ガリバー通信

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GNHの国ブータン。

2011年11月20日 | 世界の問題
 世界でGNHと称される、国民総幸福度を大切にする国として有名な、アジアの小さな山の中の国「ブータン」の若き国王夫妻が、新婚旅行をかねて日本を訪問されていて、昨日は雨の京都を訪ねられて、金閣寺をはじめとする京都で過ごされ、東日本大震災と大津波でほとんどの松が倒れた岩手県の一本松で有名になった倒木を、京都の学生たちが大きな木彫の仏像彫刻に作り上げていて、その過程での「ノミ」を国王ならびにお后がいれられるというい一幕もあり、仲睦まじいお二人に多くの人が心を癒されたと思うのである。

 この「ブータン」という国は、インドと中国という人口が世界の一位、二位を有する大国と国境を隔てる、日本の九州程度の小さな国土に、何と70万人ほどの国民が生活するという小さな国で、しかも北部はヒマラヤ山脈に連なる山々が占めるという海抜7千メートルにも及ぶ地域が占めていて、平地は少なくほとんど農業と観光で成り立っている国のようである。

 そうした決して恵まれた資源や工業製品などの輸出などで、経済が潤っている国ではないのだけれど、タイトルにも題した「GNH」という、GNP(国民総生産)とは全く違う尺度で、とっても「幸せ」を感じる国民が多い国として世界に名をとどろかせているというから、不思議な国でもある。

 その小さな国の若き国王夫妻、31歳の国王と21歳のお后が、先月に結婚式を挙げられたばかりでの初のご旅行先として「日本」を選ばれて、特にこの春に起きた東日本大震災の被災地、東北への訪問を希望されての来日だったと聞くと、はなばた恐縮というか、少しびっくりするくらいの「親日家」としての国王夫妻だけではない、ブータンの人々の「日本への思い」に感激すら覚えるし、大震災に関しては1億ドルの義援金だけでなく、国をあげての震災被災者への追悼の儀式をされたりと、もはや感動以外の何物でもないのである。

 日本は戦後の高度経済成長期から1990年代に至るバブル経済絶頂期を経て、ここ20年ほどは「経済混乱期」の如く語られたりしているし、TPP交渉への参加表明だけでなく、「円高」「雇用の低迷」「産業基盤の海外への流出」など、資本主義経済下の多種多様な矛盾が、ここ数年露呈してきている様子で、毎年ごとに首相が変るという政治的不安定さ、国民の政治への信頼が著しく低下していると思われる昨今ではあるが、ブータンでは国民の94%が「幸せである」と自認しているという、経済だけでは幸せ度は計れないことを立証している国と言ってもいい国があるのである。

 国民総幸福量は「Gross National Happiess」、がGNHであり、物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを尺度に入れた「幸福度」を表す考え方であり、ブータンの前国王がGNPに代わる概念として提唱したもので、現在ブータン王国では、GNHの増大を国の開発政策の理念として掲げ、憲法にも明記しているとされているのである。

 世界的な経済不況の中で、日本ならびに日本国民の多くは、閉塞感に苛まれていたりして、常にいつも「景気回復」を願っているといっても過言ではない状況であるが、ブータンでは平均月収は、日本円で2万円程度ではあるが、個人が幸せを感じることが出来る環境づくりを国が目指していて、「幸せ」と感じる国民が9割以上で、イギリスのレスター大学の社会心理学者、エイドリアン・ホワイトによって作成された「国別幸福度地図」では、①デンマーク、②スイス、③オーストリア、④アイスランド、⑤バハマ、⑥フィンランド、⑦スウェーデンについで、⑧ブータンとなっていて、以下⑨ブルネイ、⑩カナダと続き、日本は何と90位にランクされ、アメリカ23位、ドイツ35位、イギリス41位、フランス62位、中国が82位とされている。

 ブータンでは、2年ごとに約8千人もの国民に対し、一人当たり5時間に及ぶ聞き取り調査を実施していて、GNHは、①心理的幸福、②健康、③教育、④文化、⑤環境、⑥コミュニティ、⑦良い統治、⑧生活水準、⑨自分の時間の使い方、の9つの構成要素について質問されていて、特に心理的幸福と言うGDPでは計れないものに対しては、正の感情として①寛容、②満足、③慈愛、そして負の感情としての①怒り、②不満、③嫉妬を抱いた頻度を地域別にも聞いて、国民の感情を地図上で表すという手法もとって、怒りや慈愛に満ちている地域などが一目でわかる様にしているという。

 ブータンの国立研究所所長は、GNHについて、「経済成長率が高い国や医療が高度な国、消費や所得が多い国の人々が本当に幸せだろうか」、「先進国でうつ病に悩む人が多いのは何故か」、「地球環境を破壊しながら、成長を遂げて、豊かな社会は訪れるのか」「他者とのつながり、自由な時間、自然とのふれあいは、人間が安心して暮らす中で欠かせない要素だ」と語り、金融危機の中、GNHに基づく政策への関心が一段と高まっていて、GDPの巨大な幻想に気づく時が来ているのではないかと言うのである。

 いずれにせよ、人口70万人のブータンの理想と少子高齢化が著しい現代の日本を同じ尺度で「幸福か?」と問うのには無理もあるのだが、若い国王新婚夫妻の表情や物腰をメディアを通じて見聞きしている限りでは、とっても「幸せ度」の高い国の国王としての雰囲気と国民の絶大な信頼と支持があるという実際はうなづける感じてある。

 
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