混入した製剤の投与によって感染したことが判明した人たちにとっては、無念ということをはるかに超えて、薬害を防止すべき国や製薬会社に対する憤りを押さえることができないことは当然であろうと思う。

C型肝炎による不安や苦しみから少しでも薬害被害者を救済するために、訴訟物を超えて、最大限の措置がとられるよう望む。
また、C型肝炎が完治できるような治療方法を発見する研究開発のためのさらなる予算措置がとられることも必要であろうと思う。
 
心ある国民は、そのために税金が使われたとしても、異議を述べないだろうと思う。
 (あすなろ)


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