A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私の地下ジャズ愛好癖】トルコ発、爆裂即興ドラムンサックス『KASTENFAUL カステンファウル』と『KOBRA コブラ』

2018年07月11日 01時09分21秒 | 素晴らしき変態音楽


ドラムとサックスのデュオは即興ジャズの演奏形態の中で最も単純で最も鋭利なバンド編成だと思う。ロックで言えばハーフ・ジャパニーズ、レッド・クレイオラ、ホワイト・ストライプス、後期チャットモンチー、TADZIO等ドラム+ギターのバンドを思わせるが、サックスは楽器であると共にヴォーカルでもある点で、それらよりも徹底したミニマリズムとストイシズムを貫いている。筆者の好きなドラムンサックス編成は、マックス・ローチ+アーチー・シェップ、ハン・ベニンク+ペーター・ブロッツマン、豊住芳三郎+阿部薫、ウィーゼル・ウォルター+クリス・ピッツィオコス、さらにはSAX RUINSなど枚挙に暇はないが、個人的偏愛度で言えばラシッド・アリ+フランク・ロウの『デュオ・エクスチェンジ』にとどめを刺す。1943年テネシー州メンフィス生まれのテナー・サックス奏者フランク・ロウの実質的なデビュー作と言える本作は、1933年生まれのドラマー、ラシッド・アリと丁々発止のインプロヴィゼーションを繰り広げるハードコアジャズ史に輝く爆裂作である。

Rashied Ali / Frank Lowe 『Duo Exchange』
(Survival Records ‎– SR 101 / 1973)


Kastenfaul / カステンファウル
そんなドラムンサックスの系譜に新しいバンドが加わった。トルコ・イスタンブールで活動する『KASTENFAUL/カステンファウル』である。今年4月初頭ブログ『あうとわ〜ど・ばうんど』のJOE氏のツイートで知ってBandcampで聴いてみたところ、かなり硬派のハードコアジャズ。メンバー写真もバイオもないトルコ発の謎のプロジェクトに魅惑された。さっそく問い合わせフォームで連絡を取ってメンバーとコンタクトすることが出来た。

https://kastenfaul.bandcamp.com/

《Biography》
Kastenfaul / カステンファウル:
Ali Onur Olgun / アリ・オヌル・オーグン : tenor saxophone
Ozan Aktuna / オザン・アクトゥナ : drums

二人組フリー・インプロヴィゼーション・バンド。それぞれ異なるジャンルの異なるグループで活動していたが、5年前からデュオとして一緒に演奏を始め、2018年本格的に作品を出版しツアーをスタート。Bandcampで2作のEPをリリース、イスタブールを中心にライヴ活動を行っている。バンド名は「doing a faul (false) deliberately=意図的な虚偽」という意味。

《Discography》
KASTENFAUL『-』
2018.3.29 release


1. 7m1 04:49
2. 7m2 02:28

深入りバーヴの中から立ち上がるサックスとドラム。鳥と木々が戯れるように絡み合い、飛び立ち、取り残され、木霊し睦み合う。循環呼吸で狭い音域を蛇行するフレーズを紡ぐサックスは、倍音に震える音波を放ち、地べたを転がるドラムのロールと抜きつ抜かれつの鬼ごっこに興ずる。

KASTENFAUL『*』
2018.6.26 release


1. YT1 03:47
2. YT2 05:00

3ヶ月ぶりの第二弾EPで、サックスは一ヵ所に座り込んで単音のロングトーンで、時に拉げ時にひっくり返りながら叫び続けることを諦めない。細かいロールで応えるドラムの慈愛はサックスに届いているに違いないが、トラックが変わっても続くヒステリックな嗚咽は、本能のママに泣き喚く赤ん坊の無防備を真似ている。

いずれも5分以内の演奏の小片に過ぎないが、フランク・ロウとラシッド・アリの共演の随所で聴けるアクメチックなクライマックスを抽出した硬派即興演奏が展開される。ドラマチックな面は未だ開示していないが、自然の侭に楽器を通じて気持ちを吐き出し続けるストイックな行き方は、有機音楽の発生の地アルメニア上空に漂う雲ではない。現場に居ても、否むしろ居ないことで、無から有を産み出そうとする意志の力に圧倒される。

果たして彼らがこの先どのような演奏を形にして残すことになるかは誰にも分からないが、逸る気持ちを抑えて、トルコ発『ジャズ来るべきもの』をじっと野に伏して待機する謙虚なハンターのリスニングスタイルを身につけて日々を過ごしたいものである。

未知の土地
草木も騒ぐ
虚偽の意図

ドラムのOzan Aktunaとテナー・サックスのCihan Gülmezとのデュオがコブラ。コチラも野獣を野に放つかのような覚悟を決めた極端ジャズ。

KOBRA & Can Mekikoğlu (Haymatlos Mekan, 28.04.18)
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《不失者はここから始まった》灰野敬二+白石民夫/GAIAMAMOO/エレファントノイズカシマシ/姫乃たま@六本木SuperDeluxe 2018.7.6 (fri)

2018年07月09日 01時03分11秒 | 灰野敬二さんのこと


SuperDeluxe presents
不失者はここから始まった

開場 19:30 / 開演 19:30
料金 予約3000円 / 当日3300 (ドリンク別)

出演:
灰野敬二 × 白石民夫
GAIAMAMOO
エレファントノイズカシマシ
DJ:姫乃たま

1978年12月発行の吉祥寺マイナーのフリーペーパー「AMALGAM Vol.2」に「不失者始動」として灰野敬二による宣言文が掲載されている。

「不失者デビュー!」(AMALGAM Vol.2 発行日1978/12/01より)
「煮えたぎった私ョの血ヘドがテメエラの心をべとつかせる。罠にかかった私ョの息の意志の行方が全ての悪夢のすき間に忍び込み,犯罪の種をまき散し,宇宙の素粒子どもを震えおののかせてやるぜ。我が物顔した善意を私ョの気合いでバラバラにしてキリストの脳髄の中にでも封じ込めてやる それとも奴の顔を銀糸で切りさいて痙攣しているケツの穴の底に埋め込んでやろうか。閉じ込められた奇跡の排出物にそっと触わり,テメエラの動脈に私ョのサインをなぞってやる。そしたらテメエラにも さらす 事が宇宙のうぶ声だと気がつくはずだ。 私ョのえぐりとった浄化作用に情念の化身が逆立つ。」


インタビューで灰野は、この宣言文を書いたとき「メンバーが居たかどうかは微妙」と述べているが、『捧げる 灰野敬二の世界』(河出書房新社)によると1978年11月5日に早稲田大学のイベント「Free Music Company 汎」に白石民夫・灰野敬二デュオ名義で出演しており、これが事実上の不失者始動だったと思われる。先述のインタビューでは、それ以前から灰野の意識の中に「不失者」があったとされるが、具体的な形で世に出た、つまり「不失者デビュー」は1978年秋として間違いないだろう。
灰野敬二:デビュー・アルバム『わたしだけ?』を語る(JazzTokyoインタビュー)

白石民夫にとっては、サラリーマン生活に飽き足らずパフォーマーとして表現活動を始めた78年に、灰野と一緒に「音を使ったケンカ」のような練習をしていたことが、その後の演奏姿勢に影響をもたらした。つまり両者にとって「不失者始動」が大きなターニングポイントになったことは事実である。

それ以来灰野と白石はユニットを組むことはなかったが、何度も共演している。1990年のビデオ『PURE MUSIC TAMIO』に法政大学学生会館での共演ライヴ映像が収められている。直近では2013年4月ニューヨークのIssue ProjectでFushitsusha名義で共演した。

Pure Music Tamio - Tamio Shiraishi, Keiji Haino



Fushitsusha (Keiji Haino & Tamio Shiraishi) @ Issue Project Room 4-18-13 1/2


昨年ニューヨークを訪れ白石と共演したGAIAMAMOOの尽力で、不失者デビューから40年後の今年、灰野と白石の5年ぶりの共演ライヴが企画され、灰野自身により「不失者はここから始まった」と名付けられたことは、地下音楽の歴史の刷新であると同時に、表現行為の世代を超えた輪廻転生と言えるだろう。西日本を大雨が襲った梅雨空の週末に、奇跡の一夜を体験しようと集まった満員の観客の期待が開演前から渦巻いていた。

● 姫乃たま


地下アイドル/ライター姫乃たまはアイドル活動のみならず、T.美川(インキャパシタンツ)とコラボしたり、ケロッピー前田のオキュパイスクールでアート制作をしたりとアクロス・ザ・ボーダーな活動をしている。開演前/転換/終演後のDJはジャズ/モンド/エレクトロ/ノイズ/フレンチと幅広い音楽スタイルを披露。地下音楽に特化しないヴァラエティ豊かなスタンスは、アイドルらしいキュートさと共に、得てしてダウナーになりがちな前衛音楽イベントに華やかな色彩を加えた。


●エレファントノイズカシマシ


最近ではドッツ東京のイベントで観たノイズ+メタルパーカッションの不定型音楽グループ。バンド名から想像されるギャグ的要素はほぼ皆無。真摯な演奏スタイルは今の若手には珍しいかもしれない。今回のヒーローは暴虐ファズギターをひたすら掻き鳴らし続けたギタリストだった。ブルーチアー/MC5/ストゥージズからソニック・ユース/ダイナソーJrを思わせるガレージロック感は灰野を意識したのだろうか。


●GAIAMAMOO(ガイアマムー)


2012年結成、Shogo HaraguchiとMehata Sentimental Legendによるエクスペリメンタルミュージックデュオ。以前それぞれソロで別のミュージシャンとのコラボを観たことはあるが、デュオとしては初めて。Haraguchiがベース、Mehataがエレクトロニクスの編成だが、演奏が始まると、楽器(音源)が何であろうと関係ない。「能夢」と題された万華鏡をモチーフにした映像と、所々和の要素が混じる電子雑音が視覚と聴覚から脳細胞を刺激する。音楽でも映像でもない、言わばアトラクションに似た総合アート・エンターテインメントであった。

●灰野敬二 × 白石民夫


機材やアンプ類が片付けられ何もないスペースに黒い衣装の灰野が現れ、上記の「不失者宣言」を読み上げる。深みのある声は宣言文の過激な表現を和らげることで、聴き手の心の奥に浸透させる効果がある。白いスーツの白石のサックスの軋みと、灰野が踊るように叩くパーカッションの躍動感が重なり合い、酩酊と覚醒が同時に訪れるようなパフォーマンスが展開される。どちらも音階や音色は極めてシンプルだが、感じる脈動や色彩は豊潤の実り。「はじまりに還りたい」とは灰野による『Born To Be Wild』の訳だが、<はじまり>とは単なる初期衝動の復活ではなく、月日の経過と共に堆積した進化の徴を確かめ合うことに他ならない。灰野と白石の40年間の表現活動の深化の証が凝縮された30分だった。

四十年
七夕前夜の
出会い哉


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【予告】7/16(月・祝)開催!日本一マニアックなDJイベント『盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 Vol.15』

2018年07月06日 01時09分34秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 Vol.15
Magie du début de l'été


2018.7.16(Mon/Holiday)
18:00 Open/Start  
Charge ¥1,000 incl.1drink
Shibuya DJ BAR EdgeEnd
Tel:03-5458-6385
http://www.edgeend.com/access.html

異端音楽+映像 Outrageous DJ Music Party!
Avant-garde, Noise, Industrial, Dark Ambient, Neofolk, Punk, Hardcore, Idol, Black Metal, Middle-east, Ethnic, Ritual, Medieval, UnderGround,… Everything Weirdness About Music!

★来場者にZINE『盤魔殿AMALGAM』無料進呈
★自由参加コーナーFREE ZONE有
★フランスと富山からゲストDJ参加

Guest DJ:
DJ Lézard Noir (from France)
DJ Mirage a.k.a. Shinkiro (from Toyama)

Resident DJ:
DJ Necronomicon
DJ Athmodeus
DJ Bothis
DJ Paimon
DJ Qliphoth

【異端DJたちの聴かせどころ】
●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
テーマ「私の考えるサイケデリック」。初心に帰って地下音楽中心に才気溢れるトリップミュージックをお届け。シュトックハウゼン、ドン・チェリー、風巻隆、NECRONOMIDOL、集団疎開、The Cynics、だめなあたし、Euqisumorih、Plastic People of the Universe、xoxo(Kiss&Hug)EXTREME、ふきのとう、J.S.バッハ、Maher Shalal Hash Baz、KARELIA、臼井弘行、天地真理etc.

Karelia Group - Lulli Juttanasa Gukkin Piera



●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
ジャパニーズ・リチュアルin M.A.T.S.U.R.I!!!それに米国ミクスチャー魔女宗フェリ・トラディションのスピリッツを強引にブチ込んだ死霊の盆踊りを召喚!!!!!さらには当日持田の私物CDやレコードを50枚ほど格安で決算大処分予定!!!!!!!!!BUY!!!!!!!!!!(ジェームズ・チャンスみたく青タン作りながら


注意:動画はイメージです


●DJ Paimon a.k.a. Moppy
3ヶ月ほと欠席してましたが久しぶりに参加します。
今回はアラブ的な曲を中心にセレクト予定。

Renato din Sălaj + Ion din Dorobanți ‎– Nu E Înjoseală (N-am Cărți De Credit)



●DJ Bothis a.k.a. MSS
基本的にはノージャンルでもぞもぞ選曲する予定ですが、あえてテーマを設けるとすれば「定型/非定型とその狭間」といったところでしょうか。何事も二項対立的に分断せず、行ったり来たりを繰り返しながらも諸々模索していければなぁと。カナダのバンド「Preoccupations」の「Memory」という曲は地下音楽かどうかは別として、そのへんをよく表現できてるなぁと感じます。


Preoccupations - Memory (Official Video)



●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
昭和元禄アングラポップ+α (小沢昭一 永六輔 野坂昭如 唐十郎 一柳慧 頭脳警察 J・A・シーザー 凡天太郎 東郷健 曲馬館 水族館劇場 三上寛 友川かずき 古川壬生 )

First Law - Bad Influence.



●DJ MIRAGE aka SHINKIRO (from Toyama)
2005年フランスのATHANORよりCDデビューの日本人ダークアンビエントアーティスト。ミニマルなドローンアンビエントとは一線を画した実験的なサウンドで、これまでにATHANOR、SSSM、ANT-ZEN、OLD CAPTAIN、ZHELEZOBETON等のレーベルより10作品をリリース。今回、リチュアル・ダークアンビエントDJとして盤魔殿に初登場。





●DJ Lézard Noir (from France)
オカルト/リチュルアンビエント、アヴァンギャルドな音楽作品を数多くリリースしているフランスのAthanorレコードのオーナー。dark Ambient/ritual/concret muzakを中心にspin。






盤魔殿
中古盤市
企画中

前回(6/9)の盤魔殿のFull Mix音源期間限定公開中
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 Vol.14 Part 1(DJ Battle : FREE ZONE~DJ Vaby aka 大場弘規)


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 Vol.14 Part 2(DJ Battle : ROCK SPECIAL#2~DJ Bothis a.k.a. MSS)

【完全セットリスト+MIX音源公開】盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 Vol.14
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日本の地下音楽から世界の極端音楽へ〜異端のサックス奏者・白石民夫、来日中。7/6六本木SDLX、7/8幡ヶ谷forestlimit、7/9新宿カリオン橋

2018年07月05日 09時45分22秒 | 素晴らしき変態音楽

2018.7.4 新宿カリオン橋 / 撮影:齊藤聡

ニューヨーク在住のサックス奏者白石民夫氏が来日し数カ所でコンサートを行っている。本ブログでも何回も取り上げたように、吉祥寺マイナーの地下音楽の代表格としと多大なリスペクトを得るとともに現代NY即興シーン随一の個性派ミュージシャンとしても人気を誇る現在69歳の白石の創造の泉は枯れることはない。

昨夜7月4日(水)は新宿西口カリオン橋にてパフォーマンス。80年代から続く白石のストリート・ライヴである。筆者は残念ながら都合が付かず観れなかったが、折からの台風接近の強風の中「そのせいなのか、奏法を変えたのか、これまでイメージしていた「白石民夫の音」と違う音が聴こえる場面も少しあって興味深かった」(zu-ja@rifuzuja氏ツイートより)という証言もある。


ライヴレポートは齊藤聡氏のブログに詳しい⇒「白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その5

白石の近年の活動を動画で追ってみよう。

●白石民夫 x ティム・ダール:
ニューヨークのアヴァンギャルド・シーンで最注目のベーシスト、ティム・ダール Tim Dhal と 白石民夫のセッション。
Tim Dahl and Tamio Shiraishi at HECK on 2018/02/28


●最凶のサックス・カルテット『SKYGGERIGE』
メンバー:
白石民夫 Tamio Shiraishi - alto saxophone
クリス・ピッツィオコス Chris Pitsiokos - alto saxophone
マット・ネルソン Matt Nelson - tenor saxophone
ルイーズ D.E. ヤンセン Louise D.E. Jensen - alto saxophone
Skyggerige at Copenhagen (2017/10/09) part 1 (quertet)


●白石民夫 x 山崎阿弥: NY at Muchmores 05/02/2018
Tamio Shiraishi and Ami Yamasaki @ Muchmores 5-2-18


●白石民夫 × ジャイナ・ブートレグ

個性派ヴォイス・パフォーマーのジャイナ・ブートレグとのデュオ。
Gyna Bootleg & Tamio Shiraishi at HECK on 20180515


残る日本でのライヴはあと三回

7月6日(金)六本木SuperDeluxe


不失者はここから始まった
SuperDeluxe presents 灰野敬二 × 白石民夫 and more!

開場 19:30 / 開演 19:30
料金 予約3000円 / 当日3300 (ドリンク別)

今から40年前の1978年、灰野敬二がバンド「不失者」を結成した。その活動は現在も存続し、もはやその ”音” による影響力は国際的にまで広がりをみせ、日本国内のアヴァンギャルドミュージックシーンを、今や世界に誇る一つのシーンとして発展させる一因となった。主にトリオ編成のバンドとして知られる不失者は、結成当初、白石民夫とのデュオから始まった。不失者はここから始まった。これは事実である。
現在、アメリカ NYで音楽活動を続ける、サクソフォニスト白石民夫の7月上旬の来日に伴い、日本地下音楽ファン待望の、灰野敬二と白石民夫の夢のデュオ共演がスーパーデラックスにて実現する!40年前のデュオから始まった、あの時の不失者は、時空を超えて再会し、どこへ辿り着くのか?!この貴重なライブを目撃しに来てください!!この機会、ぜひお見逃しなく!
また、この日の前座には不失者結成から40年の時を経た日本地下音楽シーンから2010年代に結成されたバンドを2組ピックアップ!昨年、NYで白石民夫と共演を果たしたGAIAMAMOO (ガイアマムー)。そして昨今国内で精力的に活動するエレファントノイズカシマシが初出演!さらに、DJには今を翔ける地下アイドル、姫乃たまも登場するぞ!
7月6日金曜日七夕前日、六本木スーパーデラックスでお待ちしております!世代を超えて変化し続ける、シーンの”今”はここからまた始まる。

出演:
灰野敬二 × 白石民夫《不失者はここから始まった》
GAIAMAMOO
エレファントノイズカシマシ
DJ:姫乃たま
https://www.super-deluxe.com/room/4496/
https://www.facebook.com/events/1901539046545646/


7月8日(日)幡ヶ谷forestlimit


"Tamio Shiraishi Live in Japan 2018"
open 19:00/start 19:30
¥2500+drink(当日券のみ)

白石民夫
工藤丈輝
久下惠生
工藤冬里
UMMMI.
META FLOWER
竹田賢一
宇波拓
Hair Stylistics(a.k.a.中原昌也)
後飯塚僚
鈴木健雄
渡邊智道
山崎春美
http://forestlimit.com/fl/?p=17464
https://www.facebook.com/events/187255321978536/

7月9日(月)新宿西口 カリオン橋(予定)
http://www.shiraishitamio.info/

白い石
灰の野原と
地下の民

●白石民夫インタビュー
(剛田武『地下音楽への招待』のためのインタビューより抜粋)

剛田:灰野敬二さんと不失者を結成するに至った経緯を聞かせてください。

白石:これもどこかで、書いていると思うけれど、マイナーはけっこういろいろな組み合わせのセッションをやるチャンスが多かった。で、彼はたまたま、俺のパーカッションを見たらしくて、しばらくたってから、俺を誘ってきた。

剛田:不失者での活動のなかで、特に印象に残っている出来事がありましたら、訊かせてください。

白石:ほんのちょっとの期間しかやっていないので、あまりないけれど、とにかく、練習は、音を使った「ケンカ」みたいなもんで、すごく疲れる「練習」だった。ただ、未だに、俺の練習は、その傾向(つまり「ケンカ」みたいなもん)があるのは、その時に身に染み付いたせいかな。
まあ、あと印象に残っているのは、警官が来たんだよね、マイナーに、練習しているときに。「女性の悲鳴らしいものが聞こえる、という110番があった」ということで。彼のボーカルが女性の悲鳴に聞こえた、ということね。

剛田:白石さんから見た灰野敬二さんの人物観を聞かせてください。

白石:音楽家だなあ、と思ったね。いわゆる普通の「音楽家」は音楽屋であって、音楽家なんかではない、という意味も含めてね。今となっては、俺もベテランだけれど、当時の俺は、音楽というのは、いろいろな意味で知らなかったしね。そう、上で書いた「音を使ったケンカ」というのは「正しい」音楽(の一つ)だと思うよ。

剛田武著・加藤彰編『地下音楽への招待』(ロフトブックス)


1978年、吉祥寺に開店した一軒のジャズ喫茶は、その一年後「Free Music Box」を名乗り、パンクよりもっと逸脱的(パンク)な音楽やパフォーマンスが繰り広げられる場となっていく──「Minor Cafe」として海外でも知られるようになったこのスペース、吉祥寺マイナーの“伝説"は近年とみにマニアたちの関心を惹くものとなった。しかし、そこには前史や後史、あるいは裏面史など時間的にも空間的にもさらなる広がりと深さを持った、さまざまな出来事と人物たちの「流れ」と「つながり」があったことは、あまり、否、あまりにも知られていないのではないか。本書は、そうした現場の一端に立ち会ってきた一人の目撃者=体験者が、ミュージシャンやパフォーマー、オーガナイザーたちとの再会や対話、またメディアの再検証を通じて、日本のメジャーな音楽シーンが80年代の多幸症に向かうなか、そのパラレルワールドのようなものとしてあった「地下音楽」の世界を描き出す、初めての試みである。 ○列伝形式による人物の体験と記憶の紹介──園田佐登志/藤本和男/鳥井賀句/竹田賢一/白石民夫/工藤冬里/原田淳・増田直行/安井豊作/生悦住英夫/山崎尚洋/山崎春美etc. ○吉祥寺マイナー、高円寺ブラック・プール、横浜 夢音、法政大学学生会館、モダーンミュージックなど伝説のスペース、『ロック・マガジン』『フールズ・メイト』『ZOO』『マーキームーン』『HEAVEN』など伝説の音楽誌、サブカル誌にまつわるエピソードを多数掲載 ○間章、阿部薫、高柳昌行ら今は亡き伝説的人物、灰野敬二、裸のラリーズなど今もなお地下音楽の世界に君臨するアーティスト、また若き日の坂本龍一、近藤等則、町田康らの活動と、その時代背景や文脈を詳細な註釈で解説紹介 ○吉祥寺マイナーほかの秘蔵フライヤーを誌上公開 ○CDは全18曲(うち14曲は未発表音源)・計76分を収録
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クリヨウジ/灰野敬二/齋藤久師/宇川直宏etc.「チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」vol.2@六本木SuperDeluxe 2018.6.29(fri)

2018年07月04日 00時16分04秒 | 灰野敬二さんのこと


GEORAMA2017-18 presents
「チャネリング・ウィズ・ミスター・クリヨウジ」vol.2
【DAY1】YOJI KURI's 90th Birthday Experimental Animation Show!!


6/29(金)19時開場/19時半開演
トーク出演者:クリヨウジ、飯村隆彦、宇川直宏、土居伸彰
​ライブ:灰野敬二、齋藤久師
公式サイト



日常生活の中で、突然訳が分からない謎に満ちた過去の体験が映像や音楽をきっかけにフラッシュバックすることがある。子供の頃の夢か現実か定かでない遠い記憶の中にある混沌としたイメージは、アヴァンギャルドとアンダーグラウンドがポップカルチャーやハイアートと表裏一体だった時代の自由な風が心に残した波紋かもしれない。久里洋二の名前は知らなくてもハットを冠ったデカ鼻のキャラクターの支離滅裂なアニメーションは記憶に残っている。子供番組ではなく、小学生の頃親の目を盗んでドキドキしながらチラ見した深夜の大人向けバラエティで観たのだろう。見てはいけない秘密を覗く快感とともに脳裏に刻まれた禁断の映像。そんな薄れかけた記憶の残滓が、連綿と続く地下文化の潮流の中で突然息を吹き返す奇跡こそ、40年以上昔の自分が蘇生する超常体験であり僥倖である。

会場は音楽よりも映画/映像に興味を持つ2〜30代のアート系の客層中心に思えた。最初のパートは初期のアニメーション作品の上映会。斬新な手法による実験映像も然ることながら、付帯する音楽の面白さに耳を奪われる。60年代日本のアートシーンが如何に前衛的で実験的だったか、そして古い世代への決別を表明することが何よりもカッコいいとされていた時代への憧憬。前衛音楽のプロモーションビデオとも言える作品に、当時を知らない世代が惹かれるのは、技術的な障壁にめげず情熱とアイデアを武器に新たな領域を切り開いた先人へのリスペクトの証である。

●灰野敬二「切手の幻想」「二匹のサンマ(カラー版)」


「切手の幻想」にハーディガーディでサウンドトラックを作る。僅か6分に凝縮されたプレイは、長時間演奏の酩酊感が醍醐味だと思っていたハーディガーディの未知の可能性を露にした。「二匹のサンマ(カラー版)」はオリジナルで使われた佐良直美の「世界は二人のために」を元に灰野流の哀感と秘伝の謡を疲労。アニメーションのポップ感と灰野のダークネスが融合した異世界の映像表現を産み出した。

クリヨウジ、映画作家の飯村隆彦、Dommune主宰の宇川直宏、GEORAMA主宰の土居伸彰による「クリヨウジと実験と音楽」をテーマにしたトークに続いて上演された『1秒間24コマ』(飯村隆彦監督)は、トニー・コンラッドの『Flicker』を彷彿させる目眩させるマジカルな異端映像であった。さらにクリヨウジのエクスペリメンタルな面を開示するアニメーションが上映され会場の異世界感のレベルが上がった。

●齋藤久師「VANISH」「寄生虫の一夜」


70年代初頭に日本ではじめてのモーグシンセサイザーを手に入れた冨田勲が音楽を作ったクリヨウジのアニメーションに、冨田の孫弟子にあたる齋藤がモジュールシンセで新たな電子音楽サウンドトラックを創造。宇川直宏が言う通り、日本のアニメーションとシンセカルチャーのの歴史的アップデートと言えよう。特に「寄生虫の一夜」のブラックユーモア溢れるストーリーが奇怪な電子音で増幅される有様をリアルタイムで体験するのは魂のメタモルフォーゼであった。

アニメーション
日本カルチャー
進化論

日本のアンダーグラウンドカルチャーを掘り起こしアップデートする奇跡のイベントであった。

The Midnight Parasites (1972, 9 min) Directed by Yoji Kuri.mp4


久里洋二作品集


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【JazzTokyo#243更新】ピーター・エヴァンス&ウィーゼル・ウォルターの毒/望月治孝&川島誠の風

2018年07月02日 09時01分48秒 | 素晴らしき変態音楽


Jazz Tokyo #243 が更新された。カバーストーリーは横井一江による『マシン・ガン』から50年。ペーター・ブロッツマンの代表作が録音されてから50周年、それを録音したブレーメンではイベントが行われ、同じく設立から50年のFMP関連のイベントも今年ベルリンで行われた。他にジャズ批評の創刊オーナー松坂妃呂子さん追悼特集も。剛田武は以下の記事を寄稿。

 『Peter Evans and Weasel Walter / Poisonous』

#1535 『Peter Evans and Weasel Walter / Poisonous』

即興音楽の遥か先の異端世界に生息する毒性音響多面体。
NY即興シーンを代表する二人の音楽家の初デュオ作品は、大胆なスタジオ・ワークを駆使して、即興音楽の先にある異端世界を目指す問題作。

Peter Evans / Weasel Walter "Poisonous" CD promo video 2018

聴く毒キノコ図鑑〜ピーター・エヴァンス&ウィーゼル・ウォルター『ポイゾナス(毒)』


●『望月治孝、川島誠 / 自由な風のように』

#1533 『Harutaka Mochizuki, Makoto Kawashima / Free Wind Mood』

ふたりの孤独なサックス奏者の逡巡と慟哭。
フリージャズや即興音楽に限定されない活動を貫く二人の個性派アルトサックス奏者、望月治孝と川島誠のスプリットLPがフランスから登場。

ソロとソロ
デュオとエディット
毒と風

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