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時事私観その20

2013年07月28日 | Weblog
破綻

 米国ミシガン州デトロイト市が財政破綻した。デトロイトといえばGMで有名な車の街であることは良く知られる。米国のビッグ3の凋落はわが国のトヨタ、日産、ホンダなどの北米における躍進によるものであろうが、今後似たような話として、わが国のパナソニックやシャープ、ソニーを凌駕する勢いの韓国サムスン電子やLGエレクトロニクスの関係に喩えられないようにしないといけない。その点自民党政権復活が危ういところで間に合った。

 うなぎが獲れなくなったという。わが国には土用の丑の日に、暑さに耐える体力維持にスタミナのつくうなぎを食べる習慣があった。元々高価だったうなぎがさらに高くなって庶民には手が届きにくくなったという。これは単にうなぎだけの問題ではなかろうと思う。すべての食用魚に漁獲量の低下が懸念される。地球温暖化の生物の生態系への影響、海洋汚染の進行による沿岸漁場の環境悪化、乱獲、捕鯨の禁止などによって水産資源が枯渇し始めていることは間違いないであろう。自分達がコントロールできる範疇ではすでになくなっているけれど、古来、魚を主要な蛋白源としてきたわが国も近年肉食にシフトしているとはいえ、鮨ネタなどに大きな影響が出ることは懸念される。

 うなぎの減少が魚全体の減少の予兆であるごとく、デトロイト市の破綻は、わが国の多くの都市にもその懸念があることを警告しているのではないか。炭鉱の街だった夕張市は閉山後の人口減少と観光投資などの失敗もあって破綻したと聞いているが、電機・電子、石油化学など国際競争力の低下による工場縮小や撤退が始まれば、それまでは企業からの税収で潤っていた街は途端に苦しくなる。事実ここ千葉県市原市も臨海部の石油化学コンビナートで潤っていたけれど、今年地方交付税受給団体に転落した*8)。「原発反対」などと多くの政党が公約に掲げ、市民は正義面してデモでもやっておれば気が済むかもしれないが、原発を抱える街も原発を停止されて雇用がなくなり、原発交付金が消滅すれば終わる。

 中小製造業の街だって、原発停止と円安でさらに高額となった電気代負担を強いられ、コスト増しに悩む。成長戦略の中で、ものづくりにこだわっているからわが国は遅れを取っているのだというご高説もあるが、「ビジネスモデルの開発や製品のデザイン、高級ブランドを創る知恵と市場管理の情報力」などソフトだけでは十分な雇用を確保できるとは思えず、1億2700万人を養うことはできない。

 同じように言われ続けたドイツはものづくりを止めず、3Dプリンターなどの発達もあって、米国、英国が急速にものづくりに回帰しているという。*9)

 ものづくりは規格大量生産型だけではない。わが国は現在でも他国では作れないような優れた製品を数多く作っている。確かに家電製品のようなモジュラー化が進みコモディティー化*10)した製品は競争力を失ってはきているけれど、これまで進めてきた効率の良い生産技術の開発だって立派なイノベーションだった。そしてそれはやっぱりものづくりの現場からでないと生まれない。

 ロボットも航空宇宙産業も自動車などからみれば市場規模がまだ小さいが、それらの技術は新興国が追随し難い。ものづくりを諦めることなく、企業はそれらインテグラル型*11)製品にシフトし、行政は常に経費節減に努め、いかなる時代であっても倒産や破綻を回避しなければならない。

 世の中に絶対安全はない。リスクをいかに最小化するかの努力でしかない。リスクを一切取らず発展する国はなく、経済が破綻すれば国民の生命財産も結局安全も担保されないことを知るべきである。





*8)千葉県内不交付金団体は成田市、浦安市および袖ヶ浦市の3市のみとなった。7月24日、日本経済新聞。
*9)日経ビジネス2013.2.25号「識者に聞く:ドイツ企業から強さの秘密を学ぶ」より
*10) モジュラー化の進行等によって、市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差ない状態になること。
*11)部品設計を相互調整することにより製品毎に最適設計して製品全体の性能を出す方式が、インテグラル型。組み合わせ(モジュラー)型は、部品間のインタフェースを標準化して、各部品を寄せ集めて多様な製品を作る方式。
コメント
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