かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録(5)

2015-10-12 22:12:05 | 本と雑誌
2か月間で読んだ本は恥ずかしながらたったの4冊、「読書録」などと気取って言えるほど読まなかった。だが、今回紹介する4冊はどれも読んで損はないと思う。中でもノーベル受賞した経済学者で当代きっての人気コラムニストであるクルーグマン・プリンストン大教授の「さっさと不況を終わらせろ」はお勧めだ。多分、私が今迄読んだ彼の著作の中で一番不真面目で好きだ。

著者の主張する金融財政政策が妥当か、現在の経済状況がうまい具合に比較・検証できるタイミングになっている。私は具体的に検証まではしなかったが、日々市場をチェックして得た印象から見て、本書程極端ではなかったが彼の主張と当たらずとも遠からずだ。しかし、重要な論点に差し掛かると必ず不真面目な掛け合いが入る、原文を読んでないので分からないが著者よりも翻訳者の仕業かもしれない。普通の経済書ではないが内容は深い。

「官報複合体」は日本メディアの権力に取り入って情報をとる取材法が特殊でガラパゴス化していると厳しく批判するもので、私が日頃から報道される内容に物足りなさを感じていた原因を構造的に解説してくれた。その取材スタイルの特異性が日本メディアの報道を信じられず、海外メディアの見方と比較したくなる原因ではないかと改めて思った。

残りの2冊「交渉術」と「ザ・リンク」も決して悪くない。普通に読書を勧めたい本だ。だが、上記の2冊は是非をつけて読書を勧めたい。少し言い訳をすると、私が興味を持って日々ウォッチしている領域である「経済」と「ジャーナリズム」であることも評価に影響したかもしれない。

(3.0+)さっさと不況を終わらせろ Pクルーグマン 2012 早川書房 リーマンショック後3年景気回復に手間取る米国政府やFRBに、財政赤字を心配せず大胆に財政・金融政策を取れ、3-4%のインフレターゲットを設定を勧め、一方で欧州危機の構造的問題を解き明かし緊縮策は逆効果と分かり易く説いたもの。

(3.0)官報複合体 牧野洋 2011 講談社 日米マスコミを比較して日本のジャーナリズムが記者クラブを通して強者(権力)の視点から報じる問題を指摘した佳作。日本メディアが通信社的性格で日付モノ、発表報道、匿名・仮名報道などが主流である一方、米国では弱者の声を直接聞き埋もれたニュースを掘り起こす調査報道だと指摘する。権力に取り入って素早く特ダネをつかむといった特殊な報道はガラパゴス化し世界で通用しない日本新聞の姿を鋭く描いている。

(2.5)交渉術 佐藤優 2009 文芸春秋 特殊な才能を持つ外交官だった著者がエリツィン・プーチン大統領と橋本・小渕・森首相等の日ロトップの生々しい交渉の裏側、ブルブリス・鈴木宗男議員との密な付き合いの中で如何にインテリジェンスと交渉からセックス・酒・ワイロ等まで描かれている興味深い内容。ロシア文化を熟知した佐藤優ワールド全開という感じだ。 

(2.5)ザ・リンク Cタッジ 2009 早川書房 ドイツのメッセル・ピットで発掘されたほぼ完ぺきな保存状態の化石が4700年前の霊長類のもので、キツネザルと真猿類に分かれて進化する前の貴重なミッシング・リンクだったことを考古学や生物学の分野から背景解説した書。興味はあるが私には余りに専門的で読書を楽しめる領域まで達しなかった。

凡例:
 (0):読む価値なし (1)読んで益は無い (2):読んで損は無い
 (3):お勧め、得るもの多い  (4):名著です  (5):人生観が変わった 
 0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
 -/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。

2: 古本屋で手に入れた本
L: 図書館で借りた本
新: 「定価」で買った本
コメント
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