ハロルドが笑うその日まで

DVD「ハロルドが笑うその日まで」(2014)
ノルウェー映画。
ジャンルとしては、痛ましいコメディとでもいえるだろうか。

主人公は、高級家具店をいとなむハロルド。
隣りにイケアができたために、ハロルドの店はつぶれてしまった。
認知症の妻をホームに入れると、その日に妻は亡くなってしまう。
店に火をつけ、自らも焼け死のうとすると、天井から消火シャワーが降りそそぐ。
最後の望みすら果たせない。

ハロルドの息子は、タブロイド紙の記者をしている。
結婚はしているものの破綻寸前。
家の地下に射撃場をつくっており、2人はしばし射撃に興ずる。
ハロルドは、息子が友人から借りているというコルトをもちだし、車でスウェーデンへ。
イケアの創業者を誘拐するのだ――。

北欧の映画はストーリーを盛り上げる気がない。
「ホルテンさんのはじめての冒険」(2007)や「クリスマスのその夜に」(2010)など何本かみたけれど、どれもそうだった。
盛り上がるべきところを常にはぐらかす。
本作もまた同様。
クリスマスの時期が舞台なのに、このわびしさはなにごとだろう。

このあと、ある娘や、娘の母親――元新体操のチャンピオンでいまは酔っ払い――と出会ったり、めでたく創業者を誘拐したりする。
ハロルドは、自分がどれだけ悪いことをしたかという謝罪メモを創業者に読ませ、その様子をスマホで撮影しようとするのだが、創業者はふてぶてしい。
わたしは雇用を1万人生みだしたなどという始末。

ハロルドは、することなすことうまくいかない。
ハロルドにかぎらず、この映画の登場人物はすべてそうだ。
イケアの創業者ですら、のちに屈託をかかえていることがわかる。

痛ましく、滑稽でありながら、映画の印象は清々しい。
冬のよく晴れた寒い朝を思い起こさせる。
浮世のことは笑うよりほかないと、この映画はいいたげだ。


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