中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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続、品質管理再考第5回

2015年11月13日 | ブログ
企業支援と品質管理

 経営コンサルタントは企業規模の大小から業種・業態の違い、マーケティングや生産管理や人事制度など、機能別の問題への対応と、非常に幅広い分野に跨る。それらのすべてに精通することなど誰にも出来ないようでいて、本来の中小企業診断士に求められるスキルとしては、すべての問題に一次的には対応できることであるように思う。

 だからこそ品質管理の考え方の基本はマスターする必要がある。品質管理を特定の専門性と捉えるレベルまで高める必要は通常のコンサルにはない。例えば、QC7つ道具という比較的初歩的な問題解決ツールがあるけれど、石川馨先生は、「職場の身近な問題の80%はQC7つ道具で解決できる」と言われていたと記憶する。すなわち一般企業の経営上の問題も80%程度はそれほど深い専門性を必要とせずに解決できる問題と考えられる。

 非常に深い特定分野の専門性を「中小企業診断士」に求めるのは本来過ちである。それはその分野の博士(学者)であり、弁護士や会計士・税理士、弁理士、不動産鑑定士、技術士、特に士業でなくてもいいのだけれど、各専門家の所掌である。診断士が特定の専門性を持っていけないということでは勿論ないが、中小企業診断士の資格の範囲には、特定分野の深い専門性を含んでいない。どうも診断士自身が専門性を云々して、研究会や能力研修などと銘打ったやたら難しいセミナーを受講したり研究したりするけれど、その努力は良しとしても、それで専門家に成れるわけでもなかろう。

 すなわち、品質管理の手法なり考え方を学び、仕事の基本である5SやIEの考え方や技法、信頼性評価法を取り込み、さらに方針管理などを理解して、コンサルの現場で活かす方が、診断士のスキルとしては正当で、現実的には救える企業は多くなると思われるのである。

 事業再生や承継、内部統制にBCP、知的財産に化学物質管理まで専門性を問われるアイテムは数限りなく、それらの分野で真に専門家足らんとすることは勝手だけれど、その世界でずば抜けたスキルに到達しないと仕事は来ないのではないか。依頼側もそのような専門性の必要な案件を、敢えて診断士だからということで依頼することはしない。

 もっとも、企業側も経営者の自社の不具合を思い込みで、ピンポイントの専門家を求める傾向はある。しかし、難しい話をありがたがったりするところがあると却って間違うことがある。中小企業支援機関もコンサルタント、経営者自身も裸の王様になっているだけのことはないか振り返ってみる必要がある。

 診断士は経営の基本的な部分で、当たり前のことを当たり前にできるようになる方策の相談を得意とする士業でありたい。その診断士の役割から、品質管理こそ学ぶべきスキルである。戦後のわが国の未だ混乱期に来日されたジュラン博士は、「品質管理は経営の道具である」という箴言を残した。そのことがわが国の「品質中心主義に基づく経済」への基礎を築いたと言われる。その道具をもっともっと活用すべきなのである。



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