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品質管理のすすめ⑦

2008年09月19日 | Weblog
TQC

 日本的品質管理の代名詞のように言われるTQC(総合的品質管理)だが、元々戦後1950年のデミング博士(1900年-1993年)や1954年のジュラン博士(1904年-2008年)のセミナーに端を発したもので、両博士の理想が日本に根づいたものといえる。

 デミング博士はコンサルタントをしていたが元々統計学者で、日本に統計的品質管理(SQC)を指導したことで知られる。また管理サイクルであるPDCA(計画し、実行し、検証して対応し次の計画に繋げる)はデミングサイクルなどとも呼ばれるように、その原形となる考え方をデミング博士は品質管理に導入している。しかし、デミング博士の骨頂は1900年代初めフレデリック・テーラーにより提唱されて、米国の企業家に信奉されていた科学的管理法*4)に、人間性への配慮に欠けるとして批判的であったことである。

そのため、博士は1970年代まで米国において、コンサルタントとして無視される存在だったそうだ。ところが、高品質の日本製品との闘いに苦戦を強いられた米国で、1980年NBC放送が「If Japan can….Why can’t we?」(日本にできて、なぜ我々にできないのか?)というドキュメンタリーを流し、その中で日本における博士の功績を伝えたことで、デミング博士は一躍脚光を浴びた。結果博士へのコンサルティングの依頼が劇的に増えたといわれる話は痛快である。

 博士の名前を不朽としたのが「デミング賞」(1951年制定)である。日本での講演本の印税を博士が受け取られなかったことから、それを基金として生まれたという。TQCの考え方に基づいて品質管理を行うことは勿論であるが、新しい品質管理手法の考案に評価の重きが置かれている。デミング賞を受けた多くの企業から「方針管理」、「QC工程表」、「工程能力調査」や「初期流動管理」など、受審時には極めて革新的な手法が生まれ、公開されて普及していったとある。このようにTQCはそれを導入した企業の現場から新たな手法が生まれ、進化していったことが、また素晴らしいところであると思う。



*4)科学的管理法とはそれまでの成り行き任せの労務管理を、労働者の課業を科学的に設定することで、労働者の能率と賃金を管理した。当時としては画期的な経営手法であり、今日の経営管理研究の基礎を築いたと言われている。

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