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時事私観その17

2013年07月19日 | Weblog
漁業権

 先日たまたま昼時のテレビを見ていて知ったのだけれど、最近東京都と神奈川県境を流れる多摩川の水質が大いに改善し、河口付近の干潟で多量にシジミが獲れるようになったという。シジミ獲りは付近の人々の楽しみともなっているらしい。

 ところが地元漁業団体がここに漁業権を設定し東京都に申請、9月には認可される予定という。多摩川の水質改善は行政はじめ流域の不特定多数の人々の努力があってのことだけれど、河口干潟付近に限れば地元の人々がボランティアの清掃作業を長年続けて来た成果でもあるらしい。ゴミの中には地元漁師が放置したと思われる魚網などの漁具も多いと言う。それにも関わらず漁業者が新たな果実を独占しようという。東京都への問い合わせに都の職員は、「漁業権が設定されても地元の一般の方々にも干潟は開放し、シジミは獲ってもいいことにしています。」のように電話の声で伝えていたけれど、無期限開放との保証はない。

 また地元の人々の最大の懸念は、近い将来この付近には多摩川を跨ぐ橋が掛る計画があり、その際にまた漁業権を盾に漁業補償として税金が使われるのではないかということ。昭和37年に東京都内湾全面漁業権については330億円の巨費を投じて埋め立てなどの工事に備えたらしい。漁業者個人宛当時のお金で800万円ずつがばらまかれたという(額はテレビ報道と多少異なるかも知れない)。当時の高校卒の初任給は1万数千円。従って当時の800万円は、現在価値では1億円ほどの金額になる。

 千葉県の市原市や袖ケ浦市でも過去に同様のことはあり、袖ヶ浦市のノリの養殖業者は多額の補償金を手に入れ、ある人は土地を購入し子孫に残し、ある人は呑んで叩いたなど泣き笑いがあったことを実際に聞いたけれど、地元で漁が出来なくなっても、新たな産業が地元に起こり雇用が生まれるため、補償金で食い繋ぐ必要などないのが通例だとしても、確かに長年の営みを停止させられる場合は対価としての補償は当然に必要である。

 漁業補償について都の職員は、漁業補償と漁業権は関係なく、そこで漁をして生活している人がいれば、必要な補償はされる。というように答えていたけれど、いずれもまやかしの詭弁に聞こえた。すでに裏取引で漁業権は既成事実化しているようだ。何で新たに生まれた自然界の幸を一部の人に特権的に付与するのか。それが分からない。

 確かに国家にとって食料自給は必要な政策であり、生命産業と言われる農業漁業は保護政策の対象ではあろうが、そのことをいいことに既得権を振り回し、ある時は地元政治家も使って過剰な権利を主張する様は相当に格好悪いだけだ。それを易々認可する東京都はどうなっているのか。マスコミもプロ野球の飛ぶボールに大騒ぎする暇があれば、このような問題をもっと徹底的に白日の下に晒して追及すべきだ。

 話は逸れるが、先日も埼玉県の県民共済だったか理事や理事長の高額の退職金が問題視され、埼玉県は是正を勧告したような新聞報道があったけれど、若者の非正規雇用で吸い上げた利益が回りまわって一部の上層部の人間の私腹を肥やす。外資系などの会社でも取締役などの退職金は公表されていないが、米国ナイズされた一部の人だけが不当に高い報酬を得る社会システムは、如何に自由経済社会とはいえ間違っている。

 漁業や農業団体しかりである。徒党を組んで圧力団体化し、行政に不当に関与し自分達の利益のみ追求することは邪道である。本業を真っ当に貫いてそのことで富を築いて貰いたいものだ。



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