ガリバー通信

「自然・いのち・元気」をモットーに「ガリバー」が綴る、出逢い・自然・子ども・音楽・旅・料理・野球・政治・京田辺など。

「阪急電車」

2011年11月17日 | 地域の話題
 ひょんなことから、表題の映画「阪急電車」のDVDをレンタルしてきて見たのであった。

めったに自宅のテレビで、レンタルしたDVDを観たり、録画しておいてテレビ番組や映画を観たりすることはないのだが、今回は「芦田愛菜ちゃん」のかわいさに魅せられて、この映画「阪急電車」を観ることとなったのである。

 全くストーリーや映画の脚本の予想もしないままに観たものだから、突然始まったドラマが結婚を約束していた中谷美紀が演ずる女性が、彼氏が別な女性を妊娠させて、その彼女と結婚を宣告するという、とんでもない場面から始まり、彼女は怒り心頭したのだが、結婚式に出席することを条件に、やむ終えず結婚の解消を了承するというくだりがファーストシーンであった。

 中谷美紀が白い花嫁の様なドレスに身を包んで、いやみたらたらで元彼と新婦との結婚式に参列し、あまりにも目立つ衣装のために、新婦から濃い色のショールを少しでも纏ってほしいとの申し出が披露宴中にだされたことから、途中退席し阪急電車に披露宴帰りの目立つ衣装のまま乗るという、非日常的ドラマが始まった。

 原作は、幻冬社文庫から出ている、有川浩氏の同名小説だそうで阪急電車今津線と呼ばれる、宝塚から西宮北口間の往路と復路の約15分間を基本に、物語はいろんな人生の日常が交錯して進んでいくのであった。

 芦田愛菜ちゃん演ずる小学生女児は、おばあちゃんである宮本信子さんと共に阪急電車を乗り降りし、「犬を飼ってほしい」とねだっているのだが、祖母には若い頃の「飼い犬との苦い思い出」があって、なかなか承諾が得られないのであった。

 戸田恵梨香が演ずる女子大生と、すぐに切れる彼氏、また南果歩演ずる子どもの同じ学校の奥さんたちの付き合いでの食事会やお出かけでの、車内での大騒ぎ、また地元関西学院大学の社会学部の同級生同士の出会いと恋、同級生からのいじめに合っている孤独な小学6年生の女の子と、様々な日常に潜む悩みや気になることが、何らかの糸で絡んでいる様に交錯しているのである。

 決して「阪急電車」に限らないのだが、見た目や外見では全く予想も出来ない様な「出会い」や「困ったこと」がその場面、場面に潜んでいたりするのは当然と言えば当然なのだが、そこは小説であり、脚本で何とでもなるものなのであろう。


 特に、南果歩が演ずる普通の奥さんが、子どもの学校の保護者同士というつながりで、賑やかなおばさんの付き合いに振り回されるシーンは印象的で、後半部分で宮本信子が演ずるおばあさんが、この車内で我が物顔で大声を出しておしゃべりし笑うグループの「大阪のおばさん」たちに注意を促す場面、つまり「迷惑をかけるな」という説教をするのだが、実際はこんな場に遭遇しても大半の乗客は「観て観ぬふり」をしてしまっている実態があるので、なんとも「よく言ってくれた」と溜飲を飲む心地になった。

 日常に潜んでいる非日常なのか、それとも非日常的日常なのかは定かではないが、たぶんに阪急電車ならずとも、誰もが「ヨソイキ」の顔をして乗っている電車の車内やプラットホームで、一人ひとりの心の中や、その前後に生じている出来事を、通りすがりの他人が関わったり、口を出すことは非常に稀なことだと思われるのだが、やはり人生の日々は、そうした隠れた日常の悩みや気になることに独り悩んでいたりするものなのだろう。

 映画としての「阪急電車」は、年寄り、若者、中年そして子どもたちの生活の少しを切り取っただけではあるが、その日常に、出来うれば他人がアドバイスできたり、励ましの笑顔を贈るだけでも、「変われたり」、「前進できる」と思える「きっかけ」が生まれるのではないかとの「希望」や「期待」が想像できたのであった。

 大阪を中心とする関西圏では、この映画の題材となった「阪急」をはじめとして、「阪神」、「近鉄」、「京阪」、「南海」などの私鉄電車が走っていて、それぞれの私鉄沿線に住む人たちや住宅地の人柄や人間性の違いなどを、面白可笑しく比較する場合があるのだが、映画「阪急電車」は、そんな庶民の「阪急電車」のイメージとはどうだったのかと言えば、「あんな賑やかなおばさんたち」は、阪急沿線には「いいへんで!」というのが、素直な感想であった。

 ともかく、現代社会が携帯やパソコンなどを通しての顔の見えないツールや情報で動いているのではなくて、生身の人間同士が出会って、話をし、理解したり思いやったりすることのできる、まさに人間性あふれる関係で成り立っているということを、改めて感じさせてくれる映画であったのではないかと思うのである。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする