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十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

「阿蘇」12月号

2021-12-04 | Weblog
鉄柵に微弱電流曼珠沙華
種種を活けて一間の子規忌かな
鬼の子の蓑千年の御神木
遠来の友の如くに初もみぢ

*「阿蘇」12月号、岩岡中正選

【選評】 知に走らずどこまでも感覚を研ぎ澄まして得た一句。まるで「微弱電流」が走っているような赤の連続の曼珠沙華。新しい感覚による新しい曼珠沙華の一句である。(中正)

コロナ禍にあっても、マスクなしで出かけることが出来る自然が、すぐそばにあるということは、本当に僥倖であった。5000歩を目標に歩く日日の暮しに飽きることがなかったのも、実に俳句のお蔭。感謝。(Midori)

初しぐれ

2021-11-23 | Weblog
日々の生活の中で、「祈る」ことを自然に行えるようになったのは、とても嬉しいことである。心からそう思う。今までは、祈ることにどこかテレのようなものがあったと思うからだ。私も無駄に歳を重ねてきたわけではなさそうだ。(Midori)

祈る手の長き祈りや初しぐれ
父母に祈れば小春めく心

「阿蘇」11月号

2021-11-08 | Weblog
街角の時間の止まる原爆忌
母許に素足で立てる厨かな
蹠に旅のほてりや遠花火
太陽に跪いては捥ぐトマト

*「阿蘇」11月号、岩岡中正選

「阿蘇」10月号

2021-10-06 | Weblog
夜濯の小さきは月に掛けにけり
神在す山はむらさき不如帰
青嶺また青嶺在来線の旅
湖風に捩花のねぢ弛びをり

【選評】 「夜濯」とは、いい季語。一日の終りの安らぎがあって、大きな洗濯は明朝としても、さしあたり小さいものは夜濯で済ましておこう。この句の良さは、その安堵感と己へのいたわりが、夜濯のものを「月に掛け」た、ふとした心の跳躍になったところにある。そこに「生活の詩」がある。俳句は「日常の詩」だと、あらためて思わせる一句。(中正)

過分な選評に恐縮至極であるが、自分でも思っても見なかったことに、気づかされる主宰の言葉である。「生活の詩」、「日常の詩」は、俳句の最も得意とするところであった。(Midori)

曼珠沙華

2021-09-26 | Weblog


今年もまた、約束のように曼珠沙華が咲いています。一面に広がる稲穂は色づきはじめ、まもなく収穫の時を迎えます。人間よりも猪の数のほうが多い(?)という地域もあって、稲田の周囲には電流柵が張りめぐらされています。貴重な作物を守るためには仕方ありません。(Midori)

   鉄柵に微弱電流曼珠沙華   *中正選(通信句会)

「阿蘇」9月号

2021-09-02 | Weblog
でで虫や雨脚太き肥後の国
豆飯の豆ふつくらとエメラルド
遠嶺々に星の生まるる植田村
竹皮を脱ぎたる夜の月あをし

*「阿蘇」9月号、岩岡中正選

【選評】 「でで虫」の小さないのちと、「肥後の国」らしい力強い「雨脚」。でで虫ひとつでひとつの物語を描き切ったのである。(中正)

わが家のすぐ近くの上床山を登る日々もすでに2年目である。山裾に広がっていた植田もいまでは穂を垂れるほどの青田である。竹林もやがて竹の春をむかえる。自粛の日々に出会えた小さな命にいつも励まされる。(Midori)

「阿蘇」8月号

2021-08-12 | Weblog
のどけしや亀万年の頸のばす
ばら色の石鹸つかふ五月かな
語らねば心かよはぬ春の暮
夏場所や人類はいま土俵際

*「阿蘇」8月号、岩岡中正選

東京オリンピックが終り、8月24日からパラリンピックが始まる。テレビ画面では窺い知れないたくさんの課題も多かったはずだが、出場選手からは、感謝という言葉が多く語られた。一方で、コロナの感染爆発。人類が戦うべき相手はなかなかしぶとい!(Midori)

翡翠

2021-07-14 | Weblog
 男女の区別があるのが当たり前の時代に生れ、時にそれゆえの不合理な扱いを受けたことも多々あるが、近年は、ジェンダーフリーの時代。かなり自由な選択が出来るようになったとは言え、いまだ性別を問われることは多い。行政に提出する書類や、問診票などなど。
 塚本はつ歌さんの著書、『世界から守ってくれる世界』は、そんな性的マインリティを取り扱った作品。男か女か?の単純な選択でもなかった。(Midori)

翡翠の残像となる杭の先    *中正選(探勝会)

「阿蘇」7月号

2021-07-07 | Weblog
長閑けしやぷかと息吐く鯉の口
亀鳴くや水面に消ゆるきのふけふ
鶯のこゑに弾める地球かな
のどけしや一重まぶたの地蔵さま

*「阿蘇」7月号、岩岡中正選

句会の兼題、「長閑」で詠んだ句が、2句。世の中は、緊急事態宣言が出される中、人口9千人の小さな町は、「長閑」そのもの!近くの川には、亀が両手両足を拡げて懸命に泳いでいるし、鯉を釣っているのか、釣り人の姿も見える。そんな春爛漫の頃の素朴な風景を詠んだ4句である。(Midori)

初音

2021-06-21 | Weblog
一片の雲のほぐるる初音かな
木々芽吹く山の蔵せる水の音
朧より生れ朧の世にひとり
また別の風を捉へて揚雲雀

*「阿蘇」6月号、山下しげ人選   ☆2席   

【選評】 鶯の声はいかにも伸びやかです。どんな固いものでも柔らげてくれます。それまで、冬を引きずり堅さの残る雲も作者の気持も「初音」の一声で解かれたように感じられたのです。初音の特質が十分に活かされた一句です。(しげ人)

鶯の初音は、殊のほか嬉しいものだが、夏を告げる時鳥の初音もまた格別だ。ところが、今年、時鳥が鳴いたのは、例年より1か月も遅かった。生態の変化か、天変地異か?と流石に心配になって来た頃、ようやく聞かれた時鳥の初音であった。昨日はや初蝉が鳴いていた。(MIdori)

植田

2021-06-10 | Weblog
何度目かの通信句会となったが、今回の兼題は、「田植」。田植と言っても、今は田植機が整然と植えてゆくだけ。いつの間にか、代田は植田となって、早苗が風に戦いでいる様を見るのは、嬉しいものだ。しかし、こんな風景もいつかは見られなくなるのではないかと思うのは、後継者不足の問題があるからだ。日本の原風景を作っているのは、誰よりも生産者なのだと改めて実感するこの頃である。(Midori)

   遠嶺々に星の生まるる植田村

「阿蘇「6月号 Ⅰ

2021-06-03 | Weblog
亀鳴くや心許なき星に棲み
いちまいの天地翳れる涅槃絵図
木々わたる風はさみどり巣立鳥
初花のひかり弾める水面かな

*「阿蘇」6月号、岩岡中正選

いつもの散歩コースである墨擦川には、5、6匹の亀が棲んでいる。お天気の良い日には、ぷかりと浮かび、短い脚で懸命に泳いでいる様は、平和そのもの。私まで幸せな気持ちになれる。(Midori)


「阿蘇」5月号 Ⅲ

2021-05-20 | Weblog
うたたねの旅は巴里まで日脚伸ぶ     えとう美冴

「うたたねの旅」という措辞がとても新鮮!「旅」と言っても、その旅は一時間も満たない旅である。「巴里まで」という日常を超えた想像が、春への期待に繋がって、楽しい一句である。(Midori)

「阿蘇」5月号 Ⅱ

2021-05-15 | Weblog
園を歩す春の女神に手を引かれ   矢田 節

「春の女神」と言えば、佐保姫。美しい春の女神に手を引かれれば、日頃の疲れや痛みも忘れ、どこまでも歩いていけそうだ。物語の一場面を思わせる美しくて、どこか儚さを感じさせる句。 (Midori)

「阿蘇」5月号

2021-05-05 | Weblog
乾坤の水音ひとつづつ凍る
月の夜のきらりと刃めく氷柱
手鏡の中の余寒を拭ひけり
春寒の縫針ちくと指を刺す

*「阿蘇」5月号、岩岡中正選

「凍る」「氷柱」「余寒」「春寒し」、どれも兼題から創作した句である。兼題の利点は、偏りがちな季語や素材が広がる事である。お蔭で思いがけない作品もできたかなとも思う。初めて、マスクの手づくりに挑戦したが、手縫いである。マスクの出来はさておき、一句手にしたことは大きな収穫♪。(Midori)