中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

続、品質管理再考第9回

2015年11月25日 | ブログ
経営のツール(中)

 三番目は、事実に基づく判断。そのためのツールは、統計的品質管理と呼ばれるもので、すなわちデータを取り解析して現象を客観的に掴む手法である。統計的と聞いただけで難しく感じるかも知れないが、通常、それほど難しい解析手法を使わなくても多くの問題は解決できる。まずデータを取り記録を残すことから始めればいい。ただ、データは数字で表されるものだけでなく、言語データも立派なデータである認識を持つこと。

 三現主義は問題を生じている現場に駆けつけ、生の状況を自身の目で確認する。現場担当者や目撃者から記憶の確かなうちに聴き取りを行うこと。すなわち良質の言語データを得る必要がある。

 数値データを取ることで、見える化が図れる。言語データは特性要因図はじめ新QC7つ道具の多くの解析手法に用いられている。数字はグラフ化すれば傾向が一目瞭然となるし、他の要因との組み合わせで相互関係やそれぞれの要因の影響度も見えてくる。

 日本的品質管理であるTQC(TQM)の研究から生まれたシックスシグマ活動は、まさにこの統計的品質管理を中心としたものであった。しかしデータは、生産現場のデータだけではなく、日々の売上や諸経費も立派なデータである。これらのデータの分析による経営向上こそ、経営ツールとしての品質管理の真骨頂に思える。

 TQMでは、重点志向や源流管理も重要であるが、ツールという観点では、「層別」すなわち「分けることは分かること」が最重要である。狭義の品質管理の世界では、現場トラブルの原因探索として、作業者別、機械別、冶具別、原材料別、不具合の種類別などに層別することに始まったものと思う。しかし経営課題の中心には「売上向上」がくることが多い。しかし、売上全体額の推移だけを見ていても、あまり解決策は浮かんでこない。同じ売上高であってもその内容を精査することが重要である。一例を上げれば、製品別、顧客別、地域別、季節別などに分けてみて、どこで売り上げが高く、何処が低いのか。分けて眺めて、その原因を考察してみれば、売上向上のための方策が見えてくる。

 そんなことは知っているよとおっしゃるかも知れない。ではちゃんとやっていますかと問うと答えは曖昧になることがある。やっても仕方がないとの答えも想定内だ。しかし、経営者の頭の中で概略把握しているつもりと、しっかりとデータで表現することには大きな差異がある。

 商店などの売上で言えば、もう少し細かく分けて見てみると、例えば曜日や時間帯、天候でも売れ筋商品が異なることがある。細かくデータを取って検証してみると思わぬ事実が掴め、売上向上策につながることがある。

 経費節減の筆頭格である在庫削減なども、単に在庫が多いことが問題ではなく、問題なのはその中身である。例えばすでに陳腐化したりパッケージが傷ついて売れないような製品、商品が倉庫料を支払って存在していないか。ほとんど出荷されることのない製品が倉庫の中で幅を利かせていないか。こちらも分けてみることで、大きな改善につながる可能性があるものだ。
以下次号


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする