JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

毒か薬か

2008年07月18日 | a-c

先日Mさんのお店を手伝っていると、バイトの女の子が
「バブさん、あれなんとかしてください。」
何かと思えば、灯りに誘われて店に飛び込んできたカミキリムシです。
この時期になると虫の発生は仕方のないこと、そっと捕まえて、
「ほら」ってやったら、「キャー」って
「お客さんに聞こえるような声出すんじゃないよ」
若い女の子にそんなことをする私が悪いんですけどね(笑)

ところで、小さい子供って虫関係をあまり苦手としませんよねぇ。
いくつくらいから「虫が苦手」ってヤツが増えてくるんでしょう?
まぁ、女の子の場合、そこに可愛さを演出するというしたたかさも、かいま見られたりもするのですが・・・・
かく言う私も、いつの間にかあまり虫は得意じゃなくなっています。クワガタやカブトムシ、テントウムシやセミ、トンボ、バッタくらいまでは今でもナンチャナイですが、毛虫やガといった類はどうも・・・そうそうゴキちゃんもいけません。
「上京して始めて見た、音をたてて飛ぶ巨大ゴキブリの姿、あれのせいだな」
と勝手に思ってはいますが、それだけが原因じゃないでしょうね。

明日からこのあたりの子供たちも夏休みが始まります。昔、そんなことやりぁしないのに『昆虫採集セット』が欲しい一心で、「今年は昆虫採集をやる!」なんて言ったことありませんでした?
あの注射器、それに赤と緑の薬品、何故か私には心引かれる存在でした。


ネット上で公開されていた画像を拝借しました。

今はもう販売していないんでしょうね。よく考えると注射器はいっぱしの針が付いていて危ないっちゃ危なかったですもん。薬はたしかメタノールとホルマリンだったはずです。
私など昆虫を捕まえる前に、花やら木やらにあの薬品を全部注射しちゃって、本来の目的には使わずじまいってなことありましたし、(笑)
父が釣ってきた鮒にあの薬品を注射して、たしか学研の科学かなにかの付録に付いてきた『解剖セット』で解剖したなんて、今思うとじつに残酷なことをした覚えもあります。
赤と緑の薬品、注射器を手にすると、何だか「禁断の毒薬を手に入れた」的高揚があったのだと思います。それでも、あの頃の子供は「他人に絶対にやってはいけないこと」を理解していたのでしょう、大きな事故や事件につながったという話は、たしか無かったですよね。

『毒薬』といえば、
「埼玉保険金殺人事件」の八木被告の死刑が確定したそうですが、あんな裁判の判決を裁判員として下せるかどうか、ちと不安にも思いましたし、「毒殺の物証というのは現代でもなかなか難しいものなんだなぁ」とも感じました。
考えてみれば昔から『毒殺』というのは、謎の多い殺人でありましたし、それ故にいろんな嘘か誠か分からないような話も多くありましたよね。
そうそう、17世紀のヨーロッパには、「和歌山のヒ素入りカレー事件なんて目じゃないわ」ってな、ブランヴィリエ公爵夫人、マリー・マルグリット・ドーブレという恐ろしい毒殺魔がおりましたっけ、ご存じですか?

もともとかなりの好色だったというマリーは、夫ブランヴィリエ侯が外に女を作って滅多に家へ帰らなかったことを良いことに(外に女を作る旦那も旦那ですけど)、日ごと情事を繰り返していたそうで、そのうちそんな男の一人、騎兵隊将校のサント・クロワに熱を上げ、二人とも大好きな賭博にまで通うようになります。
当然の結果、借金は雪だるま式に増え、にっちもさっちもいかなくなりますわな。二人は悩みました、「なんとか金を作らにゃ、好きな博打も打てなくなるぜぇい」てんで、考えついたのが司法官である父の殺人、つまり遺産をせしめようというもの。
ただし、いかにこの時代でも、元気な人が突然倒れて死ねば怪しまれるのは必定。そこで毒物を徐々に与えて自然死に見せかけようと計画したわけです。(なんか、現代の事件とよく似てますけど)
ところが、何を、どの程度、何回に分けて与えたらよいものかがわからない。
いやはや、女性は怖いですねぇ
「ならば、あたしが研究するわ」てんで、マリーが行った研究が凄かった。

「具合はいかが?」
慈善病院に入院している貧しい病人をちょくちょく見舞う、心優しい高貴な婦人がおりました。
「このお菓子を食べて元気になってね」
いつも優しくいたわってくれるその女性こそ、マリーその人であります。
彼女の持ってくる見舞い品には、密かに『ヒ素』が(シャレじゃありませんよ)混じっていたのです。
マリーは、誰がどの程度の『ヒ素いり食品』を食べると、どうなって、いつ死んで、死後の状態はどうか・・・・・・幾人もの患者を利用して研究したんですねぇ
これで彼女は『ヒ素のスペシャリスト』となったわけです。

スペシャリストは、すぐに計画を実行へと移しました。
父の面倒を見るふりをして、少しずつ『ヒ素』を与えていく、案の定父は弱り、死んでいきました。周りの人達も老衰だろうと何の疑いも持ちません。
「やったわ!」
ところが、目的の遺産はほとんどが二人の弟のところへ
「へたこいたぁ~~~」
しかし、そこは『ヒ素のスペシャリスト』、こんどはサント・クロワの従事を弟たちの所へもぐり込ませ、二人とも毒殺してしまいます。
短期間に身内三人を亡くしたマリーは、哀しみを装い、
「今度こそ、間違いなくやったわ、またサント・クロワと、あれしたりこれしたり・・・ムフフ」てなもんですわな。

じつは、ここで終わっていれば、この毒殺事件は『完全犯罪』に終わったのであります。
ところが『ヒ素のスペシャリスト』は『ヒ素遊び』を覚えてしまったんですねぇ
気に入らない女中を殺し、頭が悪く器量も悪い長女も、誘惑ししておいて飽きが来た青年も、ついには夫ブランヴィリエ侯まで・・・・・
ところが、女の怖さにやっと気付いたんでしょうね、恋人のサント・クロワがブランヴィリエ侯に解毒剤を与えます。
ある日、マリーの『毒物実験室』の近くでサント・クロワが事故死してしまいます。ここから『ヒ素のスペシャリスト』の存在が徐々に明らかになっていくわけでして、

結局最後はマリーに疑いがかかり、取り調べ(というよりは、当時のヨーロッパですから拷問ですね。話によれば、裸にされ、足を開かされ、男達の目にさらされたり、水槽いっぱいの水を飲まされたりと凄いものだったらしいです。)に耐えかねたマリーが全てを自白、パリのグレーヴ広場で処刑されたのでありますが、処刑台で彼女は
「みんながしたい放題しているのに、どうして私だけが罪を受けなければならないの?」
と言ったとか言わなかったとか。

(この話を基に書かれたジョン・ディクスン・カーの『火刑法廷』なんていう小説がありましたよね。)


まっ、今も昔も、身勝手な考えが大きな罪を生むのだということでしょう。それにしても恐ろしい女性だぁ。

あらら、『昆虫採集セット』の話が、何故か『ブランヴィリエ公爵夫人物語』にまでなってしまって、長文になっちゃいました。(笑)
ともかく、ちょっと危ない『昆虫採集セット』も、『ダガーナイフ』も、『毒物』さえも、所持する人の良心こそが頼りであって、どんどん規制が増えるということは、その頼りが消えつつある証でもあるのでしょう。
毒だって使い方一つで薬になるっていうのにねぇ、あ~あ、いやだいやだ。

さて、今日の一枚は、どさくさにまぎれてドン・チェリーです。(笑)
べルリン・ジャズ・フェスティバルでのライブ盤です。
「前衛トランペットの雄、ドン・チェリーがヨーロッパを代表するフリー・ミュージシャンとニュー・ジャズ・サウンドに新たなパルスを生み出した歴史的名盤」
てな紹介を何かで読みましたが、よく分からん説明ですよね。
ともかく「いろんな民族音楽のリズムとジャズの融合」が一つのテーマであるのでしょう。
でもねぇ、さすがの私も「これがジャズか?」と訊かれると困るような感じもあります。いやいや「これがジャズ以外なら何なんだ?」と居直るかもしれませんけど(笑)
つまり、ジャズだの何だのと考える時点で、このアルバムのコンセプトからは外れているということなのかもしれません。

メンバーと使われている楽器の多さを見て「こりゃダメだ」と思われる方は、無理して聴かなくとも良いでしょう。
ただ「ジャズだの民族音楽だのそういったことにこだわらず、サラッと行ってみよう!」という方は、ぜひともお聴きになってみて下さい。怪しい魅力があるかも知れませんよ。
さて、この一枚は、あなたにとって『毒』か『薬』か

ちなみに「ガメランという楽器は何なんじゃいな」と思われた方。
インドネシアはバリの踊りの後ろで叩いている打楽器。でかくて豪華な「ガムラン」(インドネシア語の「ガムル=たたく」が語源)の兼価版として作られた楽器だそうで(他にも説はあるらしい)、ムチャクチャ音の良い竹琴のちっちゃいヤツ、もしくは、ともかくインドネシアで使われている小さめの打楽器だと思えばいいのかなぁ???

ETERNAL RHYTHM / DON CHERRY
1968年11月11,12日録音
DON CHERRY(cor,fl,gamelan,perc) ALBERT MANGELSDORFF(tb) EJE THELIN(tb) BERNT ROSENGREN(ts,oboe,cl,fl) SONNY SHARROCK(g) KARL BERGER(vib,p,perc) JOACHIM KUHN(p) ARILD ANDERSEN(b) JACQUES THOLLOT(ds,gamelan,perc)

1.ETERNAL RHYTHM PART
2.ETERNAL RHYTHM PART

おまけ、
昨晩の『我が儀式』の記事に、同僚から「コルトレーンとセロリには何か関係があるの?」との質問を受けました。
まったく関係ありません。
この儀式を真面目に毎年行っていた高校時代、私は下宿生活の身でありまして、1.近くにあったお店が八百屋だった。2.お金がもったいなかった。以上の理由で、セロリになっただけであります。



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2 コメント

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懐かしい (るな)
2008-07-18 22:06:06
男兄弟なので、子供の頃、家にも何セットもありました。
今考えたら、子供のおもちゃ?にしたら危ないものですよね。

上の娘は蝶類が苦手。蛾がアパートの部屋に入り込んだと、夜中に下の娘のところに泣きながら電話がはいったことがありました。
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るなさん (バブ)
2008-07-19 13:18:17
やっぱりありましたか。
そうですよね、男の子なら一度は手にした代物だと思います。

娘さんもそうですが、女の子が虫を見て「キャー」っていうのは、まぁ可愛いとして、
どうしてその始末を男がしなくちゃいけないのか。
ここにはちょっと不満がありますね(笑)

だって、我が家でゴキブリがもし出たら、私が処理係ですよ。ずるいよなぁ。
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