トーディのドゥオーモは、街の中心であるポポロ広場に面して建っています。
オルヴィエート、スポレートと並び、ウンブリアの3大ドゥオーモとされるここトーディのドゥオーモは、
まわりの建物より一段と高い場所に建てられ、その権威を誇示しているかのようです。
ファサードはシンプルな長方形で、
シンプルなだけに大きなバラ窓が引き立っています。
華やかなオルヴィエート、繊細なスポレートに対して、
質実剛健のトーディといった雰囲気です。
内部も簡素で、天井は木組みがむき出しになっていますが、
正面入り口の上には、ダ・ファエンツァの手による
「最後の審判」が壁面いっぱいに描かれています。
淡い色彩で描かれたこのフレスコ画は、
バラ窓から差し込む光との相乗効果で、
いっそう神秘的な雰囲気をかもし出しています。
内部の見学を終えて外に出ると、時間は正午近くなっていました。
広場から続く階段には、何人かの人が腰かけて一息ついています。
私たちも同じように階段に腰かけ、一息ついていたそのとき、ちょうど鐘楼から鐘の音が聞こえてきました。
その音を聞いて、私たちは思わず笑ってしまいました。なんと表現したらいいのでしょうか、
今までに聞いたこともない間抜けな音色で、おまけに音痴?なのです。
イタリアには“カンパニリズモ”という言葉があります。“郷土愛”と訳すことの多い言葉ですが、
もともとは「地元の教会の鐘の聞こえる場所が自分の故郷だ」というような意味の言葉です。
トーディの人々はきっと、このユニークな鐘の音を聞くたびに、
自分たちのアイデンティティを強く意識しているのでしょう。
ドゥオーモの階段からの眺め(ポポロ広場)
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