経営のツール(上)
品質管理がなぜ経営のツールとなるのか。それはTQMの考え方を紐解けば解が得られる。まず『TQM(総合的品質管理)は、顧客の満足を通じて長期的な成功、並びに組織の構成員及び社会の利益を目的とする、品質を中核とした、組織の構成員すべての参加を基礎とする、組織の経営の方法』とある。キーワードは「顧客満足(CS)」、「長期的な成功」、「組織の構成員及び社会の利益」、「組織の構成員すべての参加」である。
まずCSを得るためには、いい加減な製品を世に出すことはできない。企業はゴーイングコンサーンを旨とするから長期的に繁栄することが必要である。現在の経営者が経営者であるうちだけ利益を上げればいいというのは論外であることは誰でも分かる。企業の利益はまず従業員に還元され、税金等として社会に貢献する。株主主権で株主だけが儲かるという思想はTQMには無い。そして組織の構成員は想いをひとつにして、セクショナリズムを排して、全員参加で企業活動に取り組むのである。
概念的な話だけではツールという説明にはならない。そこで順次TQMの手法の説明をしたいと思う。TQMでは顧客第一主義の次に、PDCAすなわち、管理と改善のサイクルをまわすことが重要だと教えている。計画し、計画に沿って実施しその結果を検証し、次の計画なり行動に活かすというサイクルを常に意識して廻しなさいと言っている。
最近、Re-Engineering Partners社長の稲田将人氏は、企業の盛衰の研究から創立後順調に成長した企業が、低迷期を迎える要因として、市場からのかい離があるという。すなわち市場起点のPDCAが回らなくなったことが低迷期を迎える要因だと言うのである*2)。本稿第6回で述べた、これも立派なひとつの品質管理からの派生理論である。
稲田氏は、PDCAの「P」は“挑戦”であり、「D」では“きちっとやる”、「C」は“学習”、「A」は“進化”と読み換えられていた。因みにPDCAは日常管理ではSDCAとなる。「S」は標準である。
品質管理の大家の先生のセミナーで、「P・D・C・Aの4つのうち何が一番重要と思うか」を参加者に問うたことがあった。参加者の挙手はばらついたけれど、結論は「D」、要は実行力、パフォーマンスが大事だと言われた。確かに計画もその検証も次のステップのための改善・改革も確かな実行のためにある。
次の経営ツールは、問題解決のQCストーリーである。昔、職場の同僚から「TQMとは何か」という質問を受けた。当時TQMの全体像を十分把握していなかったが、TQMのイメージとして浮かんだのが、この「QCストーリー」であり、TQMとは問題解決のガイドラインのようなものという認識があって、そのように答えたものだ。
課題解決型と問題解決型では進め方に多少異なる点もあるが、基本的には同様と考えていい。問題解決型では一般的に現在顕在化した問題解決であるからテーマ選定後、現状把握と問題の要因解析から入るのに対して、課題解決型では、まず課題の明確化がくる*3)。しかし、それは結局現状把握であると考えられ、いずれにしても物事の解決には現状把握が最重要なのである。これがお粗末だと方策も曖昧になる恐れがあり、真の解決に向かわない。 以下次号
*2)2015年9月29日、日経MJフォーラム2015「市場起点のPDCAとIT戦略」
*3)「新版品質保証ガイドブック」2009年、(一社)日本品質管理学会編、日科技連刊
品質管理がなぜ経営のツールとなるのか。それはTQMの考え方を紐解けば解が得られる。まず『TQM(総合的品質管理)は、顧客の満足を通じて長期的な成功、並びに組織の構成員及び社会の利益を目的とする、品質を中核とした、組織の構成員すべての参加を基礎とする、組織の経営の方法』とある。キーワードは「顧客満足(CS)」、「長期的な成功」、「組織の構成員及び社会の利益」、「組織の構成員すべての参加」である。
まずCSを得るためには、いい加減な製品を世に出すことはできない。企業はゴーイングコンサーンを旨とするから長期的に繁栄することが必要である。現在の経営者が経営者であるうちだけ利益を上げればいいというのは論外であることは誰でも分かる。企業の利益はまず従業員に還元され、税金等として社会に貢献する。株主主権で株主だけが儲かるという思想はTQMには無い。そして組織の構成員は想いをひとつにして、セクショナリズムを排して、全員参加で企業活動に取り組むのである。
概念的な話だけではツールという説明にはならない。そこで順次TQMの手法の説明をしたいと思う。TQMでは顧客第一主義の次に、PDCAすなわち、管理と改善のサイクルをまわすことが重要だと教えている。計画し、計画に沿って実施しその結果を検証し、次の計画なり行動に活かすというサイクルを常に意識して廻しなさいと言っている。
最近、Re-Engineering Partners社長の稲田将人氏は、企業の盛衰の研究から創立後順調に成長した企業が、低迷期を迎える要因として、市場からのかい離があるという。すなわち市場起点のPDCAが回らなくなったことが低迷期を迎える要因だと言うのである*2)。本稿第6回で述べた、これも立派なひとつの品質管理からの派生理論である。
稲田氏は、PDCAの「P」は“挑戦”であり、「D」では“きちっとやる”、「C」は“学習”、「A」は“進化”と読み換えられていた。因みにPDCAは日常管理ではSDCAとなる。「S」は標準である。
品質管理の大家の先生のセミナーで、「P・D・C・Aの4つのうち何が一番重要と思うか」を参加者に問うたことがあった。参加者の挙手はばらついたけれど、結論は「D」、要は実行力、パフォーマンスが大事だと言われた。確かに計画もその検証も次のステップのための改善・改革も確かな実行のためにある。
次の経営ツールは、問題解決のQCストーリーである。昔、職場の同僚から「TQMとは何か」という質問を受けた。当時TQMの全体像を十分把握していなかったが、TQMのイメージとして浮かんだのが、この「QCストーリー」であり、TQMとは問題解決のガイドラインのようなものという認識があって、そのように答えたものだ。
課題解決型と問題解決型では進め方に多少異なる点もあるが、基本的には同様と考えていい。問題解決型では一般的に現在顕在化した問題解決であるからテーマ選定後、現状把握と問題の要因解析から入るのに対して、課題解決型では、まず課題の明確化がくる*3)。しかし、それは結局現状把握であると考えられ、いずれにしても物事の解決には現状把握が最重要なのである。これがお粗末だと方策も曖昧になる恐れがあり、真の解決に向かわない。 以下次号
*2)2015年9月29日、日経MJフォーラム2015「市場起点のPDCAとIT戦略」
*3)「新版品質保証ガイドブック」2009年、(一社)日本品質管理学会編、日科技連刊