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続、品質管理再考第2回

2015年11月04日 | ブログ
品質管理とは

 「品質管理再考」は丁度2年前にやはり11月が品質月間ということで、本稿のテーマに選んでいる。その第1回に書いていることは、どこからか借用してきた言葉ではない。

 『誰でも、手軽に売れる方策があれば飛び付きたいわけで、安易な価格戦略や宣伝・広告が重視される風潮が濃くなるのだけれど、実はこれはアスリートに喩えれば、練習をしないで勝つ方法を求めるに似ている。優れたアスリートは練習の重要性を知っている。・・・実は「品質管理は企業活動に正しく効率的な練習方法を伝えるメニュー、プログラムのようなものなのだ」。これがこの度、私が思い至った品質管理の企業経営における役割の結論である。練習は辛くとも、これを省略して企業活動においても勝利を収めることはできないことはアスリートの世界と同様なのである。』

 加えて、アスリートに限らずどのような分野のプロフェッショナルであろうが、基本を大切にする。アナウンサーは出番に備えて基本の発音を繰り返すであろうし、ダンサーは舞台の袖で、基本動作を繰り返していると思われる。アナウンサーのことは実は知らないけれど、大分昔になるけれど、世界的な日本人バレリーナーがそんなことをどこかに書いていた。すなわち企業経営の基本とは何かと問いたいのである。そこに品質管理がある。

 しかし、企業経営には、資金繰りや人事管理、顧客管理、製品開発、マーケティングとさらに当節はグローバル活動への対応もあって、品質管理を基本などとは言っておれないと経営者の多くは考えるかも知れない。

 先に(本稿第1回)に書いたのだけれど、1924年のシューハート管理図が世界の品質管理の始まりと言われている。すなわち統計的品質管理である。さらにその前にテーラーの「科学的管理法」があって、欧米に於いてはIE(生産工学・経営工学)という改善手法も発達した。ファヨールの全社的な視点からの管理やメーヨーやレスリスバーガーによる1930年前後に行われたホーソン実験など、人間関係に注目した経営研究なども進んだ。

 しかし、1940年代にドラッカーは当時の世界最大企業であり、資本家ではなく経営のプロが運営するゼネラル・モーターズ(GM)のコンサルタントを引き受け、その成功要因が今に言う事業部制(分権化)にあることを見抜いた。さらに大規模な従業員意識調査から、労働者が連帯しながら品質改善に取り組む必要性を痛感して提案したが、それは労働者が経営権を侵害する思想であると採用されなかったのである。

 ところが、この試みを1950年代前半に取り入れたのがトヨタ自動車であり、わが国のQCサークル活動や改善提案制度の先駆けとなり、その後のわが国の発展に貢献する。

 欧米の優れた合理主義は産業革命を生み、人類の科学技術の進歩に多大の貢献をしたが、一方で、資本家や経営者、技術者と労働者を分けて考える階層主義が根強く、わが国のような全員参加の品質管理を生まなかった。

 今、手元に石川馨100周年記念国際シンポジウムでいただいた久米先生編集による「石川馨品質管理とは」2015という小冊子がある。その第1項「企業の経営」の冒頭に、『私は企業経営を次のように考えている。①人 経営で最初に考えなければならないのは、企業に関係する人達の幸せである。企業に関係する人達が幸せになれないような、幸せと思えないような企業は存在する価値がないということである。・・・』とあるのだ。

 欧米の合理主義、効率主義ではなく、人間尊重の精神で始まる日本的品質管理こそ企業経営の第1番目にくる。すなわち品質管理とは企業経営の基本なのである。




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