日本裁判官ネットワークブログ
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 少し前のニュースになりますが、元東京高等裁判所総括判事で弁護士だった倉田卓次さんが、1月30日、亡くなられました。89歳でした。マスコミの扱いが少し小さかったのがとても残念でした。

 ベテラン法曹にとっては、倉田さんは、かつて仰ぎ見るような裁判官だったのではないでしょうか。私淑していた人も多かったと思います。業績は多く、交通事故の損害賠償基準を最初に作るようリードされたのは倉田さんですし、専門書に「ローゼンベルク証明責任論」「民事実務と証明論」などがあります。「裁判官の書斎」などの随筆集もファンが多かったと思います。その記憶力には愕然としましたが・・・(メモや日記を多く残しておられたのだろうと推測する人も多かったようです。)。
 そのほかに、自身は否定されていましたが、「家畜人ヤプー」の著者ではないかと噂されたこともあるようです。裁判官としては、話題の多かった人だと思います。

 私は、司法修習生のころに、倉田さんの講演を一度聴いたことがあります。故人には申し訳ないのですが、内容はほとんど覚えていないのです。ただ、とても気さくな雰囲気で「これが有名な倉田さんか」と思った記憶があります。
 矢口元最高裁長官とは違った意味で、戦後の大物元裁判官のご逝去ということになろうかと思います。倉田さんのご冥福を心からお祈りいたします。

 倉田さんの思い出がある方は、是非コメントで紹介して下さい。


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先日、私の担当した国選事件でいたく感心しました。

覚せい罪に溺れ、ひったくり窃盗を繰り返し、遂にはコンビニ強盗をしてしまった、ある意味では大変責任の重い被告人の事件です。

37歳の男ですが、前科は罰金しかなく、なぜこんな重大な事件をするようになってしまったかが問題でした。

情状証人としてお母さんの外に、中学校時代の恩師が出てくれました。

ある学校の校長先生をしておられるその恩師は、すでに約20年以上前の教え子である被告人のために接見に行き、法廷でも被告人が中学校時代には先生の言うことをきかないやんちゃな生徒であったこと,しかし同級生には頼られ、慕われる面もあったこと,被告人が定時制高校に行きたいと言ったときには補講をして激励し、定時制高校を無事卒業したときは二人で抱き合って泣いたこと、接見のときには、刑務所を出たら真っ先に私の所に来い、きつくしかつてやるし相談に乗るなどと、熱く語ってくれました。

さすがの被告人も泣いておりました。

あまり事件には関係が無いのですが、受験競争の中で荒廃した教育界で先生(しかも脳溢血の後遺症と闘っておられました。)はなぜそこまで昔の1生徒のために考えていただけるのでしょうか、と聞きました。

先生は、生徒は家族と思っています、とあっさり答えられました。

いまどきこのような立派な教育者がおられるのか、と感服しました。

検察官の求刑は懲役8年でしたが、私の弁論では、覚せい罪に溺れたことがすべての原因であり、受刑中に依存性は絶たれるし、受刑後の受け入れ態勢もしっかりしているから懲役3年6月が相当と言いました。

判決は3月に言い渡されます。
                     反省を迫られた「花」

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昨日のシンポジウムは、多数の方にご来場いただき、成功裏に終えることができました。議論も活発で、報告に対する質疑応答で、新たな視点を提供していただいた点もありました。このシンポの結果が、これからの民事紛争手続改革の一助になればと思います。内容のまとめができれば、いずれ公表できるかもしれませんので、しばらくお待ちいただければと思います。

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日本裁判官ネットワークのシンポジウムはいよいよ明日開催です。裁判員裁判の次は、民事裁判の改革の番です。熱い議論をしましょう!

シンポジウムのご案内
民事紛争解決の新しい試みに向けて
民事訴訟のありかたをもう一度再考したい!
軽快な労働審判的な手続とその運用を!

日  時 平成23年2月20日(日曜日。土曜日ではありません。)
場  所 「大阪弥生会館」 06-6373-1841
JR大阪駅北のヨドバシカメラの北,JRA(場外馬券売場)の北西30m
【シンポ】
1 第1部(総論)午後1時から3時ころまで
・元大阪高裁裁判長が,新民訴の争点整理と集中審理方式が形骸化し,旧民訴時代のような書面交換だけの3分間弁論準備手続になってしまっているのではないかと議論される現状とその原因を分析します。
・大阪弁護士会中本和洋氏が,日弁連において議論している民事司法の現状分析と改革の課題「市民にとって,より利用しやすく,分かりやすく,頼りがいのある民事司法」を示します(自由と正義2011年1月号Vol.62p17)。

2 第2部(各論)午後3時から5時ころまで
・当ネットワークのメンバー神戸地裁伊丹支部長浅見宣義が,労働審判のエキスを通常民事訴訟に取り入れた「L方式」の試験的運用(判例時報2011年1月21日号)を報告します。
・元簡裁判事が,弁護士に避けられて激減している民事調停の現状と労働審判のエキスを取り入れ,弁護士も積極的に使いたくなるような民事調停への改革の試みを紹介します。
(第2次司法改革の提言)
【パーティ】 午後6時から2時間ほど(会費制です)




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7 検察官は,被疑者(依頼者)を近く起訴する予定だと言った。そこで私は依頼者が刑務作業をしないで,独房でジッと待っていることの苦しさを伝え,早急な事件処理を要望した。そして起訴後は国選弁護人になる予定であるので,起訴前に私選弁護人を辞任したいこと,起訴される予定が決まったら連絡してほしい旨伝えた。

8 そして依頼者に面会し,検察官の意向を伝えた。すると依頼者は自分から仕掛けた喧嘩ではあるが,自分も殴られて怪我をしているので,相手も起訴される可能性があることや,お互いに悪かったと反省しているので,示談が可能だと思うと言った。

9 その直後検察官に電話して事件の進展状況を聞くと,近く取調べをするという。そこで示談成立の可能性を伝えたところ,示談ができるのであれば,示談書を見てから起訴するかどうかを決めたいということであった。

10 そこで私は色々と考えて示談書案を作成し,依頼者に郵送した。お互いに反省し,謝罪するが,金銭の授受はないという内容であった。その後面会に行くと,依頼者はその内容でよいという。そこで喧嘩の相手方に手紙と示談書案を郵送し,近く面会したいと書き添えた。そのうえで相手方に面会したところ,示談書のとおりでよいという。そこで依頼者が署名押印した示談書2通を送るので,相手方も署名押印して1通を返送してほしいと伝えた。印鑑がないというので,相手方姓の印鑑を購入して送ることを伝え,返信用封筒と一緒に郵送し,まもなく返送を受けた。そして検察官に示談書の写しを届けた。その経過を伝えた段階で,依頼者から予期せぬ寸志が送られてきた。その後まもなく,検察官から近く起訴するとの連絡を受けたので,私選弁護人を辞任した。

11 依頼者は起訴され,私は予定どおり国選弁護人になった。その後間もなく面会した。公訴事実は認めることと,刑務作業をできない毎日の苦しさを訴えていた。私はその苦しさ解消のため,かなり前から読書を勧めていた。判決までにはかなり期間があるので,司馬遼太郎の歴史小説シリーズを差し入れることになり,繋ぎとして私が書いたネットのブログの雑文の中から,比較的面白そうな10点程度をコピーして郵送した。

12 その後差し入れる本を準備していたところ,依頼者から手紙が来て,「もう本の差し入れは希望しません。」と書いてあったので驚いた。理由は私の雑文を読んで,それで充分だというのである。「ある鯉の物語」という,わが夫婦の出会いや苦労話を書いた文中に「諦めなければ夢は必ず実現できるものだ」という一文があり,差し入れた雑文の内容や言葉に納得し満足したので,もう本は読みたくないというのである。

13 公判は予定どおり行われた。示談書もあり判決は心持ち刑が軽かったように感じられ,双方控訴なく確定した。被告人からは感謝され,無事に一件は落着した。私は読書は人生を豊かにするので,今でも本を読めばいいのにと思ってはいるが,刑務作業に復帰し,独房ではなくなっているので,それも無理かと少し残念な思いでいる。(ムサシ) 

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 日本裁判官ネットワークのHP(http://www.j-j-n.com/)が更新されました。サポ
ーターの簡裁判事さんによる「ある和解」は、感動ものです。是非ごらん下さい。
 その他、2/20シンポジウムの紹介もあります。


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1 少し前,事務所の私宛に1通の手紙が来た。差出人の名前には全く心当たりがなかった。開封してみると当地の刑務所で服役中の受刑者からで,簡単な事情が書いてあり,面会を希望していた。当地の弁護士マップを見たのだという。

2 それから間もなく,車を運転して片道15分の面会に出かけ,弁護人予定者として面会した。聞いてみると刑務所の中で,ささいなことで受刑者同士で喧嘩をして,相手に怪我をさせたので起訴されることになりそうである。しかし事件後4~5か月が経過したのに,刑務所職員による簡単な取調べがあっただけで,その後進展がない。そのような場合には,懲役刑の刑務作業は中止となり,独房でジッと待つだけなので,精神的に苦しくて耐え切れないという。検察官にどうなっているか確かめて,進行を早めるようにして欲しいというのである。

3 事情は分かったが,手続きをどうしたものか困ってしまった。被疑者国選弁護人という制度もあるが,その事件で勾留されているわけではないので,要件を欠いている。私選弁護人になるのがよいのだろうが,勿論お金はない。無償の私選弁護人になることは可能であるが,起訴された場合には私に国選弁護人になって欲しいという。そうすると一旦私選弁護人にはなるが,起訴直前に辞任しておき,起訴された場合には私を国選弁護人に希望している旨,予め弁護士会に手配しておくことになるが,一旦私選弁護人を選任しておきながら,起訴後には国選弁護人選任を希望することは資力の要件で格別の問題を生じないものだろうか。

4 そこで「委任状」なる書面を私が作成して,依頼者の姓の印鑑を差し入れ,それに依頼者に署名押印してもらい,刑事被疑事件の進行状況の調査を委任されたことにして,検察庁に電話を掛けた。事情を説明して担当検察官を捜してもらい,電話を繋いでもらった。そして「委任状」により捜査の進行状況の調査を依頼されているという私の立場を説明したが,弁護人でないのであれば説明できないという。

5 無償で私選弁護人になるのは構わないが,後に国選弁護人になるうえで支障にはならないものか。私の「顧問弁護士」的立場の妻(最も相互にそうであるが)に相談したがよく分からないという。そこで「困った時の○○さん」という次第で,やはり私の「顧問弁護士」的立場の(こちらは一方的に,かつ私が勝手にそう思っているに過ぎないが)元刑事ベテラン判事,現弁護士で,ネットのサポーターである某氏に電話して聞いた。

6 一旦私選弁護人を選任していたが,起訴直前に辞任し,起訴後国選弁護人選任を希望することは,資力要件を満たしているのであれば格別問題はないという。そこで一旦無償で私選弁護人になることにし,その弁護人選任届を入手した段階で,再度検察官に電話して事情を説明した。そして日時を打ち合わせて検察官に面会し,弁護人選任届を提出し,事件の進行状況を聞いたのである。(ムサシ)
 

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 「旧民訴法のほうがよかった面がある」
 次回2月20日のシンポ(当ブログ1月25日欄及び下記案内参照)の準備会で、弁護士の方から伺った話である。新民訴法(新民事訴訟法、平成10年1月1日施行)の定着・発展が大切と考えてきた世代の人間としては、耳を疑ってしまった。そんなはずはない、と言いたかったが、当該弁護士の話にもなるほどと思わせるものがあった。
 
 新民訴法では、主に弁論準備手続により、裁判所と当事者側が議論をして争点整理していくことを期待し、旧民訴法(旧民事訴訟法)下の書面交換という「3分間弁論」と呼ばれた儀式的な手続を克服することを指向している。しかし、上記弁護士が言うには、① 最近、弁論準備手続が形骸化し、議論が活発でなく、同手続が書面交換の場と化している傾向があり、「3分間準備手続」になっている,② 「3分間弁論」では、弁論が公開下に行われるだけに、次の事件で待っている弁護士や当事者たちが手続を眺めており(注:同じ時刻に多くの事件の弁論期日が指定されていたため、法廷で順番を待つ人が多かった。)、監視機能が働いたし、待っている弁護士も、短い時間とは言え、前の事件での裁判所と弁護士のやりとりで学ぶものもそこそこあったが、「3分間弁論準備手続」では、弁論準備手続が十分な公開下で行われるものではないから、監視機能も教育的機能も働かない、③ その結果、「3分間弁論」に比べて、「3分間弁論準備手続」は、緊張感がなく、弁護士も成長しないなどというのである。そのため、冒頭のような言葉が出てくるのであった。

 私のように、事件の多寡はあっても、ウイークデイは毎日に近い状態で弁論準備手続を行っている裁判官としては、「3分間弁論準備手続」などというものは、例外的な事例と信じたいのであるが、仮にそのような事例が多くあるとすればゆゆしき事態であり、もう一度法曹全体で、新民事訴訟法下の実務の運用について考え直す必要があると感じさせられた。

 次回のシンポでは、このような「3分間準備手続」についても取り上げてみたいと思っている。実際どうなのか、学者や弁護士の方からも多くの意見を伺いたい。裁判官としても、自分の行っているものが、批判されるような弁論準備手続に堕していないか、もう一度振り返ってみる必要があると思われる。そして、これからどうすべきなのか、一緒に考えてみたい。裁判官だけでなく、学者や弁護士の方々(事前連絡は不要ですが、当ブログのコメント欄やHPのご意見欄に匿名ででも、何か書き込みをしていただけると幸いです。)、是非ご参加いただきたい。

                 記
日時 平成23年2月20日(日曜日。土曜日ではありません。)
場所 「大阪弥生会館」JR大阪駅の北側 TEL06-6373-1841
  【シンポ】
   午後1時から午後5時ころまで
  「民事紛争解決の新しい試みに向けて」
   新民訴の集中審理方式の現状の問題点
   日弁連で検討中の民事審判,ディスカバリーなどについて
   労働審判の手法を通常民事訴訟に応用するこのと是非について
   簡裁少額訴訟・調停の改革の試みについて
   (内容に多少の変更はあり得ます。)

  

 

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1 私達夫婦は地元の弁護士会に所属し,二人とも主として弁護士として仕事をしている。その仕事の中に刑事事件の「当番弁護士」というのがある。刑事事件を起こして逮捕や起訴されたが,お金がないので自分の費用では弁護人を頼めないことがある。逮捕された直後の勾留質問の段階で,裁判官に弁護士の面会(接見)を希望すると,1回だけ無料で弁護士の面会を求めることができる。また起訴された後では国選弁護人が選任されることになるし,起訴前でも死刑,無期,長期三年を超える懲役刑等の事件で勾留状が発せられている場合には,被疑者の請求により「被疑者国選弁護人」といって,国の費用で弁護人が選任されることになっている。いずれのケースも順番で当番が回って来る。私達はそのような当番を担当すると申し出て,当番弁護士名簿に氏名が登録されているのである。ざっとした印象では,2~3か月に1回の割合で夫婦それぞれに当番が回ってきているように感じられる。

2 ところで最近,事件の被疑者や被告人が近くの警察署に勾留されている事件は殆ど私達に回ってこず,遠い警察署の事件ばかりが回ってくることに気がついた。夫婦併せて約8割以上の割合で,車で片道40分以上の遠隔地の事件の依頼がくるのである。夫婦それぞれが車を持ち運転できるので,何とか対処はできるのであるが,どうもわれわれは事件の当たり運が悪いようだなどと話していた。以前はそうではなかったと思う。

3 ところが最近どうもおかしいと思うようになった。どうやら遠隔地の事件を当番として割り当てられた弁護士が,拒わっているのではないかと思われるのである。多忙や車を運転できないことによる地理的な事情などで,事件を拒わることがどうしてもやむを得ない場合もあるには違いない。正確な事情は調査していないので,的外れなことを言っているかも知れないが,それにしてもいささか異状である。まるで遠隔地専門の当番弁護士の気分である。

4 何だか頭にきて先日,「われわれもドンドン拒わろうか。」という会話が夫婦間でなされた。しかし拒わる結論にはならなかった。当番を拒わるというのは,余程の事情がない限り弁護士の態度としていかがなものかと思ったからである。「弁護士は愚直たれ」という言葉もあるし,いささか潔しとしない気がする。でも不満な思いも残っている。

5 先日また片道40分の当番が回ってきた。原則として48時間以内に面会することになっている。1日目は仕事の都合で面会に行けなかった。2日目も仕事を終えた夕方,面会に行こうとしたが,空腹だったので夕食の弁当を食べたところ,急に眠くなってしまった。過労状態で居眠り運転の恐れがあり,警察署に電話してもう1日面会を伸ばそうかなどと悩んでいた。すると私と事務員との会話を聞いていた妻がアッシー君を申し出てくれ,私は妻の車の助手席で往復とも眠ることで,何とか切り抜けることができた。
 正直なところ,本気で拒わろうかと迷うこともあるが,それは原則として弁護士には許されないか,好ましくないというのが,当面のわが事務所の結論になった。(ムサシ)
 

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