MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

止まらない吃逆(しゃっくり)

2011-09-27 14:53:43 | 健康・病気

しゃっくりがなかなか止まらないという経験を
お持ちの方はおられないだろうか?
息をしばらく止めてみたり、
冷たい水を飲んだりすれば自然に止まる?
でもそれでも止まらないときは?
ときには重大な病気が原因で起こることもあるそうで…
9月12日付 New York Times のブログ Well に
出題された診断クイズの解答編を紹介する。

9月23日付 New York Times 電子版

DIAGNOSIS 診断
A Serious Case of Hiccups 吃逆の重症例

Hiccup
本症例が9月12日の New York Times の Well ブログに掲載されると、275名を越える読者からこの患者に何が起こっていたのかについての考えが提示された。多くの人たちから吃逆の治療法についても示唆をいただいた。

By LISA SANDERS, M.D.

THE PATIENT'S STORY 患者の病歴
 46才の男性がある昼下がりに Manhattan's Upper East Side にある Metropolican Hospital を訪れた。彼の症状は持続する吃逆(hiccups:しゃっくり)だった。その症状は2日前に始まった。いつもと変わりないある日のひる日なか吃逆が始まり、止めることができなかった。一般的なすべての対処法を彼は試してみた。息を止め、冷たい水を何杯も飲んだ。恐ろしいことを考えたりもした。しかし、どんなことを試しても、20~30秒ごとに彼の胸は躍動し、続いて彼の喉が締まり、不随意に息を吸い込む動作が遮られた。二日間、吃逆は止まることがなかったため彼は病院を受診した。

1. THE PHYSICIAN ASSISTANT  医師助手
 医師助手の Steve Ferrante 氏がこの患者を診るころには夕方になっていた。その患者はこれまでに特に医学的な問題はなかったと彼に言った。タバコも飲酒もせず、何の薬も飲んでいなかった。彼はヘルニアの手術を2回受けていた。一回が3年前、もう一回はその週の始めだった。そして、彼はこの二日間持続的に吃逆を起こしていた。Ferrante 氏はその他に何か症状はないか訪ねた:胸痛、息切れ、発熱、悪寒、それとも咳?いずれもなかった。吃逆以外この患者の体調は問題なかった。理学的検査では特に異常は見られなかった。

2. THE PHYSIOLOGY OF HICCUPS  吃逆の生理学
 正式には singultus(ラテン語で、泣きじゃくる間に息を呑むこと)と呼ばれる吃逆は、横隔膜の反復するけいれん性の収縮であり、素早い吸息を生ずるが、その後喉の不随意的閉鎖によって遮られるものだ。このようなエピソードはほとんどが一時的で良性である。48時間以上続く吃逆が持続性と考えられている。もし一ヶ月以上続く場合、難治性と呼ばれる。最長の吃逆発作は68年間続いた例が記録されている。
 吃逆には多くの原因がある。横隔膜を支配する迷走神経を刺激する可能性のあるものは小さなけいれんを生じ得る。過食のようなありふれた原因から、脳から横隔膜に向かう神経近傍にあるいかなる構造物の膿瘍や腫瘍に至るまで何らかの病変で起こる。手術後の吃逆は、手術中に患者に換気させるのに用いられる管によって生ずるこの神経への軽度の損傷で起こると考えられている。外傷や疾患が原因で起こる脳の特定部位の損傷も吃逆を生じ得る。最も多いのはアルコールであるが、毒素によっても起こりうる。ストレスもそうである。

3. POSSIBLE DIAGNOSIS  考えられる診断
 この患者は他の症状は何もないようであったことから、彼の吃逆は数日前に受けた手術の結果である可能性があると Ferrante 氏は推測した。

4. TREATMENT  治療
 吃逆を止めるためには様々な薬が用いられる。Ferrante 氏はこの患者に対して彼の病院で最も一般的に用いられる薬剤を投与した。Thorazine(クロルプロマジン)と呼ばれる抗精神病薬である。その後すぐに吃逆は止まった。吃逆が再発しなかったので、彼はこの患者を自宅に帰そうとした。しかし、この患者が緊急室を出るや否や吃逆が再び始まった。そして戻ってきた。Ferrante 氏が Thorazine をもう一度注射したところ、この男性は脱力を感じ、フラフラし意識が混濁し始めた。彼は脱力が強く身体をまっすぐに支えることができなくなったため、ストレッチャー上に横になった。その後突然、彼は両足がけいれんし始めるのを感じた。続いて、両手もけいれんした。手足が勝手に動いているように見えた。
 Ferrante 氏はすぐに男性の血圧をチェックした。彼がやってきた時には血圧は正常だった。しかし、その時点では危険なほど低かった。患者の頭部が心臓より低くなるようストレッチャーの高さが変えられた。それによって十分な血液が確実に脳に行くようにするものだ。血圧を上げるため生理食塩水が男性に投与された。Ferrante 氏は当惑した。この患者はなぜ悪くなったのだろうか?

5. DIAGNOSIS NO. 1: SIDE EFFECT OF MEDICATION 診断その1:薬剤の副作用
読者の多くは、ふらつき、低血圧、手足の不随意運動などの症状は Thorazine に良く見られる副作用であると正しく答えていた。しかし治療すべくこの薬剤が投与されるもとになった吃逆を起こした原因は何だったのだろうか?

6. Ferrante 氏は、この患者の手足の不随意運動が、Thorazine や他の抗精神病薬を投与した後に見られる多くは一過性の異常である akathisia(アカシジア:静座不能状態)と呼ばれる症状に一致していることがわかっていた。血圧の低下もまたこの薬剤によく見られる副作用である。しかし、突然の血圧低下はさらに考慮されるべき何か別の疾病経過による深刻な症状である可能性もある。
 この患者の新たな症状が同薬剤によるものであった可能性は十分あるが、Ferrante 氏は感染症の徴候や他のよく見られる異常を探すために血液検査を依頼した。その時、持続性の吃逆を示し、その原因が生命にかかわる病気だった Metropolitan 緊急室の別の2人の患者について聞いたことを思い出した。それは肺塞栓症ともいわれる肺の血栓症である。身体のどこかで形成された血栓が遊離し、血流に乗って肺に詰まったときに生ずるものだ。肺塞栓症は重大な問題となりうる。毎年、米国では30万例が発症する。しばしば見落とされる診断でもある。致死的肺塞栓症67例の研究では、この診断は半数以上で考慮すらされていなかったという。

7. DIAGNOSIS NO. 2: PULMONARY EMBOLISM 診断その2:肺塞栓症
 多くの読者は何かが迷走神経を刺激しているに違いないと考えたが、刺激源が肺塞栓症であると正しく断定していたのは3名だけだった(註:275名以上が回答)。
 1番目の正解は、ロサンゼルスの血液学・腫瘍学を専門とするMichael Benjamin 医師からいただいた。「もちろん、肺塞栓症で難しいことはそれを念頭に置くことです」と、彼は私に言った。「そのためそれを思いつくことが肺塞栓症にとってとても大切なことなのです。彼は恐らくその患者の命を救ったことでしょう」
 2番目の正解はそのちょうど2秒後に、ミシガン州 Ann Arbor の緊急室 の Mark J. Lowell 医師から送られてきた。このケースでどのようにして考えついたかを彼に尋ねたところ彼は笑って次のように答えた。
 「私はすべてが肺塞栓症だと考えています」と、彼は私に話し、彼は肺塞栓症について研究を行ってきたと語った。「皆さんを最もはぐらかそうとするものは何でしょうか?健康な青年男性で胸の中に何か特異なことを起こし得る最悪のものは何でしょう?」

8. 肺塞栓症の診断の困難さはその症状が多彩であり、ありふれたものだということにある。すべてではないがほとんどの患者では息苦しさを感じる。胸痛はよく見られる。動悸も一つの手がかりである。しかしこれらの症状は心筋梗塞を起こしている患者、肺炎や気管支炎にかかっている患者、あるいは肋骨骨折の患者などでも見られるものである。肺塞栓症の検査はCTスキャンの発達に伴って容易となっているが、依然最も高率に見逃される診断の一つである。
 Ferrante 氏は肺塞栓症が癌、妊娠、凝固系の異常、あるいは手術で起こり得ることを知っていた。この患者はちょうど数日前にヘルニア修復手術を受けていた。肺塞栓症の可能性はないだろうか?
 Ferrante 氏はこの患者に息苦しさはなく、最も好発部位である下肢に血栓の存在を示唆する腫れや発赤はなかったのを確認した。それでも彼はチェックのために胸部CTを依頼した。その結果、血栓があったのである。肺塞栓症だったのだ。

9. TREATMENT  治療
 この患者は入院となり、抗凝固療法が開始された。現在の推奨治療では、さらなる肺の血栓を防止するために患者はこの治療を3ヶ月間受けることとなっている。
 Metropolitan Hospital緊急室の Getaw Worku Hassen 医師は、約2年前に1例目を入院させて以来、吃逆を呈し肺塞栓症と診断される患者に関心を示してきた。医学文献の詳細なレビューでも過去わずかに1例しか認められていないが、今のところ Hassen 氏の病院ではこの2年の間にそういった患者が3例見られている。それは偶然のことだろうか?それともこういった症例が実際にこれまで知られている以上に多く見られるということなのだろうか?吃逆は肺塞栓症を示唆し得ると言えるのだろうか?
 Hassen 氏はこの3例をまとめ、論文として投稿した。持続性吃逆の患者において肺塞栓症を考慮することが有用かどうかは時間が経てば明らかになるだろう。ただし本患者では確かに有用だったのである。

しゃっくりの原因としては
心因性(ストレス)のものが多いようであるが、
肺の病気、上部消化管の病気、肝臓の病気、
脳の病気の他、尿毒症や痛風などの代謝性疾患や
アルコール中毒なども挙げられる。
食道、胃、肝臓、甲状腺、肺の癌が原因のこともあり、
存外しゃっくりには重大な病気が潜んでいる可能性がある。
(さすがに肺塞栓症は思いつかなかったが)頻回に起こる
難治なしゃっくりには十分な注意を払う必要がありそうだ。

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