MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

不確定告知の意味

2009-07-20 18:50:58 | 健康・病気

「あなたはアルツハイマー病になる危険性が
普通の人より15倍高いようです」
こう告げられたら、あなたはどうだろうか?
一気に落ち込んでしまうだろうか?
それとも一生懸命、脳のトレーニングにいそしむ
毎日を送るだろうか?
あるいは、時間を大切に生きてゆくことを
決意することになるだろうか?
このような告知を受けた人たちに、
特に動じたような結果は出なかったことが、
このたび報告されたアメリカの調査研究で、
明らかにされた。
アメリカ人は精神的に強いのだろうか…

アルツハイマー病の遺伝的危険因子として
19番染色体上のアポリポ蛋白遺伝子 e4 が特定されたのは
1993年。
すでに16年が経過している。
この遺伝子は原因因子ではなく、
発症危険因子であり、この遺伝子を持っていれば
必ず発症するというわけではない。
そのため、いまだにこの遺伝子を
スクリーニング的に検査することはない。
しかし、時代は変わり、
子に老後の面倒を見てもらうことが
期待しがたくなっている。
自分たちの老後の生活設計のためにも
思い切って、
こういった危険因子に対して
目をつぶるべきでない時を迎えているのだろうか…

7月16日付 New York Times 電子版

Learning of Risk of Alzheimer’s Seems to Do No Harm
アルツハイマー病の危険性を知ることは害を及ぼさないようである

 アルツハイマー病の高まる危険性を見出すことのできる遺伝子検査は、たとえ危険な遺伝子が陽性と出ても、それを受け取る人々にはなんら精神的危害を及ぼさないことが新たな研究でわかった。
 この結果は、検査が確定的でないこと、恐ろしい疾患が差し迫っていると考えて不必要に恐れさせてしまうこと、またアルツハイマー病による認知症に対して治療法や予防法がないため検査自体に意味がないことなどから、むしろ検査を受けさせないようにしてきた医学界が長く支持してきた考え方に一石を投ずるものである。
 「危険性を開示することは人々に打撃を与えるという強い懸念がありました」と、Boston University の神経学、遺伝学、および疫学の教授で、この筆頭研究者である Robert C Green 博士は言う。この研究は木曜日に The New England Journal of Medicine に発表された。「そういった推定は今回の研究で覆されました」
 この研究の背後にある意図は、想定される危険性や有益性を持つ薬物などと同様に、情報を扱おうとすることにあると、Green 博士は言う。
 Green 博士は “Reveal” と呼ばれるこの研究で大きなチームを指導、その研究においてアルツハイマー病の近親者がいる162人の成人において、本疾患のリスクを高める遺伝子を持っているかどうかを明らかにした。参加者全員が遺伝子検査を受けたが、ランダムに選んだ51人にはその結果を知らせなかった。他の111人には通知し、2つのグループ間で比較した。
 結果が通知された6週間後、被験者全員に、検査に関係する不安、抑うつ、苦悩について標準化した調査書に記入してもらった。彼らはさらに6週間後と、一年後にも調査を受けた。その結果、検査結果を知らされた人と知らされなかった人の間で、大きな差は見られなかったのである。
 「有意な精神的苦悩は認められませんでした」と Green 博士は言う。
 この研究で、危険な遺伝子を持っていなかったことが判明した人たちは、それによって全く疑いが晴れたわけではないことを理解しているものの、安心を得ていた。その遺伝子を持っていることを知った人たちは、それを持っていない、あるいは知らされなかった人たちより、アルツハイマー病の危険性をより高いと認識し、検査結果を受け取ることに対して負の感情を示す傾向がより高かった。しかし、そういった感情は苦悩へと移行することはなかった。遺伝子を持っていた人たちは、その他の人たちと比較して、この検査をもう一度受けたいと申し出ることは少なかったと研究者たちは言う。
 今回の通知情報はアポリポ蛋白Eの遺伝子 APOE に関係するものだ。それはその人の運命を100%決定する yes か no かの遺伝子ではない。
 人は APOE の2つのコピーを受け継ぐが、コピーはそれぞれ、 e2、e3、e4 の3タイプのうちのいずれかに由来する。e4 ならば不運である。e4 を全く持っていない人に比べ、1つコピーを持っている人は3~5倍リスクが高く、e4 の2つのコピーを有する人たちは15倍のリスクであると Green 博士は言う。(全人口では、一生涯におけるアルツハイマー病発病の平均リスクは約10%である)。e4 遺伝子を持っていない人に比べ、それを持っている人は、たとえアルツハイマー病の明らかな症候はなくても、年をとるにつれ記銘力の検査において、より低下する傾向にある。
 しかし APOE は決定的なものではない。e4 を持っている多くの人たちが認知症にならないし、多くのアルツハイマー病患者は e4 を持っていない。この不確定性が医療関係者を検査に難色を示させる根拠となっていた。
 過去においては、アルツハイマー病協会は検査に反対していたが、この数年、その立場を緩めてきている。その大きな理由は Reveal 研究からの報告によるものだ。そうは言っても、同協会の医学科学関連担当理事の William Thies 氏は、これまでのところ本検査に対する需要はさほど多くなく、それを専門に扱う消費者直販の会社もビジネスとして成り立っていないと述べている。本研究の二人の著者(Green博士は入っていない)は APOE 検査を市場に出そうとしている会社にコンサルティング・サービスを提供した。
 その電話番号が Boston University によって報道関係に提供された6人の研究参加者のうち2人は、この研究に参加できたことを喜んでいるという。コネチカット州 Simsbury のソーシャルワーカー Amy Sumner さん(45)は母方の祖母の世代に数人のアルツハイマー病患者がいたためその研究への参加を望んだという。Sumner さんは、彼女自身の検査結果が、彼女の母親や叔母たち(彼女らは認知症になっていない)が検査を受けるかどうかを決断する一助となってほしいと考えた。彼女は e4 のコピーを持っていないことが判明し、彼女には安心となったが、その遺伝子をまだ持っている可能性のある彼女の親戚たちにはさほど救いとはならなかった。
 母親や叔母たちは自身の危険性について心配はしているが、くよくよ考えているわけではないと彼女は言い、「4人は全員、大変強く、精神的に豊かな女性たちであり、たとえ彼女たちが陽性であったとしても、結果については心に十分な余裕があるでしょう」と付け加えた。
 もう一人の参加者、Robert McKersie(79)は母親がアルツハイマー病で死亡したので本検査を希望したと言う。この検査結果が、彼と彼の夫人がこのまま自宅で生活を続けるべきか、あるいは万一に備えて介護生活施設に移ることを考慮すべきかを決定する参考になるのではないかと考えたと McKersie 博士は言う。結果、彼は e4 コピーを持っていることが判明した。しかし、知能検査での彼の高い得点や、何ら知的障害を見ず79才を迎えている事実から、彼の危険性は相当に低いと研究者らはみている。退職はしているものの、McKersie 博士は今でもマサチューセッツ工科大学のスローン経営学大学院でビジネスコースを教えている。
 後押しするような結果が出た本研究の成果にもかかわらず、APOE 検査がすべての人たちに適しているとは言えないと Green 博士は言う。最初参加したいと考えていた人たちの中には、この検査について多くのことを知るようになると考えが変わったものもいた。さらに、この研究が小規模であったこと、参加者が遺伝子カウンセラーによってさらに多くの説明を受けたこと、追跡期間がわずかに一年間だけであったことなど Green 博士は警告を発した。期間が短すぎて、結果を知ったことで人生の後々まで彼らを悩ませ始めたことになるかどうかは断定できない。e4 が陽性であることが人々に財政的に損害を与えうることになるかどうかも明らかではない。昨年制定された法律は、医療保険会社や雇用者が遺伝子検査に基づいて差別することを禁じているが、長期ケアや障害などの保険には適応されない。
 研究の参加者の中には、e4 遺伝子を持っていることを知ったがために長期ケアの保険に早速入った人がいて、このことが長期ケアの保険会社を震え上がらせていると Green 博士は言う。まじめで落ち着いた集団であると彼が表現する保険会社の重役たちへのプレゼンテーションで、そういった保険商品の購入について取り上げたとき、何人かがサッと立ち上がり、もし危険な遺伝子を持つ人たちがあまりに多く保険に入り始めたら長期ケア保険はもはや成り立たないだろうと叫んだという。

確かに一年間程度の追跡では精神的影響を
明らかにしたとは言えないだろう。
事実を知った後、前向きに生きるか、
後ろ向きになるかそれは本人次第だろう。
いずれにしても、一刻も早い
アルツハイマー病の原因究明と治療の確立を
望むところである。

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