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品質保証再考第13回

2010年03月10日 | Weblog
日常管理

 前節「方針管理」と対を成すのが「日常管理」である。方針管理は、中期短期の経営方針を効果的に達成するために設定されるものであるけれど、日常管理は、年度方針に左右されない部門固有の業務を管理する。

 ここで、一般的な企業の業務を整理してみる。企業は経営理念に始まる。経営理念達成の方策として、企業戦略(経営戦略)がある。企業戦略は、自社の事業領域(ドメイン)を定め、経営資源を適切に配分することにより、競争優位性の源泉としてのコアコンピタンス(中核能力)とシナジーを追求することである。企業戦略に基づいて、中期経営計画が立てられ、その年の年度計画(年度予算)につなげていくけれど、計画達成に向けた企業の業務は、日常管理業務と方針管理業務に分かれる。

 典型的な日常管理業務は、「維持の業務」である。現在の事業を日々粛々と行うことである。一方、典型的な方針管理業務は、「変革の活動」である。これには戦略的課題に対応するものと開発型課題に対応するものが考えられる。企業は常に経営革新を行ってゆかねば継続できない。技術は進歩し、市場は変化を続けるからである。

 「維持」と「変革」の間に「改善の業務、改善活動」がある。これは日常管理業務にも方針管理業務にも跨る業務および活動である。維持の業務は定常業務だけれど、その中でも日々問題は発生するし、維持するために改善が必要なこともある。日常管理業務としての改善活動は、わが国では小集団活動や改善提案活動などによって効果的に行われてきたことは周知の通りである。一方、方針管理業務としての改善活動または変革活動は、専任の開発部門のほかプロジェクトチームやタスクフォースなど、トップダウンで臨時に編成された組織が、期間を定めて取り組むことも多い。

 ガイドブックの645ページ第Ⅲ部第27章に載っている、「方針管理」の解説を前節で紹介したが、そのページに『日常管理は、SDCA(Standardize-Do-Check-Act)を回し、現在の水準を維持するための活動である。それぞれの職場における役割(業務分掌で示される場合が多い)について、業務の進め方の標準と業務の出来栄えの基準を設け、基準を大きく逸脱するような事象が発生した場合に、その原因を追求して是正し、現状を維持できる仕事の進め方を確立していくものである。』とある。

 方針管理は、経営者から部課長クラスまでが担当するが、日常管理は一般従業員から職長、係長くらいまでが担当することになる。しかし、その日常管理の出来栄えが顧客の評価、信用に直接つながっていく。日常業務を抜かりなく遂行するために、標準化と共に、教育・訓練が重要であることは言うまでもない。



本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にその一部を引用(『 』内)しています。
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