A Challenge To Fate

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【精神拡張フルートロックの深層】クラウトロック編 Part2~アモン・デュールII/エムティディ/ヘルダーリン/ブローゼルマシーン/ヤサ・シドラ/スパイラル・ギャラクシーetc.

2022年05月19日 00時16分20秒 | 素晴らしき変態音楽
 
Sara Gossett (Spiral Galaxy)

クラウトロックに限らず、60~70年代前半のロックやポップスにはフルートが入った曲が数多くある。おそらくその頃サックスやトランペットはジャズ・メインの楽器というイメージが強く、70年代にブラスロックが登場し、派手なホーンセクションが入ったファンクやディスコが流行るまでは、ポップス界の管楽器の花形はフルートだったと言えるだろう。特にフォークやトラッドと馴染みがあり、インド音楽をはじめとしたエスニックなサウンドにも溶け込むフルートの音色は、サイケデリック/ドラッグ・カルチャーにおいて、瞑想しトリップする効果を高める役割を果たしたに違いない。古くからドイツに根付く前衛音楽や神秘主義などの伝統に、英米のサイケ/ヒッピ-文化の影響が有形無形に溶け込み、精神の拡張または異化を求めて音楽の実験を繰り広げたクラウトロックでフルートが重宝されるのは必然だった。さあ、失われたフルートを求めて、さらなるクラウトロックの深みに潜る(DIVE DEEP)としよう。

●アモン・デュールII Amon Düül II – Yeti (1970)


カンやタンジェリン・ドリームと並びクラウトロックを象徴するバンド、アモン・デュールIIが国外で評価されるきっかけになったセカンドアルバム『地獄!(Yeti)』のLP2の最後に収録されたインプロ・ナンバー。タンジェリン・ドリームの『エレクトロニック・メディテーション』にも参加したジャズ・ミュージシャンThomas Keyserlingがフルートで参加し宙を舞うようなプレイを聴かせている。

Amon Düül II - Sandoz In The Rain (Improvisation)



●エムティディ Emtidi / Saat (1972)


ドイツ人Maik Hirschhfeldtとカナダ人女性ボーカルDolly Holmesの2人から成るジャーマン・サイケデリック・フォーク・グループの72年作セカンド・アルバム、邦題『芽生えの時』。ジャケット通り白昼夢を見せられるような酩酊感に溢れたサウンド。マルチミュージシャンのHirschhfeldtが奏でるフルート(笛)はラスト・ナンバーの後半で聴ける。

Emtidi - Die Reise (1972)



●ウィンド Wind / Seasons (1971)


ニュルンベルクで64 年にBentoxとして結成、70年に新ヴォーカリストSteve Leistnerが加入しWindとなる。71 年デビュー・アルバム『Seasons』発表。ハードで抒情的なオルガンロックを聴かせる。Steve Leistnerが吹くロマンティックなフルートも印象的。2作目『Morning』でファンタジック・ロックに変貌するも73 年解散。

Wind - 01 What Do We Do Now (Seasons)



●ブローゼルマシーン Bröselmaschine – Bröselmaschine (1971)


デュースブルク出身のフォークバンド。1968年結成。シタール、コンガ、管楽器、ツィター等を織り交ぜた夢想感漂うサウンドと緩やかな男女ヴォーカルのメロウなアコースティック・サウンドが素晴らしい1stアルバム。女性ヴォーカル/フルーティストJenni Schückerが参加した唯一の作品。バンドは70年代後半に解散するが、2000年代に再結成。オリジナル・メンバーPeter Burschを中心に現在も活動を続ける。

Schmetterling



●ヘルダーリン Hölderlin / Hölderlins Traum (1972)


詩人フリードリヒ・ヘルダーリンからバンド名をとったヴッパータール出身のグループ。70年結成。清らかな女性ヴォーカル、弦楽器、ギター、オルガン、メロトロンを効果的に使用し、深いゲルマンの森に木霊するような神秘を音で表現したデビュー作『ヘルダーリンの夢』では、Joachim von GrumbkowとChristoph Noppeneyがフルートとしてクレジットされている。幻想的なシンフォニックロックにフルートがよく似合う。バンドは80年に解散。2000年代に何度か再結成した。

Hölderlin ► Waren Wir [HQ Audio] Hölderlins Traum 1972



●ゼルギウス・ゴロウィン Sergius Golowin / Lord Krishna Von Goloka (1973)


ゼルギウス・ゴロウィンはチェコ共和国プラハ生まれのスイス人作家、神話研究家、政治家。1973年にクラウス・シュルツェ、ヴァレンシュタイン等クラウトロック・ミュージシャンと組んで制作した本作は、電子楽器とアコースティック楽器の即興にゴロウィンの語りをフィーチャーした実験的かつ神話的な作風で、コズミック・クラウトロックの古典とされている。ヴァルター・ヴェストルップとヨルグ・ミエルケがフルートでクレジットされている。まさに精神拡張のためのアルバムといえる。

Lord Krishna von Goloka -- Sergius Golowin (1973) Full Album.



●ヴィットゥーザー&ヴェストルップ Witthüser & Westrupp / Trips + Träume (1971)


1969年にエッセンで結成されたベルント・ヴィットゥーザーとヴァルター・ヴェストルップによるフォーク・デュオ。能天気なアシッドフォークが身上だが、様々な民俗楽器を取り入れたサウンドはドイツのトラディショナル・ミュージックの伝統を継承している。ヴェストルップが吹くフルートというより笛の素朴な音色がドイツの田園風景を想起させる。もう一人Renee Zuckeがフルートでクレジットされている。デュオとしては73年に解散するが、それぞれフォークミュージシャンとして活動を続けた。ヴィットゥーザーは2017年に死去。

Witthüser + Westrupp ‎– Orienta ( 1971, Psych Folk, Germany )



●ドム Dom / Edge Of Time (1972)


1969年にデュッセルドルフで結成された4人組。1972年にプライヴェート・プレスされたレア盤。サイケデリック/トリップ/コラージュ入り乱れて混沌としたサウンドが満載のクラウトロックの狂気を象徴する一枚。4人のメンバーの内2人がフルートを担当し、涅槃に遊ぶようなプレイ聴かせる。

Edge of Time - Dom (1970) Full Album



●ヤサ・シドラ Yatha Sidhra – A Meditation Mass (1974)


RolfとKlausのFichter兄弟を中心に'73年結成された実験ロックバンドBrontosaurusがアルバム・デビューにあたってヤサ・シドラに改名し74年に独Brainから発表した唯一のアルバムが『瞑想ミサ』。ドラッグカルチャーと東洋志向が入り交ざり、唯一無二のメディテーション・ミュージックが生まれた。ゲストメンバーのPeter Elbrachtのフルートが全面で活躍する。Rolf Fichterのインディアン・フルートも聴ける。解散後Fichter兄弟はデュオユニットDreamworldとして80年代に2枚のアルバムをリリースした。

Yatha Sidhra - A Meditation Mass 1974 (full album)



●マクチャーチ・サウンドルーム McChurch Soundroom / Delusion (1971)


スイスのバーゼルで結成されたクラウトロック・バンド。クラウトロック界随一のおどろおどろしいいジャケットの唯一作『妄想』は、オルガンとギターをメインとするブルースロックに、中心メンバーのSandro "Sandy" Chiesa のグルーヴィなフルートが舞う異色作。ブラック・サバスとジェスロ・タルの融合と呼びたい。

McChurch Soundroom - What Are You Doin'



●カラカクラ Kalacakra / Crawling To Lhasa (1972)


Claus Rauschenbach、Heinz Martinの二人により70年代初期に結成されたクラウトロックバンド。バンド名は仏教用語で「時間の車輪」を意味する。72年に自主制作された唯一のアルバム『Crawling To Lhasa』は、様々な管弦楽器と電子エフェクトが交錯し、インド音楽とフリージャズとミニマルミュージックが融合された瞑想的な一枚。フルートはHeinz Martinが担当。

Kalacakra - Crawling To Lhasa 1972 FULL VINYL ALBUM



●クソール・キャラバン Xhol Caravan / Electrip (1969)


ヴィースバーデンで67年に結成されたソウル/R&BバンドSoul Caravanが、69年にサイケデリック・ジャズに転身してXhol Caravanと改名、70年にXholとなる。1969年の2nd『Elctrip』はフリージャズ/サイケデリック・ロック/電子音楽が入り混じるアヴァンギャルド作。Hansi Fischerが吹く電気フルートに感電する。バンドは72年に解散するが、90年代と2000年代に一時再結成し、Nurse With Woundとコラボするなどアンダーグラウンドな活動を行った。

Xhol Caravan ► Raise Up High [HQ Audio] Electrip 1969



●アウト・オブ・フォーカス Out Of Focus ‎/ Four Letter Monday Afternoon (1972)


1968年にミュンヘンで結成されたロック/フュージョン・バンド。バンド名は米ヘヴィーサイケバンド、ブルー・チアーの曲から取られたが、音楽的にはソフト・マシーンやクソール・キャラバンに影響されたジャズロックを聴かせる。オルガン、ギター、サックスによる骨太なインプロが中心だが、サックス奏者Moran Neumüllerのフルートを効果的に使った曲も聴きどころ。70年代半ばに解散し、メンバーの何人かはエンブリオに加入した。

Out of Focus - Huchen 55 A



●ナイアガラ Niagara / S.U.B. (1972)


60年代から活躍するジャズ・ドラマーKlaus Weissが70年にミュンヘンのドラマーを集めて結成したスーパーグループ。複数のドラムとパーカッションによるファンキーなアフロビートが中心だが、72年の2ndアルバムにはオランダのサックス&フルート奏者Ferdinand Povelが参加し、トランペット奏者とタイトなアンサンブルを聴かせる。3枚のアルバムを出して74年に解散。日本でいえば石川晶とカウント・バッファローズに近い。

Niagra - Bones


フルートは
瞑想、ファンキー
どちらもイケます

●スパイラル・ギャラクシー Spiral Galaxy ‎/ Spiral Galaxy (2020)


現行クラウトロックの最注目株。シカゴをベースに活動するSara Gossett(フルート)とPlastic Crimewave(ギター/マシーン・マニピュレーター)のデュオ、スパイラル・ギャラクシーの2020年ファースト・アルバム。初期のクラフトワーク、ラ・デュッセンドルフ、ポポル・ヴーなどに影響を受け、ミニマルな反復ビートに美人フルーティスト、サラの幻想的なソロがトリップ感を高める酩酊ミュージック。ファウストやアシッド・マザーズ等クラウトロック/サイケのベテランも参加。いつの日か来日したらMOGRE MOGRUで前座をやりたい。

Spiral Galaxy//Psych Fest 2020, Chicago, IL 2.1.2020
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