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『UTOPIA 最後の世界大戦』復刻版発売!

2011-08-30 20:50:10 | 藤子不二雄
 待ちに待っていた小学館クリエイティブの『UTOPIA 最後の世界大戦』復刻版が、ようやく発売された。





 箱付きで、中には『UTOPIA 最後の世界大戦』本体及び「UTOPIA読本」、ロボットのペーパークラフトが収められている。
 箱では著者名は「藤子・F・不二雄 藤子不二雄A」と連名表記になっているが、本体では原本通り「足塚不二雄」のままだ。著者名だけではなく、今回の復刻は初版本を元に作られており、カバーがついていることと奥付の検印が印刷になっていることを除けば、ほぼ初版本原本通りだ…と思う。私は、初版本の中身を見たことはないので、「思う」としか言いようがないのだが、初版の原本に限りなく忠実に復刻されているはずだ。
 今までは、『UTOPIA 最後の世界大戦』と言えば、ガラスケースの中に展示されているのを眺めた事しか無かった。私にとっては別世界の存在だったわけで、復刻版とは言え限りなく原本に近い本を手にとって読むことが出来るというのは、まさに夢のようだ。以前の『新寳島』に続き、貴重な復刻を実現してくれた小学館クリエイティブにはただただ感謝してもしきれない。

 今回の復刻は「原本に忠実」なので、最後の一コマと、カップリングで収録されている漫画「覆面団」までもきちんと復刻されている。これらは、いずれも藤子先生の手によらないものなので、これまでの復刻ではカットされていた。特に、最後の一コマは本編の内容を無視していきなり主人公の父(らしき人物。明らかに藤子先生とは絵柄が違うので、本当に主人公の父なのか今ひとつ判断が出来ない)が「科学!!科学…科学 それも必要だ… しかし大自然の理想郷もなくてはね」とか言い出す、明らかに「蛇足」としか思えない内容で、F先生が怒りのあまりこのコマに×印をつけてしまうほどだったと言う。
 その経緯を考えると、おそらくF先生のご存命中には今回のような復刻は不可能だっただろう。今回は、よく藤子プロが許可を出してくれたものだ。
 そして、今まで謎の存在だったカップリング作品「覆面団」だが、当時の漫画としてはこんなものなのだろうと言うしかない。明らかに手塚タッチを意識した絵だが、漫画としての出来は昭和20年代の手塚作品とは比べるべくもない。当時の描き下ろし単行本漫画の中でどの程度の水準なのかはわからないが、当時を知るためのある意味いいサンプルになっていると思う。
 それにしても「覆面団」の作者は、扉絵にも奥付にも作者名を載せてもらえず、現在まで著者不明のままなのだから可哀想だ。自作が『UTOPIA 最後の世界大戦』のオマケ扱いになった事について、作者の思いはどんなものだったのだろうか。

 と、ここまで『UTOPIA 最後の世界大戦』本編については全然語っていない。実のところ、本編は藤子不二雄ランド版で既に読んでいるので、今さら語りにくいと言うのが正直なところだ。強いて言えば、2色刷りになってより原本に近い雰囲気で読めたのはよかった。とは言え、この2色刷りも藤子先生の関与しないところで勝手に着色されたそうなので、コメントしづらい部分ではあるが。


 『UTOPIA 最後の世界大戦』は、藤子・F・不二雄大全集の第3期でも2色刷りで収録されることが決まっているので、とにかく藤子先生の描いた本編だけが読めればいいと言う人は、そちらを待った方が賢明だろう。逆に言えば、今回の復刻版にしかない要素は「初版本の雰囲気」「最後の一コマ」「覆面団」と言うわけで、これらの要素に3,990円を出せるかどうかが問題だ。個人的には、「覆面団」を読んでみたかったし、原本の雰囲気も伝わってきたので、十分満足だ。欲を言えば、綺麗すぎる点に違和感があるが、これは仕方がないところだろう。ともかく、この復刻版に関わった方々には感謝したい。

 と、書いてから思いだしたが、そう言えばロボットのペーパークラフトも初版限定で復刻版にしか付いていないものだった。しかし、これは正直言ってどうでいい。どうせ紙のオマケならポストカードにでもしてくれた方がよかった。ペーパークラフトだと、いつか切り目からバラバラにしてしまいそうで怖い。復刻版の特設ページを見ると、担当者はノリノリだったようだが、やる気が空回りしてしまったのではないだろうか。ペーパークラフトを眺めて、そんなことを思ってしまった。

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4 コメント

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Unknown (U・M)
2011-09-01 23:55:33
確か昨年は水木しげる先生の「恐怖の遊星魔人」
も復刻されましたよね。
これで「新寶島」「UTOPIA」「恐怖の遊星
魔人」の幻の漫画3部作が全て復刻された訳で、
正に小学館クリエイティブには頭が下がるばかり、
そしてもう一生足を向けて寝れないですね!
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まさに、そうですね。 (おおはた)
2011-09-11 22:01:55
 U・Mさんが挙げておられる以外にも、『ジャングル大帝』や『ライオンブックス』の初出版復刻もあり、本当に小学館クリエイティブの復刻ラインナップは素晴らしいと思います。
 今回の『UTOPIA』に関しては、F全集と被っていなければ、さらに注目が集まったのではないでしょうか。その点では、タイミングがいいのか悪いのか、よくわかりません。
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Unknown (白牙)
2011-09-13 00:08:22
覆面団の作者は中島利行。
単品単行本は↓これ。

ttp://ps03.aucfan.com/aucview/yahoo/g94296758/20110203/
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作者判明 (おおはた)
2011-09-17 21:25:56
 貴重な情報、ありがとうございます。中島利行氏は、漫画家としては結構活動されていた方なのですね。
 「覆面団」は、単独でも出ていたのですか。だとすると、なぜ『UTOPIA 最後の世界大戦』の後半にも入れられたのか、不思議です。単に、196ページにするための数あわせなのかも知れませんが。それにしても作者名が一切書かれていないあの扱いはひどすぎます。
 小学館クリエイティブの方で、この情報を把握していなかったのもちょっと意外です。
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