はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

綾辻行人『奇面館の殺人』感想

2012-01-08 21:00:25 | ミステリ
 あけまして、おめでとうございます。ご挨拶が遅くなりましたが、本年も当ブログをよろしくお願いします。


 新年最初の話題は、綾辻行人『奇面館の殺人』(講談社ノベルス)の感想。前作『びっくり館の殺人』以来、実に6年ぶりの「館シリーズ」新作だ。名古屋でも、昨日ようやく店頭に並び、無事に購入することが出来た。その後、帰宅してから一気に読み続けて、本日昼前には読了した。ページ数にして2段組・約400ページでそれなりのボリュームだが、気にせず作品世界に没入することができた。
 ミステリはそれなりに読んでいるが、こういう感覚を味わえる作品は、そうは多くない。その意味で「館シリーズ」は、私にとって特別な作品群だ。そんなシリーズの最新作がついに出たのだから、ゆっくり読めと言う方が無理な注文だ。

 とりあえず、一読しての感想は、「なるほど、こうきたか」と言ったところ。まだ発売から間もないので、ここでは具体的な内容について踏み込んだ記述は可能な限り書かないでおくが、重要なアイテムである「仮面」の使い方については、よかったと思う。登場人物みんなが仮面を付けているという設定を聞いて、誰もが思いつくのは、顔が隠されていることを利用した「入れ替わり」だろう。本作では「同一性の問題」として論じられているが、実のところ、犯人は…。

 ここでは、これ以上は書くまい。久々の「館シリーズ」、十分に楽しめた。綾辻作品でお馴染みの○○トリックももちろんあり、ちゃんと「驚き」を味わうことが出来た。綾辻作品には「気持ちよく騙される」快感を求めているので、その点では満足だ。館の主人・影山逸史のキャラクターについては、もう少し踏み込んで描いたら、もっと面白くなったのではと思わないでもないが、それを過剰に行うと『暗黒館の殺人』の二の舞にもなりかねない。今回は、作品の分量はちょうどいいところに収まったと思う。
 ただ、『十角館の殺人』初読時のレベルでの驚きがあったかとなると、あれには及ばないと言うのが正直な感想だ。長年、綾辻作品を読んでいると、○○トリックに対して身構えて読むから、その分どうしても「驚き」は弱くなってしまう。
 思いかえすと、『十角館の殺人』は、中学生になってミステリから離れていた頃、母の本をたまたま読んで、はまってしまったのだった。あの頃は若かったので一晩で一気に読んで、見事なまでに騙されてしまい、結末近くのあの「一言」には大きな衝撃を受けた。私が、新本格作品を主としてミステリを本格的に読むようになったのは、『十角館の殺人』のおかげと言っていい。
 その後、「館シリーズ」は、ほぼ刊行順に読んで、追い続けてきた。『水車館の殺人』『迷路館の殺人』『人形館の殺人』『時計館の殺人』『黒猫館の殺人』と、それぞれトリックの中身は異なるが、どれもみな私に「驚き」を与えてくれた作品群だ。

 『黒猫館』の次は『暗黒館の殺人』だが、これは残念な作品だった。感想については発売当時に書いているので、そちらをご覧いただきたい。今更だが、『暗黒館の殺人』は、作品の長さに対して「驚き」が弱かった。気合いを入れて「暗黒館」内部の世界を描き込んでいるのはわかっても、話が先に進まない事に対する苛立ちの方が大きくなって、結末まで読んでも「なんだ、そんなオチか」と思ってしまった。
 そして、その次は『びっくり館の殺人』。唯一、初刊が講談社ノベルスでなく「ミステリーランド」だった作品だが、これは話が短いのはともかくとして、「驚き」が過去作と比べて一番弱く感じて、その点では『暗黒館』よりも更に残念だった。伏線めいた描写がいくつか放置気味なのも気になった。
 この二作を読んで、もう「館シリーズ」はダメなのかと思った時期もあった。それだけに、今回の『奇面館の殺人』が、原点回帰した感じで楽しめたのは嬉しかった。


 『奇面館の殺人』の名前は、かなり前から予告されていたが、現時点で次の「館」がどんなものになるのかはわからない。次はシリーズ完結作となるだけに、凝りに凝った「館」を期待したい。今度は、三年くらいで出たらいいなあ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。