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続、品質管理再考第10回

2015年11月28日 | ブログ
経営のツール(下)

 品質管理の手法から派生した新たな経営手法もあるけれど、実は品質管理の手法に取り入れた他の経営手法からのものも多い。代表的なものとしてIE(生産工学・経営工学)がある。改善の手法であるECRS*4)や5W1H法などもよく知られるけれど、業務をフロー図(流れ線図)で表す手法は、IEの非常に秀でた手法の代表格ではなかろうかと思う。

 業務の「見える化」のために業務の流れをフロー図で表すこと。これを作業場の見取り図に工程設備を入れ、作業順に線で繋げば、レイアウトの効率性が一目瞭然となる。いろんな制約下に現状のレイアウトが出来ていることであろうが、入り組んだフローは改善の余地があることを教えてくれる。

 また業務の流れを、品質保証体系図という書式に沿って記述しておけば、新規顧客などに自社の品質管理システム(品質保証システム)を紹介することに役立つし、業務の過程で必要な標準書や帳票類を記載することで、それらの不備も確認できる。製造業であれば、中核となる生産の部分は、さらにQC工程図に落し込む。QC工程図はまさに初期のTQC活動企業の中から生まれたものと聞く。詳細なQC工程図は原本とし、現場には使いやすい簡易なものを備えることが望ましい。ポイントは工程不具合が見つかった時の連絡先部署、特に工程検査不合格が見つかれば、直ちにアクションをとれるフィードバック体制が維持できる工程図になっていること。

 TQCと呼ばれていた時代。TQCは方針管理に行きついて、経営の中に溶け込んだ。品質管理手法の集大成であるけれど、それを運用している経営者も品質管理手法とは知らずに使っていたりする。コーチングの究極は、上手くできるようになったのは、「コーチのお陰です」と思わせないことと言うけれど、まさに方針管理で品質管理がその域に達したのだ。

 『方針管理を一言でいえば、組織の使命・理念・ビジョンに基づき出された方針を達成するために、職位・職能に応じて方針を整合した形で策定・展開し(Plan)、それを実施(Do)し、結果とプロセスの確認を行い(Check)、必要な処置をとる(Act)組織的な活動である。

 そして、方針の策定手順は次の通りである。①トップマネジメントにより中長期経営計画を策定する。②当年度の社の経営計画に基づき、部門毎に重点課題、目標および方策を決定する。③重点課題の目標を達成するための実施計画を策定する。必要な経営資源およびその運用プロセスも規定する。④目標を達成するために必要な管理項目を選定する。⑤計画を実行し、定期的に進捗を管理し必要な処置をとる』*5)。

 方針管理は大企業には当然のように行き渡っていると思うけれど、中小企業ではまだまだ行きあたりばったり経営が見られる。また年度計画は作成しているけれど、CheckまたはReview(確認・見直し)が不十分なことが多いとも聞くことがある。定期的に経営会議を開催し、各部署の責任者に進捗状況を報告させ、目標との差異について対策なり、計画の見直しを提言させる必要がある。

 方針管理と対となるのが、日常管理であり、これは当該企業の現在の飯のタネ。それをしっかりと管理する活動。一方方針管理は、新製品開発や新規事業開拓など、主に将来の成長に資する活動をマネージするものである。勿論日常管理ではリソースの不十分な歩留まり向上や在庫低減の検討などもプロジェクトとして方針管理の課題とすることが望ましい。

 まさに「品質管理は経営の価値あるツール」なのである。



*4) (改善の)ECRS:①E:Eliminate(排除)=その動作、その操作またはその工程は、やめられないか、 なくせないか。②C:Combine(結合)=この部品とその部品は一緒にできないか。その操作とこの操作は同時に出来ないか。③R:Rearrangement(交換)=操作や工程の順番を変えることで、もっと効率的に楽に出来るのでは。これと、これを交換するともっとうまくゆくのでは。④S:Simplify(簡素化)=簡素化、単純化できないか。
*5)社)日本品質管理学会標準委員会編、(株)日科技連出版社「TQMの基本」2006年12月刊。
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