A Challenge To Fate

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【私のB級サイケ蒐集癖】第35夜:魅惑のエレキギター・メロディの未知なる世界~ザ・バディーズ/沢田駿吾/ポップキッカーズ

2021年09月18日 00時15分54秒 | 素晴らしき変態音楽


前回はベンチャーズ・スタイルのエレキ・インスト・バンドを紹介したが、ジャンク・レコード売り場に眠っているギター・レコードは偽ベンチャーズだけではない。クラシック、ラテン、フラメンコ、ジャズ、フォーク、ポップス、ロックと様々なギター・メロディが掘り起こされるのを待っている。筆者がたまたま眠りから目覚めさせた安レコの中から、B級サイケ度高めのエレキギター名演/迷演レコをこっそり紹介することにしよう。

●ザ・バディーズ/レッツ・ゴー・スキー・バカンス(Philips SFX-7017)


ジャケ写のビザールギター(日本ビクター製)に惹かれてジャンクレコードコーナーから救出した1枚。ペラジャケ見開き綴じブックレット付きのそこそこの豪華仕様。しかしながら、明らかにリリース当時(1966年)に流行りはじめたスキーブームの便乗レコードで、6ページに亘る解説書はスキーについての解説(スキーの楽しみ方のエッセー、スキー用語集、スキー・モンキーの踊り方、スキーのエチケット集、スキーバカンス用品プレゼント告知)だけで、演奏のザ・バディーズについては一切触れられていない。曲はアメリカのサーフギターインストとビーチボーイズ風のヴォーカルナンバーが半々、B級感たっぷりで大好物。レコード・レーベル面をよく見ると作曲クレジットのMike CurbとKim Fowleyの名前を発見!マイク・カーブは60年代にサイドウォーク~カーブレコードを立ち上げ西海岸ロック・シーンを席巻したプロデューサー、キム・フォーリーは70年代にランナウェイズのマネージャーとして知られることになるプロデューサーで、60年代にノベルティ・ソングやカルト・ロックを数多く手がけた奇人。このザ・バディーズも両者が手掛けた匿名バンドのひとつで、ファズの王様と呼ばれるデイヴィー・アランがギター、バディ・ホリーの死後にクリケッツのヴォーカルを務めたジェリー・ネイラーがヴォーカルという由緒正しいB級アメリカンガレージポップである。本国アメリカでは『Go Go With The Buddies』『The Buddies & The Compacts』(ともに65)の2枚のサーフロックアルバムをリリースした。その中に「Ski City U.S.A.(あこがれのスキー・バカンス)」と「Ski Jump(恋のスピード・ダッシュ)」というスキー絡みの曲があったので、日本のスキーブームに当て込んで売り出されたのだろう。2枚のアルバムからの選曲の本作『レッツ・ゴー・スキー・バカンス』にはスキー関係の曲はこの2曲だけ。それ以外はサーフィン、ホットロッド、スケートボート・ナンバーばかり。元々実体のないバンドだから文句を言えた義理ではないが、遥か極東のNIPPONで、自分たちがでっち上げたエレキ・インストがスキーブームの名の下で宣伝されて、スキー板やチョコレートが当たる抽選券付で販売されている事実を知ったらマイク・カーブは訴えたかもしれない(彼はのちに政治家になった)。一方国内外のB級ガレージ/サイケ・ファンにとってはスキーブーム便乗レコードに大好物のサーフィンナンバーが満載だとは思いもよらないだろう。その意味では筆者がDiscogsにも載っていないこのLPを救出したことは幸運に違いない。

The Buddies - Ski City USA



●沢田駿吾&ザ・ダイナミック・サウンズ他/魅惑のギター・メロディ(リーダーズダイジェスト 12GS-5)


昭和3,40年代に流行った家庭向け通信販売レコードボックスはジャンクレコードコーナーの王者と言える。ホーム・クラシック、映画音楽、懐かしのメロディ、ムード音楽等の企画ものレコード10枚組が100円でたたき売られている。ジャケットや箱の黴やシミは我慢するしかないが、たいていは家に飾っておいただけでレコード盤はほとんど針を下ろしていない新品同様が多い。中でも安売りコーナーでよく見かける当時の通販大手のリーダーズダイジェストが企画した『魅惑のギター・メロディ』5枚組はバッタもんオーラを放つ垢ぬけないジャケットなのでスルーしそうになるが、ちょっと待て、日本のジャズ・ギタリストの草分けの沢田駿吾をはじめ日本を代表するギタリストの知られざる名演集として聴き逃せないボックスなのだ。沢田駿吾はザ・パッショネイト・エイトと共にラテンビート、ザ・ダイナミック・サウンズと共にヒット・パレードとLP2枚にフル参加。レアグルーヴなラテンものも素晴らしいが、ここでは当時のヒット曲をカバーしたLP5『ダイアモンド・ヘッド』に注目したい。フルートやサックスが入ったコンボ編成によるビートルズやフォークソングのジャジーなカバーはお手の元だが、聴きどころはやはりベンチャーズ・ナンバー。ホーンとオルガン入りの「パイプライン」はグルーヴィーなドラムソロをフィーチャーしたジャンプビートナンバー。ベンチャーズの十八番のテケテケテケを敢えてドラムに叩かせているところがジャズ・ギタリストとしての意地を感じる。そしてテンポをぐっと落とした「ダイアモンド・ヘッド」はウォーキング・ベースがリードするハードボイルドなアレンジがカッコいい。この2曲とも沢田は12弦ギターでメロディラインを軽やかに歌っている。他にはGS歌謡風のアダモの「ブルージーンと革ジャンパー」、泣きのサックスが聴ける愛唱歌でジョーン・バエズがヒットさせた「ドナドナ」など、サーフギターではないが、エレキ・インストの魅力がたっぷり。マニア向けにはクラシックのLPにソンコマージュこと荒川義男が参加していることも付け加えておこう。

横内章次&沢田駿吾 「イエスタデイ」



●ポップキッカーズ他/若いみんなのベスト・リクエスト2


80年代パンク系自主制作盤の定番ソノシートは、1958年にフランスで開発され、60年代に日本でも安価なレコード代用品として定着した。薄くて冊子に挟めるので「音の出る雑誌」として定期刊行されたりもした。雑誌社による企画なのでレコード会社と契約のない演奏家によるカバーが量産され、例えば貸本漫画と同じように、デビュー前の無名の演奏家やスタジオミュージシャンによる匿名バンドによる作品も少なくない。また低予算の録音スタジオで作られる場合も多く、メジャーなレコードとは比べようもない安っぽい音も少なくない。そういったソノシートバンドのひとつが前回紹介したザ・ハイウェイズと言う訳だろう。当時のソノシート出版社として大手の現代芸術社からリリースされたこのソノシートブックはタイトル通り当時のポップスヒットの選曲のソノシート5枚組。ジャンルはバラバラだが、ベンチャーズのライバル、アストロノーツのヒット曲「太陽の彼方に」をポップキッカーズなるバンドがカバーしている。これまたザ・ハイウェイズに負けず劣らず安っぽい音作りで、ソノシート特有の音揺れと相まって闇の底から湧き上がる負のオーラに満ちている。正式名称は、熊木忠とポップ・キッカーズ。昭和38年に結成。熊木忠 Piano, 鳴海誠 Lead Guitar, 望月康平 Guitar, 萩原利夫 Tenor Sax, 小林茂夫 Bass, 今本憲二郎 Drumsの6人組らしいが、「太陽の彼方に」にはピアノとサックスは参加していない。他にソノソート音源があるようなのでいつの日かジャンクレコード沼から救い出して、ポップキッカーズ完全音源コレクションとしてリリースできないだろうか。

【195A】ベンチャーズベスト8(1)


ソノシート
エレキギターの
泣きどころ





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