「ブックオフという妖怪が徘徊している」

雑誌「新潮45」(2010年1月号)に、「ブックオフという妖怪が徘徊している」という記事(すごいタイトルだ)が載っていたのでメモ。
書き手は、松井和志さん。

書いてあるのは、だいたい3点。
大日本印刷などによるブックオフへの出資について、ブックオフを媒介とした万引き問題、中古販売による著作権侵害について。
発言者のない「」による引用は、書き手である松井和志さんの文章を引用したものだ。
では、まずブックオフへの出資の話から。

2009年5月、大日本印刷、丸善、図書館流通センター、講談社、小学館、集英社の6社がブックオフに出資。
6社の株式習得数は、合計で約29%。

「2008年秋のリーマンショック後、3割の株が“フォーセール”状態になっていたんです。どこが株を買ってくれるかによって会社の未来は変わってきますから、気が気じゃない。とりわけ、同業他社に株主になられるのは一番困ります。そんなとき、6社の方が名乗りを上げてくださいました。出版業界の皆さんとはこれまでまったく話すらできなかったわけですから、シンプルにうれしく思っています」(ブックオフ・佐藤弘志社長)

「『ブックオフのせいで出版不況が起きているとか、ブックオフは敵だとかいっても仕方がない。ブックオフがあることを前提にして、どうやって業界を良くしていけるか。そういう視点で今回出資をしたいと思っている。日本の出版業界をなんとかしていきたい。そういう思いで自分たちは集まっているんです』。6社の出資社から、そう言っていただきました」(ブックオフ・佐藤弘志社長)

つぎは、万引き問題。

「本はゲームなどと違って、買い値はたかがしれています。定価1000円の新刊本を10冊持ち込んでも1000円にしかならない。万引きというリスクを冒してまで売りにきても割りがあわないんです」(村野まさよし編「ブックオフの真実」(日経BP社 2003)より、ブックオフ創業者坂本孝さんの発言)

(この発言にかんしては、2002年経済産業省が発表した書店での万引きによる調査結果をもとに、記事の書き手である松井さんは疑義をとなえている)

「現場では盗品を見抜くよう努力しています。怪しい場合は警察に相談しますし、万引き犯逮捕に貢献した社員は全体会議で表彰しています。我々にとっても、盗品を買ってしまうことは致命傷なのです」(ブックオフ・佐藤弘志社長)

「かつて古書店の供給源として、1店舗あたり20店舗の新刊書店があった。しかし、現在は古書店1店舗につき、供給源の新刊書店は3店舗だ」

「皮肉なことに、新古書店を狙う万引き犯が増えているという」

「ICタグは現在1個50~60円もしますが、出版業界全体に導入すれば、値段は大幅に下げられます。ICタグの役割は、万引き防止だけではありません。どの本が売れ筋か、どうすれば流通を活発化させられるかがわかりますし、不正返本も防げる。年間8億冊出ている新刊本すべてに、ICタグをつける。これが我々の理想です」(大日本印刷・森野鉄治常務取締役)

「万引き被害は、書店だけの被害なんですよ。書店が全部損害をかぶって、出版社は損害を背負わないんです。だから、出版社からしたら、自弁でICタグをつけるのは単純に制作費が増えるだけだから、広まらないんじゃないでしょうか?」(ある書店の若手社員)

それから、著作権について。

「我々が売っている中古本に、著作権は発生していません。それでいいのかという議論は、我々の間にももちろんあります。なぜブックオフが商売をできているのか。利益を出せているのか。本を書いてくださる方がいて、市場に本が出回っているからです。コンテンツを創造されている現場に対しては、今後何らかのお金を供出させていただきたいと思っています。これはCSR(企業の社会的責任)の一環です」(ブックオフ・佐藤弘志社長)

「ブックオフが創業して以来19年、出版業界はただ批判するだけで、何も対策なり交渉なりをしてこなかった。今やブックオフは全国に900店舗ですよ。これは消費者がブックオフを支持している証拠です。それは認めざるを得ないじゃないですか」(丸善・小城武彦社長)

「一部上場企業としてステイタスを得て、どこの街にもブックオフがある時代になったわけです。ブックオフをつぶせば、出版不況の問題が解決するわけではない。1年間に流通している新刊本は約8億冊。ブックオフの取扱いは2億3000万冊。これだけの大きさになったのだから、ブックオフの存在は認めたうえで前に進むしかない」(大日本印刷・森野鉄治常務取締役)

6社によるブックオフへの出資については、以前べつの雑誌からもメモをとった。

あと、補足。
丸善と図書館流通センターは、2010年2月1日に経営統合をし、「CHIグループ株式会社」を設立した。
丸善と図書館流通センターは、CHIグループの子会社になったよう。

ところで、この松井和志さんの記事によると、新刊書店でも新古書の併売をはじめる店舗がでてきたそう。
広島のフタバ図書、三洋堂書店、三省堂書店などでやっているらしい。
三省堂の新古書コーナーはみたことがある。
新古書というより、古書が並んでいて、あまり力を入れているようにはみえなかった。
できれば、お客にコーナーを発見されたくないといった感じだった。

また。
先日、ひさしぶりに近所のブックオフにいってみた。
すると、本を引っ張りだしては携帯電話をいじっているひとをみかけた。
どうも、ISBNを入力しているらしい。
本でいっぱいのカゴが足元にいくつもある。

こんなことをしているひとが、ひとりやふたりではないので、びっくりした。
たぶん、転売目的なのだろうけれど、まるで棚卸をしているみたいに一心不乱にそんなことをしている。
そばにいられると、なんとなく落ち着かない。
さっさとめぼしい本を買って退散した。

このとき買ったのは、創元推理文庫の、「怪奇小説傑作集」の2、3巻。
どこかに1巻がないものかと、いまさがしているところ。

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