日本裁判官ネットワークブログ
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1 コンビニのファミリーマートが,フランチャイズ店主で作る労働組合との団体交渉に応じないのは不当労働行為に当たるとして,平成27年4月16日,東京都労働委員会は,ファミリーマートに対し,団体交渉に応じるように命じた。
2 会社側は,「店主は独立した事業者であり,労働者ではない。」と主張して,平成24年に労働組合が求めた団体交渉に応じなかったという件についてである。
3 都労委は,会社側が店主に就労時間を示したり,その他のマニュアルを提示していることなどから,店主が「労務」を提供していたと判断し,「店主は顕著な事業者性を備えているとは言えない。」と判断して,労働組合法上の労働者であると判断したものである。
4 コンビニの店主を労働者と判断したのは,平成26年3月13日岡山県労委がセブンイレブンに対して,都労委とほぼ同様の理由で団体交渉に応ずるように命じたのが最初であり,現在中央労働委員会で再審査中である。2例目の都労委の命令に対しても,今後同様の展開が予想されるが,今回の都労委の判断は中労委の判断にも影響を与えることになるかも知れない。なお同種の内容の紛争で,事件となっているのは今のところこの2件だけのようである。
5 私は第1例目の命令について,身近な者が県労委に関与しているという特殊な立場で深い関心を持って見守ってきたが,都労委の判断内容を知り,多少ホッとしたということである。そして中労委も同様の判断をされるよう期待したい。
6 コンビニは約40年前に最初の店舗がオープンし,現在業界全体で5万店を超えているとのことである。そしてその実態としては,コンビニによって多少の違いはあるのであろうが,仕入れなど店の運営について店主には殆ど裁量権はないようであるし,次のような問題点が指摘されている。
(1)まず販売期限が迫った弁当類の値引きも自由にできず,安く売れないことによる廃棄費用の大半が店主側の負担になっているそうである。値引き制限については平成21年に公正取引委員会が独禁法違反だとしてセブンイレブンに排除命令を出したところ,セブン本部は廃棄損失の一部を負担するとともに,販売期限の1時間前からの値引きを認めたが,販売期限を夜明け前に設定したり,セブンの社員が各店を監視しているとの指摘があるそうである。
(2)また店主は長時間労働を強いられているが,その原因はアルバイト人件費が売上高の一定比率を超えると店主の収入が減る契約になっているというのである。労働基準法では,「使用者」は,労働時間に関する規制の対象外とされており,店主が「労働者」であると認めることにより,店主の健康に対する配慮がなされることが必要であるとの指摘もある。
7 コンビニはいろいろと問題を抱えているようであり,「職場としてのコンビニの改革」が必要であるとの声が強い。
8 中労委によって,「コンビニ店主は使用者か労働者か」について,どのような判断がなされるのか,期待しながら見守ることにしたい。(ムサシ)「



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1 先頃,私は裁判官,弁護士生活を通じて初めて勾留理由開示請求事件を担当し,いろいろと驚いてしまった。かねてから刑事事件の捜査や法廷での審理のあり方(特に刑事控訴事件),判決の結果など,わが国の刑事司法の現状は刑事訴訟法その他の刑事関係の法体系が求める精神に甚だ反しているとの思いが強い。かつて平野竜一元東大教授が「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である。」(「現行刑事訴訟の診断」団藤重光古希記念論文集1985年所収)と嘆かれた状況は,裁判員裁判の開始により一部改善されたと考えてはいるし,平野元教授が嘆かれている内容とも全く同じというわけでもないが,「絶望的な状況」は,一般的にはさして改善されてはいないという思いも強く,「何ひとつ変わっていない」と評する人もいる状況にある。
2 今回私が担当した事件については,議論に影響がない程度で省略や曖昧な表現にすることにした。事件が発生したのは,このたびの被疑者逮捕から約2年3か月前のことである。当時被疑者が勤務していた会社の車を,何者かが深夜運転し,会社の他の車の真後ろから故意にぶつけて,両方の車両に修理代合計で100万円を超える損害を与えたという器物損壊被疑事件である。法定刑は3年以下の懲役または30万円以下の罰金刑であり,親告罪であって,被害者の告訴がなければ公訴提起ができず,比較的軽微な犯罪とされているものである。
3 事件発生の翌朝には事件が発覚しており,その後間もなく被疑者は所轄警察の任意の取調べを受けて犯行を否認した。予備のキーの管理の状況から,他の多くの従業員にも犯行の可能性はあったし,被疑者には会社に対する不満もなく,会社との間にトラブルもなく,被疑者には格別犯行の動機はなかったということであった。
4 その後の警察による捜査がどのように進展したかは不明であるが,少なくともその後長期間被疑者に対する新たな接触は全くなく,事件発生から約2年3か月が経過した。その頃には被疑者は既に他の会社に勤務していたが,ある日の勤務を終えて帰宅したところ,逮捕状を所持じた警察官に,何の予告もなく突然逮捕されたのである。
5 私は,以前ちょっとした民事事件で被疑者を知っていたことから,この逮捕事件についてその被疑者の依頼を受けて,日弁連の委託法律援助事件として,私選弁護人となったのである。
6 被疑者を逮捕した後で,警察は被疑者を犯人とする新たで有力な証拠を示すことができず,被疑者がなぜ突如逮捕されたのか不可解であった。また被疑者は逮捕の半年ほど前に心臓にペースメーカーを埋め込む手術を受けており,健康上重大な不安があったし,被疑者は定職に就いており,妻と小学4年生の子と同居していた。また本件は軽微な事件であり,被疑者には前科もなく,事件から逮捕までに既に約2年3か月が経過していたことなどからすると,被疑者が逃亡したり,罪証を隠滅するおそれが相当程度に存在したとは考えられず,逮捕の理由も必要性もなかったというべきであり,少なくとも警察はいきなり被疑者を逮捕するのではなく,その後の警察の捜査の進展を踏まえて,改めて被疑者を任意で取り調べ,新たな証拠も示して被疑者の弁解を聞き,逮捕の理由と必要性の有無について,慎重に検討すべきであったというべきである。(ムサシ)

 



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1 私は現在弁護士であり,仕事もそこそこ忙しいが,やりたいことも多く,多忙な思いで日を過ごしている。最近はなぜか資料整備の意欲が高まっており,そのために時間を使うことが多くなっている。もっともこれまでも,それなりに資料整備は行なってきたということではあるが。
2 私は前期高齢者の後半の年齢であるが,これから何年生きるかよく判らない。そこでとりあえず今後必ず読む本として100冊の本を集めることにした。これまで読みたいと思いながら読めないでいた本のほかに,既に読んだことのある本で,もう1度読みたいと思う本も多い。いろんな機会に衝動買いもしてきたので,かなり多数の本は既に手元にある。読書以外にもやりたいことが多いので,読書する時間は余り多くは取れないが,最近鞄の中に常時2冊の本が入っており,毎日僅かでも2冊とも読むことを決意して実践している。1冊は小説であり,もう1冊は法律実務に関する雑多な本である。読んだ本については簡単な読書ノート(読書メモ)を作ることにしており,案外忙しい。
3 最近小さな手帳を,週日は背広のポケットに,土日は軽装の上着のポケットに入れておき,自分の頭部に高感度のアンテナを装備したつもりで,役に立ちそうな情報に敏感に反応しており,何でもメモすることにした。テレビ,新聞,週刊誌などから入手した情報や数字はすぐに書き留める。以前田中角栄元首相が「コンピューター付ブルドーザー」と呼ばれたが,異常に数字に詳しく,国民を驚かせたものである。おそらく人知れず,意図的な努力をされたのであろう。
4 私のメモ帳はいつの間にか19冊目になった。走行中の車で聞いたテレビやラジオの情報でメモするに値する内容は,信号待ちの停車中にメモすることになるし,その汚い文字のメモは,必要に応じて他の保存用メモ帳に転記されるし,更にパソコンによっても資料整備され,いつでも活用できる状態になっている。
5 最近,「プレジデント」という雑誌で,「1日で数字に強い人になる」という特集号を購入した。まだパラパラとページをめくって見た程度で,丁寧に読むことはできていないが,経営者の経営戦略を数字で分析したりしているので,法律実務家にとっては案外難解な内容であると感じられる。この本をマスターして活用するのは容易ではなさそうである。
6 資料収集としては,新聞の切り抜きは当然の作業としており,興味深い週刊誌や,インターネットなどで探した記事や判決,法律雑誌や判例集などを印刷したりして,項目別に分類してファイルする。最近なぜか刑事事件で無罪判決が多いような気がしたりする。
7 情報は案外どこにでも転がっており,自分のアンテナが敏感に機能している限り,情報収集も面白く,その意欲も増進するように思われる。この作業は1日15分主義では到底処理し切れないが,当面時間を気にしないで取り組んでみることにした。1年後にも続いているのかどうか,どのような成果が生じるのかは明確ではないが,少なくとも脳が活性化したり,時間が足りなくて,益々忙しい思いをすることになることは間違いなさそうである。(ムサシ)

 



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